一貫してC級モンスターパニック映画を撮り続けている
グリフ・ファースト監督のサメ映画最新作です。
この監督、「紀元前一億年」(08年)の頃は死刑宣告をしてやりたくなるほどの
有害産業廃棄物生産者でしたが、「
フライング・ジョーズ」(11年)あたりから
地味ながら案外観られる出来のものを生産するようになり、その後
「
ゴースト・シャーク」(13年)、「
シン・ジョーズ」(16年)
などというエッジの効いた珍作クソサメ映画を次々とものにして、
私もグリフ・ファーストという名にそれなりの期待感を持つようになりました。
そんな彼の新作は「サメ+電気」!
…という組み合わせ。
まあ正直なところ、2018年の新作サメ映画としては目新しさに欠けますよね。
去年は
サメの電気でロケットを発射する映画もありましたからね。
全水域感電! ハイ・ボルテージのデンキザメ襲来!!
★大洪水のさなか、発電施設との接触により極度に帯電した巨大ザメが生存者に襲い掛かる! 待ち受けるのは感電死か? それとも喰い殺されるのか?
アメリカSyFy(サイファイチャンネル)でこの夏、『シャークネード ワールド・タイフーン』らと共に初公開された、サメ映画最新作!!
★『シン・ジョーズ』『ゴースト・シャーク』のグリフ・ファースト監督作品。『シャークネード』のヒロイン、タラ・リードがチェンソーを振り回す! サメ映画ファンのツボにストレート・ヒット!
(竹書房HPより)
ストーリーはかなりどうでもいい感じだったので特に説明はしません。
あと上記の公式説明文などでは、シャークネードのタラ・リードが主演であるかのように書かれていますが、彼女はチョイ役です。サメ映画マニア限定とはいえ、タラ・リードのネームバリューがこんな釣り餌のように使われるようになったとはなかなか感慨深いものがありますね。
アメリカの田舎、沼地のほとりにあるトレーラーハウスの集まりで極貧生活を送る人々。この手の映画を観ていていつも思いますが、21世紀の今でもこんな生活をしている人々が本当にいるのかと不思議です。
この土地から彼らを追い出したい悪徳不動産会社が堤防を爆破し、ここを水に沈めたところで電気ザメが襲撃してくるというシチュエーション。
本作はそこから一歩も外に出ないためかなりスケールの小さいサメ映画です。
…というか、全体的に色彩感とか雰囲気が「フライング・ジョーズ」や「
新アリゲーター」に酷似しています。
もしかして同じロケ地?
のっぺりしたテクスチャのサメCGが泳ぐシーンが幾度となく挿入されますが、
当然のように何度も繰り返し同じものが使いまわされます。多分6回ぐらい。
これぞ典型的クソサメ映画の様式美。
本作の場合は、途中で左右反転するという姑息な方法でごまかしにかかりますがバレバレです。
馬を捕食するサメ、という何気に珍しい場面。
愛馬を失った男の悲痛な嘆きが動物好きの心に突き刺さります。
もしかすると「フライング・ジョーズ」よりもよっぽど飛んでいるのでは?
という程度にはジャンプして襲ってくるシーンがあります。
その代わりと言っては何ですが、放電するシーンが思ったより少ないです。
中盤には放電で獲物をしとめたり躍らせたりする珍場面もありましたが
後半はほぼなし。案外使いにくい属性なんですかね。
主人公の機転で、鎖に巻かれて吊るされたサメ。
これもまたかなり珍しい絵面ですね。新たな映像表現を模索するグリフ・ファースト監督の高い志には頭が下がります。
尾を振ってブラブラしているサメがマヌケすぎて非常に可愛らしい。
最近サメを可愛く見せるサメ映画が増えてきたような気がします。
プロペラボートで出撃してくる悪徳社長。
つーかそのボート「フライング・ジョーズ」で使ってたのと同じやつだろ…
またそのプロペラでサメをミンチにするのか?
…と思ったら、本作のサメ退治方法は「フライング・ジョーズ」の発展進化形とも言える、驚くべき知恵と工夫に富んだユニークなものになっていました。
間違いなくこれまでのサメ映画では観られなかった革新的手法であり、映像的なインパクトは抜群です。
終盤までは、単なる典型的C級クソサメ映画であり、
社長の言うとおり人生をムダにしてるとしか思えないクオリティなのですが、
このサメを木にぶら下げてからの一連のトンデモ展開は
サメ映画マニアを唸らせる奇妙な味わいを有しており、
本作もまたサメ映画マニアの心に何か得体の知れないものを刻んでくれる珍作と言っても良いでしょう。
グリフ・ファースト監督の過去作を観てきたような方ならば必見です。
そうでない人がご覧になる場合は、人生をムダにする覚悟を持ってから鑑賞してください。