この映画を観た人は皆同じことを思うでしょう。
「飛ばないじゃないか!!!」
いや、正確に言うならジャンプして食らいつくシーンが1か所ありましたけどね。
それで「フライングジョーズ」という邦題を付けよう、とは普通思わないでしょう。
そんなこと言ったら「
ジュラシックシャーク」だって「
ロストジョーズ」だって飛んできて食らいついてますからね。サメがジャンプするシーンなど珍しくもなんともないのでわざわざ邦題にするならもっと飛びまくるものを想像しちゃうわけで…。
ちなみに原題は「
SWAMP SHARK」で「沼のサメ」だそうです。
そのまんまだと地味すぎて売れない!
と判断したはいいものの、中身も地味すぎて見どころに乏しいしこれといった特徴もない。
仕方ないから1回だけ飛んだシーンに目を付けて「フライングジョーズ」という苦肉の策。
まあ、この業界なら100%のウソでないだけマシだと言えなくもないでしょうかね。
それにしても、沼のサメ。また淡水です。
この手の作品をあまりにも見過ぎたため、
「サメ?バカな。ここは沼(湖)なんだぞ」
「オオメジロザメは淡水でも生息できるんだ」
という会話がさすがに食傷気味です。もはやテンプレと化しているレベル。
オオメジロザメは淡水でも生きられる…この豆知識を忘れることは一生ないでしょう。
この作品、いかにもCMに入りまーす的なシーンの切れ方をしているので、どうやらテレビ映画のようです。そのせいか、人は結構死にますが残酷シーン等はほぼ皆無。サメの出番もかなり少な目となっており、大部分を人間ドラマで見せていくタイプのサメ映画でした。
それにしても古臭い雰囲気です。
ノートパソコンさえ出てこなければ「フライングジョーズ(1985年アメリカ映画)」とか言われても何の違和感もない…。
キャラクターは紋切型というか善人と嫌な奴が非常にくっきり分かれており、
嫌な奴はもれなくサメに食われてくれるのである意味スッキリはできます。
とはいえ、
「沼でワニを飼っているレストランの人たちが店を守るためにサメ退治」
「ワニ祭り会場にサメが出現」
というだけの話ではどうにも弱すぎると言わざるを得ません。
人間ドラマがしっかり出来ているかというと、別にそういうわけでもない。
唯一ちょっと伏線ぽい要素のあった恋愛部分にしても
冴えないデブの従業員が主人公の妹と結局くっつかなかったりと投げっぱなし。
ではサメはどうなのかというと、これが実に地味。
前半は背ビレが出てるのと、人間を水中に引きずり込むだけというお決まりのパターン。
ワニ祭りになった時にようやくジャンプして人を食ってくれましたがCGは非常にお粗末です。
一応、オオメジロではなく深海から連れてこられたサメという設定なので
鎧のように固い皮膚を持っているのですが、
「外がダメなら内から破壊するんだ!」と
これまた定番すぎる倒し方が提示されて逆にビックリしましたが
さすがにそれはやりませんでした。
代わりにわりと新しいやり方を提示してくれたのはいいんですが、この倒し方は見てて可哀相でした。…サメが。
別にこのサメ、悪いことしたわけじゃないしなあ…
人は食ったけど、嫌な奴多めだったしあれはむしろ善行の部類でしょう。
だいいち希少動物の違法取引でむりやり沼に連れてこられただけだし。
それであんな無慈悲な殺され方をして、レストランの人々が大喜びしてハッピーエンド、というのはちょっと釈然としないものがありますね。
出来はそんなに悪くない、まあまあ平均レベルのサメ映画とは言えますが
「ろくに飛ばないのにフライング」というネタを除けば特にこれといってオススメできるポイントはありませんでした。
この田舎くさい空気感、地味さと中途半端さは「ジョーズ 恐怖の12日間」に通じるものがあります。あれを気に入った人ならこっちも楽しめるかもしれません。