半年ぶりに映画館へ行ってきました。
普段は地方でも劇場公開してくれるようなメジャー系の新作映画はそれほど見ないのですが
ジャウマ・コレット=セラ監督作品に関しては、2005年の「蝋人形の館」が大変良い出来だったので、その次の「エスター」からはほぼ毎回劇場で鑑賞しています。
何より「ロスト・バケーション」を撮ってくれた人でもありますのでね。
年度初めで非常に忙しい中であっても絶対に見逃すことはできません。
本作はリーアム・ニーソン主演ということで、この監督とは4回も組んでいます。
だいたいの場合、リーアム・ニーソンは元警官だったり元CIAだったりするけど、
今はただの冴えないオッサンに過ぎない。
しかしいつの間にやら巨大な陰謀に巻き込まれていき…。
というパターンの話が多いような気がします。
本作においても、
「元警官のマイケルが現勤め先の保険会社をいきなりリストラされ、しょぼくれて帰りの通勤電車に乗ったら、今度は急に謎の女に人捜しを頼まれ、やがて陰謀に巻き込まれていることに気付く」
という話。
閉鎖空間の中で携帯電話であーだこーだと指示されて仕方なく従うリーアム・ニーソンを見ていると、
2014年の「フライト・ゲーム」と似通った印象を受けます。
しかしこの監督の過去作にせよ、「96時間」シリーズにせよ、リーアム・ニーソンは毎回毎回超人的な活躍をしてしまうので、どうにもその「冴えないオッサンに過ぎない」という導入部に違和感を覚えてしまいます。会社をクビになってトボトボ歩いているシーンはさすがに哀愁漂いますが、どうしてもそれが似合わない。
本作はそんな彼が通勤電車で見知らぬ女の雑談に応じていたら、軽い気持ちで人捜しゲームに付き合わされてしまう。大金の匂いに釣られてしまったという負い目、そしてついには家族も人質に取られてしまったことで、謎の女の依頼を無視できなくなる。
人捜しと言っても、通勤電車に乗って終点まで行こうとしている「プリン」という名の人間を探せ、などと言われても手がかりがなさすぎるし目的も何もかも不明。
ということで主人公マイケルは電車の中をウロウロして手当たり次第に乗客に話しかけまくるのですが、この辺は観ていて居心地の悪さを感じます。
話しかけられた側の「なんだこのオッサンうぜえな」感がね。
お年寄りは見知らぬ他人にも何やかや話しかけたがりますが、そんな領域に入って来たリーアム・ニーソンなど観たくない。
「私はこの電車の常連なんだ 君は見ない顔だね」という持って行き方が、先入観なしで見たら完全に耄碌ジジイです。通勤電車のヌシ面をしてどうするのかと。
あの状況ではなりふり構っていられないっていうのは分かってるんですが…。
しかし、そのうちこの人捜しがかなり大掛かりな犯罪行為の一部なのではないか?
という流れになって来てからはだんだん引き込まれて行き、クライマックスではしっかり電車がドカーンバゴーンとクラッシュする見せ場もあり、さらに本当のクライマックスはまだまだその後にもあり…、案外、乗客の正義感とか善意で感動させてくれる場面もあり…とサスペンスアクションとしては充分に楽しませてくれる良作でした。
やはりジャウマ・コレット=セラ監督作品の安定感は抜群です。信頼の安打製造機。
ただ、「フライト・ゲーム」もそうでしたが冷静に考えるとツッコミどころは結構多くて、特に「プリン」はなんでそんなところに一人で行かなければならなかったのか?
というのは事件の根本なので気になりましたね。
マイケルは本来プリンと無関係だし、ちょっと歯車がズレただけでこんな陰謀は成立しません。
そんなリスキーな計画でいいのかと…。
そんな感じなのであまり緻密なサスペンスを期待するのではなく、
セガールの「暴走特急」やヴァンダムの「ディレイルド 暴走超特急」
…のリーアム・ニーソン版みたいな電車アクションものとして気楽に鑑賞するのがよろしいかと思われます。
と言ってもセガールやヴァンダムとは違って、リーアム・ニーソン映画はそれだけで気品があり知的な雰囲気が漂っていて格式が数段上であるように感じられて大変お得です。
スタッフロールの遊び心も気が利いており最後まで飽きさせません。
あと地味にBGMの出来が良く、妙に耳に残る旋律。久々にサントラ盤も買ってしまうぐらい気に入りました。
この手の渋めのサスペンスアクションが嫌いでなければ劇場へ足を運んでも損はしないでしょう。そこそこオススメです。