新アリゲーター　新種襲来　感想（ネタバレあり）　　なかなかの珍作

主人公は田舎暮らしに嫌気がさして地元を離れていたエイブリーという女性です。
動物を殺すべきではないと主張している完全菜食主義者。…なのですが、作中最もワニを大量にブチ殺しまくっていました。
人間ドラマ的には大昔から対立している一族があって、その中でエイブリーとデイサンという男がロミジュリ的な恋愛を展開したりするのですが、今どきこんなんありかなあと疑問。というか見ててダルいです。


本作のワニは、首と尾が赤く、尾の先から殺傷力抜群なトゲを高速射出することができます。
「新アリゲーター新種襲来」と邦題に２回も「新」を入れて新しさをアピールするわりにはちょっと地味な気がします。
でもまあＣＧっぽさ丸出しでゲームチックではありますがワニを出し惜しみしてないし、良く動くし、表面の質感はなかなかがんばって作ってあるので好感が持てますね。
サメ映画もこれくらいやってほしいものですが。


まあ、それだけだと単なるＣ級ワニ映画で終わってしまうところですが、本作は一味違いました。
なんとこのワニに噛まれるとワニに変身してしまうのです。あと、このワニを食べてもワニになります。ゾンビウイルスみたいですね。
最初はワニと人間の中間的な「ワニ人間」になるのかなあと思ったんですがワニそのものでした。一体どんな密造酒を流したらそんなもんに変異するのか。


ワニ菌に感染した人間がワニに変貌していくシーンはすごく気合が入っております。
ここは低予算映画とは思えないほどのハイクオリティ。
アカデミー視覚効果賞にノミネートさせたいぐらいです。
そんな変なモンを頑張ってリアルに見せようとするスタッフの力み具合には思わず頭が下がります。そこに力を入れるより、普通にワニが暴れまくる映画にした方が確実に面白いモンスターパニック映画になったでしょう。
が、あえてそうせずに誰もやらなかったことをやってやろう！という志の高さを感じますね。


ただ、主人公エイブリーの行動はいただけない。
このワニは元人間なの！私の家族もみんなワニになったの！と言って不殺を主張するのですが、
実際はコイツがほとんどのワニを殺してます。
特に、複数のワニが寄ってきたところにガスボンベ射撃でまとめて爆殺したシーンはすごい。
殺すなと騒いだ直後にそんなことしますか。
逃げようと思えば余裕で車に乗って逃げられたし、何より人が住んでいる家もろともやっちゃってます。そこまでしなくてもねえ…。


ワニになっちゃっても人間の頃の記憶と性格がそのままらしいので、
ワニ化した父親や恋人のデイサンがエイブリーを助けるシーンなどもあります。害がないとワニもなかなか可愛く見えますね。
しかし、終盤でやっぱりエイブリーは「彼らは血の味を覚えてしまったから殺すわ」
などと手のひらを返し、ワニ化した人間をまとめて爆殺。
そこまでしなくてもいいんじゃないか…？
人間の味を覚えてない個体もいたんじゃないのか…？
割り切り加減がすごい、というか思い切りが良すぎますね。
でも切ないＢＧＭで過去回想して涙ぐみながら火炎瓶を投げてたので
感動させようとするシーンっぽかったです。やはりどこか感性のズレた人間でなければこんな変な映画は作れないでしょう。


この女、ラストでは結局地元に住みつき、ワニ皮を売って生計を立て生活していました。
動物を殺すなと言っていたのに…
しかもワニ化した恋人と仲睦まじく暮らしましたというお口あんぐりなエンディング。
恋人以外はまとめて爆殺したのに…
恋人以外はワニ皮にして売っちゃうのに…


ワニがいまいち怖くないという欠点もありますが、というか欠点だらけの粗削りな作品ですが、
スタッフのサービス精神旺盛ぶりにはけっこう感心しました。
ワニ大好き、もしくは変なものが観たい！という方にオススメです。