90年代からゼロ年代、C級クソサメ映画界という特異なジャンルにおいて、
サメの資料映像を駆使した低予算サメ映画を量産し、独特の存在感を示していた「NU IMAGE」という映画製作会社がありました。
本作はその中でも特に先鋭化された資料映像の活用方法で、当時流行していた
「メガロドン」(※150万年以上前に生息していた超巨大鮫)
をテーマにした映画の中でも一つの極北と言える珍品です。
数あるサメ映画の中でも屈指の知名度を誇る本作のことですから、
私が今更感想を述べても仕方ないような気がしますが、
なんとなく再見してしまったので2018年現在の視点で感想記事を書いてみたいと思います。
(※本作は2002年の作品です)
例えC級クソサメ映画でも何度も何度もうっかり繰り返し観てしまうのがサメ映画マニアという人種の習性なのです。
まず「ディープ・ライジング コンクエスト」というタイトルは一体何を意味するのか?
ということが昔から気になって気になって仕方がないポイントなのですが、本編がはじまるとこのようなタイトルがドーンと表示されます。
「シャークアタック3 メガロドン」
って別にそのまんまの邦題付ければいいのに…
「ディープ・ライジング」はともかく、どうして「コンクエスト」なんて単語をくっつけたのか10年以上悩み続けていますが未だに答えは出てきません。
さっきも少し触れましたが、本作は当時飛ぶ鳥を落とす勢いでサメ映画を量産しまくっていた
「NU IMAGE」製作作品です。
ここのサメ映画は毎回毎回同じ資料映像を流用することでも非常に有名で、
明らかにどっかで見たサメの映像がバンバン出てきます。
当ブログで紹介済みのやつで言えば、
「
シャーク・イン・ベニス」(2008年)
が同じ「NU IMAGE」作品です。
製作時期に6年の差があっても、当然のように全く同じ映像で楽しませてもらえます。
本作の主役はホホジロザメではなくメガロドンということで、
体長20メートルにも及ぶ超巨大ザメが暴れまくります。
しかし太古の昔に絶滅したサメなので資料映像は存在しない…
ではどうすれば良いのか?
そう、資料映像の加工です。
メガロドンは和名「ムカシオオホホジロザメ」つまり超でかいホホジロザメなので、
ホホジロザメの資料映像を拡大し、逆に捕食対象は縮小して合成することによって、
20メートルの超巨大ザメを無理なく実写化しているのです。
このような大胆な手法で製作されたメガロドン映画を私は他に知りません。
まさにコロンブスの卵的発想。本作はこのように唯一無二の個性を持ち、その名をC級クソサメ映画の歴史に残した偉大なるパイオニアなのです。
爽快感を重視した作風の本作において、ムカつく悪役などは
まるで吸い込まれるかのようにメガロドンのお口の中へ飛び込んでいくことで、
視聴者のストレスを解消し、本来残酷である捕食シーンを笑いへと昇華する方向性に振り切っています。これもまた他ではまず観ることのできない本作ならではの見どころと言えます。
メガロドンの襲撃を受け、パニックに陥るクルーザーを尻目に自分だけ水上バイクで逃げ出そうという、
吐き気を催す邪悪な人物。その末路は本作最大のクライマックス。
何という素晴らしい笑顔でしょうか。
ちなみに彼は自分のビジネスに出資してくれるセレブたちを招いて船上パーティを開いていたので、それをサメにぶち壊しにされた時点でビジネスマン人生が終わったも同然です。
1人だけうまく逃走したとて、こんな「してやったり」な雰囲気を出す理由がありません。
4コママンガの3コマ目といった風情の絵面ですね。
直前の笑顔との落差の激しさに4コマ目のオチへの期待が膨らむ良い表情です。
そしてどっかで見たようなサメのお口の中へゴールイン。
このシーンを見て考えてしまうのは、
サメに喰われる時は噛まれるのが一番辛いと思うんですが、
ここでは吸い込まれるように丸呑みです。つまり胃の中でまだ彼は生きています。
咀嚼されて死ぬのと胃液で溶かされて死ぬのとどっちが辛いんでしょうか?
思えばゼロ年代はサメ映画のトレンドが「凶暴化」から「巨大化」へと移り変わっていった時代であり、本作の他にも「
シャークハンター」やそのまんま「
メガロドン」などのメガロドン映画がレンタルショップの棚を占領した時代でもありました。
10年代に入ると今度は各自様々な工夫を凝らした奇怪なサメモンスターが幅を利かせるようになりましたが、太古の巨大鮫・メガロドンという題材には未だロマンを感じさせる力があります。
私もメガロドンの歯の化石を買おうかどうか未だに迷っているくらいです。
そして本年はスティーヴ・オルテンの超面白い小説「
メガロドン」(※前述の同名映画とは別物)が、
あのスーパースター
「ジェイソン・ステイサム」主演で映画化され公開される予定なのです。
2016年の「
ロスト・バケーション」
2017年の「
海底47m」
に続く、A級サメ映画の大期待作。
これによって、サメ映画界におけるメガロドンブームが再燃することは間違いないでしょう。
そんな第2次メガロドンブームに乗り遅れないためにも、本作のようなメガロドン映画を観て予習・復習しておくというというのも悪くない選択肢ではないでしょうか?