公開当時に劇場で鑑賞し、アマゾンにもレビューを投稿したのでかなり今更ですが、
ブルーレイでまた見直したので改めてもう一度賞賛しておきたいと思います。
2016年当時、と言ってもまだ2年も経ってませんが、
まともに作られたサメ映画は「ジョーズ」と「ディープブルー」しかありませんでした。
つまり私のようなサメ映画フリークは
17年間もまともなサメ映画を観ることができず、
「ディープライジング」シリーズ(?)やら「シャークハンター」やら微妙すぎるC級映画で
かろうじて飢えをしのいでいるというサメ映画日照りが続いていたのです。
そんな中、劇場でサメ映画が、しかも全国で公開されるという衝撃。
しかも監督はジャウム=コレット・セラ。
リメイク版蝋人形の館から始まり、エスター、フライトゲーム、ランオールナイトなど
実に手堅く出来の良い娯楽作を作る、信頼できる監督というイメージでした。
そして「ロスト・バケーション」は邦題こそ激ダサなものの、
サメ映画史上No2と言っても良いくらいの傑作でした。
主要キャストはブレイク・ライブリーさんだけであとはチョイ役が数人いるだけ、
舞台はひと気のないビーチのみ、サメはそれほど姿を見せない、
と一見ひどい低予算ムービーのような要素が揃っていますが
全くそんなことはありません。
映像の美しさがその辺のサメ映画とは段違いに凄い。
そもそも舞台となる秘密のビーチからして綺麗な場所ですが、
サメ映画でよく見るカリフォルニアの海水浴場みたいなお手軽さが全くなく、
スタッフや機材を持ち込むのもめんどくさそうな秘境であることは
何となく察しがつきます。
わざわざそんな場所をロケ地に選ぶ時点で、凡百のサメ映画とは気合が違いすぎます。
とにかくサメ映画といえばお手軽に作れてお手軽にレンタル数を稼げる、
みたいな志の低い作品であふれかえっていますが本作は手間暇を惜しんでいません。
またサーフィン中、背後の波の中にサメが映り込む映像など見せ方にも工夫があり、サメ映画として新しい表現をしっかり開拓しています。
お話自体は「サーフィン中サメに襲われ、浅瀬に取り残された女性のサバイバル劇」という実にシンプルなものですが、映像で語ってくれれば複雑な人間関係や会話、奇をてらった設定など無用の長物だと理解させてくれます。
また、本作はサメ映画というだけでなく実は鳥映画としての側面(?)も持ち合わせています。
サメに襲われて負傷し、小さな岩礁の上で耐えるブレイク・ライブリーさんと共に過ごすカモメが第二の主人公と言っても良いぐらいの存在感を出しているのです。
私はセキセイインコを飼ってたり、その辺のハトやカラスにも話しかけるぐらい鳥好きな人間なのでこれは思わぬ副菜でした。
↑人間がサメパニックに陥る中、後ろで呑気にトコトコあるくカモメ。
翼を脱臼していて飛べなくなっています。カモメ触りたい。
カモメにどうやって演技させてたのか気になりましたが、
まあ普通に考えて羽を切って一時的に飛べなくしただけで
あとは全部素のままの動きなんでしょうね。
カモメは目がちょっと怖いんですが、それ込みでも実に可愛らしく、
鳥好きな人にも隠れた鳥映画の名作としてオススメしたいぐらいです。
サメの方はおそらくCGとアニマトロニクスを併用していると思われますが、
いずれにせよ実物と容易に区別がつかないほどのハイクオリティです。
姿を見せることはあまりなく、背ビレと大きな影で怖がらせる作りですが
出る時はグワッ!と一気に出てくるので大変メリハリがついています。
映画の設定的に色々とリアルなので、ここまで執拗に個人を狙うホホジロザメがいるのか?
というのが鑑賞中に感じる最大の疑問点ですが、
まあ大抵のサメ映画に共通する問題なので仕方ないでしょうね。
大事なのは実際のホホジロザメがそんな凶悪な生き物ではないと正しく理解することです。
「恐怖感」というポイントではのちに公開される「
海底47m」の方が上ですが、
映像美やクライマックスのカタルシス、すっきりしたエンディングなどトータルで見れば
こちらの方がまだわずかに上と言ってもいいでしょう。
2018年現在、サメ映画史上No2の称号は本作「ロストバケーション」のままです。
全サメ映画ファン必見と言っていいでしょう。