これはまとめ借りの数合わせで何となく選んだんですが…
小さな息子を目の前で誘拐された母親が、自家用車でどこまでも追跡して息子を取り戻そうとする。
っていう1行で説明出来てしまうぐらい単純極まりないアクション映画でした。
ハル・ベリーによる、母親版「96時間」といった趣ですね。
新しさも個性も特に感じませんでしたが、
尺も90分台だし、サラッと観られてそこそこスカッとできる、暇つぶしにはちょうど良い感じの佳作です。
とは言っても、アメリカでは幼児誘拐は相当な件数にのぼる深刻な社会問題であるうえに、さらった幼児は臓器売買だとか金持ち変態に売られるだとか悪魔崇拝に使われるそうです。
日本人にはいまいちピンと来ませんが、そう思って本作を鑑賞するとちょっとは考えさせられるものがあるような気がしないでもありません。
主人公は離婚した元夫に、愛する息子の親権を奪われそうになっている母親カーラ。
アメリカでは離婚も多くて、そのせいで身内間での誘拐も多いらしいですね。
冒頭の15分間そこそこで、子供の成長を撮ったホームビデオを垂れ流したり、遊園地で遊ぶ様子を映し出して母子の情愛をまずアピール。
弁護士との電話に気をとられた隙に息子を誘拐されてからは、ひたすらそれを追いかけるジェットコースター的展開で最後まで突っ走ります。
カーラの車はミニバンなので走行性能は低そうですが犯人の車も35年落ちの貧乏くさいやつなのでそこそこいい勝負。
誘拐犯が貧困層らしいので金目当ての誘拐であることは察せられますが、身代金を要求するわけもないのでその手の非合法組織に売り払うであろうと想像できます。
そういう組織が多数横行していることが、誘拐の件数増加につながっているらしいですね。
そんな組織に引き渡されたら取り戻すのは不可能でしょうし、必死でミニバンを走らせるカーラ。
追っかけるのに忙しすぎてなかなか警察に通報できないのがもどかしいんですが、
保安官事務所に貼ってあった行方不明の子供たちの写真を見て、自力で助けなきゃだめだ!と決意。それはいいんですが。
96時間シリーズでも思ったけど…結構一般人を巻き添えにしてるんですよね。後で問題にならないのかな。
まあそりゃ他人より息子の命の方が大事でしょうし、死人が出てなければセーフかもしれませんが…。
ただカーラはカーチェイスで死にかけた一般市民を守るシーンもあるので一応その辺にも少しは気を使っている様子。
車がガス欠になっても鬼の形相で猛然とダッシュ。
女性だってのに、見た目の迫力だけなら「96時間」のブライアン・ミルズよりも上な気がします。
私が誘拐犯だったら土下座して子供を返してるところです。
ただ、カーラは元CIAのブライアンと違い、何のスキルもないただの一般人だから
ひたすら根性で喰らいつくしかないんですが…
世の中根性だけでどうにかなるほど甘いわけないと思うんですよ。
…とはいえ、主役をハル・ベリーが演っているからには
「息子を取り戻せなかった」なんていう鬱エンドになるわけがなくてですね。
そういう意味では水戸黄門的な安心感を持って画面を眺めていられます。
案の定、誘拐犯の本拠地にたどり着いたカーラは銃で武装した誘拐犯3名を無事にブチ殺してこんな決め台詞。
超カッコイイ…。
一件落着どころか全米の英雄に祭り上げられました。
…でも元夫に親権奪われそうになってる問題はどうなった?
「それはそれ、これはこれ」か?
まあマスコミの力で世論を味方に付ければ裁判で勝てそうですが、そこがちょっとスッキリしなかったなあ…。
ということで、「96時間」ほどのクオリティはありませんが、
セガールとかスーパーヴァンダミング的なアクション映画が好きな人ならそこそこ楽しめるでしょう。