製作:2017年カナダ
発売:トランスワールドアソシエイツ
何億体ものヴァンパイアが人間を喰らいつくした世界で生き残った5人の男女。彼らは匂いを察知して追ってくるヴァンパイアから逃れるために車で安住の地を探していた。しかし車をパンクさせられてしまい、近くにあった核シェルターでの籠城を強いられてしまう。
さてお待ちかね「クワイエット・プレイス」のパチモンシリーズ最新作です。
トランスフォーマーから「クワイエット・フォレスト」、アットエンタテイメントから「クワイエット・ボーイ」と来て今度の刺客は自主製作カナダ映画に強いトランスワールトアソシエイツ(以下TWA)から襲来。
原題は「RED SPRING」と例によって本家と何も関係がありません。しかしこの邦題とジャケは前2作を上回る素晴らしい出来栄え。こんなん普通に騙されてしまいそうです。タイトルロゴの色使いまでそのまんま。作中にこんな格好した人は出てこない。これも訴えられたら敗けるでしょう。
しかし、よく見ると「クワイエット」を謳いつつ音は全然関係なくて、「匂い」がテーマとなっているようです。それなら「クワイエット・スメル」とか逆に「デオドラント・プレイス」みたいな邦題にした方がマニアの耳目を引いたのではないかという気がします。TWAはあくまで擬態する方に注力してライトな映画ファンから小銭を巻き上げようというわけですね。実にダーティ、けしからん配給会社です。
私のようなマニアにとってはマイナーな映画が観られるのでありがたいのですが、本気で騙された被害者たちの慟哭を想像すると痛し痒し。ジャケのクオリティは「騙される方が悪い」と胸を張って言えるラインに留めておいた方がよろしいのではないかと思います。
まあ、そんなアコギな商売の仕方はともかく中身についてですが、これはどう見ても自主製作映画。
監督・製作・脚本・編集・主演・特殊効果全てをジェフ・シナサックとかいう人がひとりでやっているようです。
トム・ゲッティほどではありませんが、頑張ってほぼ一人で作った映画だと思えばあまりけなす気にはなれない程度の出来ではあります。
ただ、尺が103分もあるのはいただけない。無駄に間延びしすぎています。編集は別の人にやらせるべきでした。私のスタミナでは、自主製作映画で75分を越えてくると非常に厳しいものがあるのです。今回は中盤で1時間ほど仮眠を取りました。
ストーリー的にはそこら中にあるポストアポカリプス系のものと大差なく、わざわざ自主製作してまで何を表現したかったのかと聞きたくなる話です。唯一新味と言えそうなのが「匂い」の要素ですが、ジャケで煽っているように「匂いを残したら即襲」などというほど大げさなものではありません。体臭の強いものから襲われるとか、放屁を我慢せねばならないとか、他に強烈な臭いを放つもののそばにいれば安全とか、ネタはいくらでも作れそうだけど特に何もないです。これはもったいない。
しいて言えばクライマックスで全裸になって泥を塗りたくって体臭を隠そうとするぐらいですね。しかしジェフ・シナサック氏の貧相な尻を観ているとパンツまで脱がなくてもいいんじゃないかなと思いました。ダッチ・シェイファーもズボンは履いたまま泥を塗ってましたしね。
ということで普通の人はまず見る必要はないんじゃないかなとしか言えない自主製作映画でしたが、「クワイエット・フォレスト」に比べればまあ楽しめないこともないです。同じTWA発売の「スリー・キラーズ」や「エンドレス・ナイトメア」とほぼ同じ程度のクオリティなので、アレくらいでもいいやと思える人なら借りてもいいかもしれません。
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