2016年アメリカ映画。
見知らぬブサイコさんにいきなり電話番号をもらった元特殊部隊リーダーのライアン。
さっそくその番号にかけてみると、いきなりビルが爆発。
そうして爆破テロ実行犯に仕立て上げられてしまったライアンは
FBIに追われつつも身の潔白を証明するため孤独な戦いに身を投じるのであった。
話そのものはありがちというかドラマ「24」とかジャック・ライアンシリーズみたいなテイストを取り入れたような雰囲気の超低予算映画です。とはいえ見た目が安っぽいわりには展開が速くて密度が濃くてなかなか悪くない出来。
…なんですが、私はそんなことよりエンドクレジットで驚きました。
製作:トム・ゲッティ
監督:トム・ゲッティ
主演:トム・ゲッティ
脚本:トム・ゲッティ
音楽:トム・ゲッティ
編集:トム・ゲッティ
撮影:トム・ゲッティ他
視覚効果:トム・ゲッティ
核爆弾デザイン・製作:トム・ゲッティ
ほとんど一人で全部やってる!?
ひどすぎるハニートラップに引っかかってしまったために
爆破テロ容疑者として追われることになってしまったトム・ゲッティ君。
とてもじゃないけど元特殊部隊リーダーには見えないけど、
ほとんどゲッティ君1人で作っているような自主映画なので
細かいところに突っ込むのは極めて野暮。
とはいえ、低予算映画に慣れている人ならば、そんなに生暖かい目で観なくても普通に楽しめるクオリティではあります。
トム・ゲッティ君凄い。本当に細かいところにさえ目をつぶれば、娯楽映画としてはかなり練られたシナリオです。フォーマットは王道でありながらもいくらかの独創性を発揮しています。
映像は基本的に死ぬほど安っぽく、カメラは無駄にガチャガチャ切り替わりが激しくてせわしない。が、それはそれで一応スピーディなストーリー展開とかみ合ってはいる。爆破テロの真相を探っていたら大統領が巻き込まれ、核爆弾がピッツバーグで爆発する危険が迫ったりとスケールも結構大きい。アルカイダだのビンラディンだのを実名でバンバン出してFBIやCIAの陰謀と絡めてくるのもなかなか楽しい。
映像が安いとは言いましたが、CGの出来はかなり良い。
爆発シーンもそうですが、ヘリと車のチェイスもこの手の映画にしては相当クオリティが高い。
この辺の仕事も全部トム・ゲッティ君がやっていると考えると、この人はマジで才能があるんじゃないかと思います。情熱も。ただ、ヒーロー役としてはルックスにやや難があるし、演技力にはもっと難があるので、本作を元にスポンサーを確保しつつ次回作では裏方に徹すれば相当良いものが作れるんじゃないかと。
トム・ゲッティ君謹製の核爆弾。
見た目はわざわざ「核爆弾デザイン」などとクレジットするほど大層なものには見えませんが、仕掛けはなかなか凝ってます。
ネタバレになるので詳しくは書きませんが、この核爆弾とあるものを連動させてアメリカ国民にとある選択を迫る場面には結構感心させられました。
展開がスピーディすぎてどいつもこいつも全く迷う素振りがなかったのには笑いましたが。
全体の雰囲気から察するに
「
アフターワールド2020」
「
ディストピア2049」
あたりと同じくらいの製作資金だったのではと想像しますが、
それらと比べても圧倒的に面白い。
大変コストパフォーマンスに優れた娯楽映画とも言えます。
しかし、視聴者からすればブロックバスターだろうと自主映画だろうと同じような料金で鑑賞するので製作費などという作り手の都合は本来知ったこっちゃないわけです。なので先入観なしで本作を観た場合、普通にイマイチ安っぽいだけの駄作と思われてしまうかもしれません。
しかしそれではトム・ゲッティ君という大いなる才能の萌芽を見逃してしまうことになってしまいます。
…まあ、別にそれでもいいですけどね。