製作:2018年アメリカ
発売:ニューセレクト
死刑執行がエンタメ化されテレビ放送されている近未来。
恐竜がうろつくVR世界でのサバイバルゲームに参加する10名の死刑囚。
4つのステージを勝ち抜いた最後の1人だけが恩赦を得られる。
冤罪で死刑判決を受けてしまったタッカーは無事に勝ち残れるのか?
今月のプライムウェーブレーベル新作です。
しかも、ジャケには「ジュラシックワールド/炎の王国 に続く恐竜アドベンチャー大作」とかいう厚かましい煽り文句が(控え目に)付けられています。毎回思うけどよく怒られないもんですね。
しかも仮想現実でのゲームということで微妙に「レディ・プレイヤー1」の便乗作も兼ねているらしいです。何という図々しさでしょうか。原題は「ジュラシック・ゲーム」ですがどうせやるなら「ジュラシック・プレイヤー1」でちょうどいい内容だったんじゃないですかね。
本作、なんと監督がライアン・ベルガルトということであの悪夢的珍作「グレムリン2017」と同じ人です。しかも、主演のタッカー役の人も激しくどこかで見覚えのあるヒゲ面だなあと思っていたらなんとそちらも「グレムリン2017」で超クズ男を演じていたアダム・ハンプトンでした。ということで、本作は「グレムリン2017」コンビによる新作ということになります。そんなの面白いわけがありませんね。さすがプライムウェーブレーベルで発売されるだけはあります。
だいたい、「ジュラシック何とか」っていう便乗映画は星の数ほどあるんですが、どれ一つとして面白かった試しがないんですよ。特に「ジュラシックシティ」が悪夢的につまらなすぎたせいで、もうジュラシックという文字を見るだけで悪寒に襲われ食欲不振に陥るくらいです。そのうえ「ユニバース」とか言われても全く面白そうな響きが無い。観る前からクソ映画認定したくなりましたよ。
…と、思ってたんですが、
意外にも本作はけっこう…いや、かなり面白い。
もちろんクソ映画には違いありませんが、これは相当楽しめる部類のクソ映画です。何ということだ。素晴らしい。思えば「グレムリン2017」も何か得体の知れないパワーを感じるクソ映画でしたし、CGの出来は悪くなかった。歯車が噛みあえば面白いクソ映画を作れる映画人たちだったようです。
↑まずは恐竜のCGを見て驚きました。
本家ジュラシックワールドを堪能してきた人はちゃちいと感じるかもしれませんが、
この手の映画にしてはかなりのオーバークオリティです。こんな映画でここまでリアルなCGが必要か? 多分いらないですよ。CGスタッフ無駄に頑張り過ぎ。
まさか「グレムリン2017」が実はそこそこヒットしていて予算が潤沢に確保されていたのか?
ジュラシックゲームは死刑執行を兼ねた娯楽としてテレビ番組で放映されている、
ということでそれっぽく選手紹介が入ったり。この辺もテンプレ表現とはいえそこそこスタイリッシュで洗練されており安っぽさがない。普通に馬鹿馬鹿しくて笑えます。
彼らが恐竜のうろつく世界から脱出できれば勝ちなのかと思えば、
助かるのは1人だけなので死刑囚同士でのバトルロイヤルがむしろメインといった趣きだったりします。
そこは賛否分かれると思われますが、怯えてるフリからの噛みつき攻撃など死刑囚ならではの卑怯臭い肉弾戦もそれはそれで楽しいですね。
恐竜が現れた時だけは死刑囚同士で協力しなければ生存も危ういなど、臨機応変に戦略を切り替える必要もありそれなりにスリリングなゲームのように見えなくもありません。
ちなみに、当然ながらVR空間で死ねば現実でも死ぬというルールです。
↑敵は恐竜しかいないのかと思えば、唐突に巨大なクモが画面に映ったりして
無駄にワクワクさせてくれたんですが、この巨大クモはただ映っただけでした。
この下でいかにも襲われそうな死刑囚がウダウダと揉め事を起こしていたのに、これはひどい肩透かし。
一応恐竜映画なのに何で無意味にこんなもの映したの?
↑合間に入るCMのセンスも嫌いじゃない。
惨殺シーンを放映している最中である死刑囚のフィギュアを子供向けに売り出すという不道徳さがそこはかとなく爽快に決まっています。
しかも全10体を揃えると嬉しいおまけ付き。
番組司会者の小憎らしい面構えと演技も文句のつけようがないクオリティです。
↑そして急に襲ってくるサーベルタイガー。恐竜はどうした??と言いたいところですが、はっきり言って本作において恐竜など限りなくどうでも良い存在だと言い切れます。死刑囚を襲ってさえくれれば別に何が出てきても構わない。VR空間なので何でもアリなんです。というかどうしてあの巨大グモは暴れさせなかったのか。もったいない。そこら辺がテキトーすぎるからこそのクソ映画です。このサベタイもかっこよく飛んできたはいいがそのまま勝手に崖下に落っこちていきました。何やってんの?
テキトーと言えば、主人公のタッカーは妻殺しの冤罪を着せられた男ですが、では真相は?犯人は?という部分が凄まじくテキトーでした。何の脈絡も伏線も必然性も無い。だがそれがいい。いや、よくはないか…。
ということで、「死刑囚たちが恐竜のいるVR空間で殺し合い」なんて説明を聞いて「面白そう」と素直に思えるような人であれば、おそらく期待を裏切ることはないでしょう。パチモンとは思えないクオリティに私も大満足。少なくとも「
グレムリン2017」や「
ジュラシックシティ」よりははるかに面白いと言えるし、くだらない映画を観たいという人には自信を持ってオススメできます。
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