ジョー・ダンテの「グレムリン」シリーズとは何の関係もない、というのは
ジャケット絵からも「2017」からも明らかです。
しかしなぜ今更グレムリンの便乗タイトルを?
3作目やリブートでも作る予定があるのでしょうか。
まあ原題からして「GREMLIN」なので単にジョー・ダンテのグレムリンとモチーフが同じであるというだけなんでしょうね。
それでここまで趣の異なる映画が出来るというのも興味深いところです。
本作のグレムリンは、タイマー付きの箱の中に入っており、気まぐれに出てきて持ち主の家族を殺す呪いのモンスターです。
タイマーが切れるとどうなるかは誰にも分からず、
呪いから逃れるには愛する人に箱を渡さなければならない、
という「リング」チックなルールがあります。
といっても、その辺かなりテキトー臭いんですが。
ルールを厳密に設定してくれないから謎解き要素も皆無だし、
箱がどっから来たかも最後まで分からないまま。
そこら辺もうちょい探ってほしかったな。
冒頭、前の東京都知事にちょっと似たオッサンが主人公一家に呪われたグレムリン箱を渡すところから主人公(アダム)の受難がはじまります。
普通、この手の映画では、主人公の家庭は崩壊しかかっており、
トラブル解決を通じて家族の絆を取り戻す、というのが一般的な流れです。
本作でも、「数年前に10歳の長男が誘拐され、ゴミ箱で発見された」という凄まじく重たい過去設定を持ち、冷え切った家庭を持つ男アダムが主役です。
グレムリンと戦いながら家族のヒーローとなっていくんだろうな、と予想できるわけですね。
↑本作の殺人モンスター・グレムリン。小さくて弱そうなんですがね。踏みつぶしてしまえそう。
CGのクオリティは悪くないけど根本的にデザインに魅力がない。
しかし本作は私ごときのそんな拙い予想など一瞥することもなく、
全く異なる方向へ爆走していきました。
このアダムという男、途方もないくらいのクズ野郎だったのです。
こんな奴ではとてもヒーローになどなれません。
重い過去があるから仕方ないよね?と言うことかもしれませんが…
そういう言い訳が出来る領域は超えていると思われます。根っこから腐り切ってます。
彼だけではなく、娘も、そのボーイフレンドも、大概頭おかしいレベルのクズ共なので
クズ・ウォッチングが好きな人は大いに楽しめることでしょう。
世間では有名人の不倫報道ばかり話題にするマスメディアが非難されたりしていますが、
アダムも子供が2人もいながら二枚舌を駆使して職場の女とガッツリ不倫しています。
もうこの時点でちょっと感情移入が難しくなってくるんですが、
「愛する者にグレムリン箱を押し付けなければ、いずれ家族みんな殺される」と判明したら
「不倫相手に渡してくる 彼女を愛してるから」などと奥さんにほざくわけです。
面倒な女も始末できて一石二鳥のグッドアイデアだろ?と言わんばかり。本当に愛してんの?
その瞬間「ゲス野郎!」と物凄い勢いで奥さんにビンタされるシーンはなかなかの笑いどころですね。ついでに鉛弾をぶち込んでくれれば本作の評価も上がったのですが。
しかし、「娘を妊娠させたことを報告しにきたのに勝手に冷蔵庫を開けてチキンを喰い出すボーイフレンド」が殺され、クズな父親のおかげで不良化してしまった哀れな娘も殺され。
捕まりたくない一心でじゃまな死体を地下室に隠ぺい。自己保身に凝り固まってます。
そんな奴がここまでくると当然、
「やっぱ不倫相手に押し付けよう」という流れに戻ります。
そして「何これいらん」という不倫相手にむりやり
「受け取れ!!!」と怒鳴って押し付けるあたりではもうアダムのクソ野郎っぷりが頂点に達してます。DV殺人にも等しい蛮行。
(しかも不倫女が殺されただけで徒労に終わる。やはり愛はなかったようです)
ここらへんで大抵の観客は「コイツ早く死なねーかな…」と思うようになるはずです。
何だかんだでグレムリンを止めることができず、
アダムが愛する人間は幼い息子チャーリーだけになってしまいました。
だからと言って息子に渡すというわけにもいかない。
どうすれば息子を助けられるのでしょうか?
正解は…
刑事に渡す。でした。
最後のセリフもコレか…
この男、
「約束する」と「
分からない」というセリフが多すぎます。
約束はもれなく全部破りますし、最初から最後までほとんど何にも分かっていません。
クズなうえに無能…
不運といえば不運ですが、もっと不運なのは…
こんなもんを受け取ってしまった刑事の方です。
作中一番の常識人だったのに。
クズに迷惑をかけられるのはいつも常識人と決まっています。
それにしてもなかなか良いリアクションを見せてくれますね。
「お前、オレを愛していたのか?」
不倫相手でも箱の譲渡が成立しなかったのに、なんでこの刑事には成立したのか?
愛する者じゃないと呪いは解けないんじゃなかったのか…?
全く持って分からん…
しかもこの刑事の戸惑い顔の直後にそのままエンドクレジットへ突入するのだからたまりません。なんというラストカットか。
レンタルDVDじゃなかったらフリスビーにされても仕方ないレベル。
彼らも観客も、一体何が起こっているのかサッパリ分からないままぶん投げEND。
このシュールすぎるオチが本作において一番の見どころと言っていいでしょう(好事家的には)
それぐらい普通の意味での面白いシーンはないです。
クズ野郎のアダムが報いを受けないのが一番の問題点ですね。
作中最も邪悪な人物が無傷で生き残るとか、フラストレーション溜まりまくり。
ちなみに2番目の見どころはゲス野郎ビンタのシーンです。
トータル的なクオリティは一応劇場公開していいレベルにはありますが、
それでも本作は相当なクソ映画と言えるでしょう。脚本がアレすぎて。
まかり間違って「ジョー・ダンテのグレムリン」を好きな人が勘違いして
鑑賞してしまったらと想像すると笑みが漏れます。
クズ・ウォッチングが大好きだとか、シュールなオチで笑いたいとか言う人以外には
オススメできないヘボモンスター映画の珍作でした。
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1. 無題
Re:無題
面白がって頂けるとうれしいです。
にしても、この珍作に人を泣かせる力があったとは驚きですね。
あなたの涙腺の脆さもちょっと心配になりましたけど。
しかし、確かに家族を失って悲しみに暮れるシーン「だけ」見ればマトモだったのかも…?という気がしてきました。
これから「泣ける映画を教えて!」と聞かれたら「グレムリン2017」のDVDをフリスビーの如く投げつけることにします。