製作:2018年アメリカ
発売:プライムウェーブ
南太平洋海底でなんかの悪事を働こうとしていたロシア海軍潜水艦。しかし掘削作業中にメガロドンの襲撃に遭い身動きがとれなくなってしまう。たまたまその辺を哨戒中だったアメリカ海軍駆逐艦が彼らを発見し、潜水艇で救助へ向かう。だがメガロドンはその潜水艇を飲み込んでしまうのであった。
「MEG ザ・モンスター」に続けとばかりに超速攻で製作された我らがアサイラム社のモックバスター。あまりに仕事が速すぎて本家より先にDVDリリースされてしまいました。ジャケットがそっくりすぎるので割と本気で被害者が続出するであろうことが予想されます。しかもこのジャンルの場合、騙されても気付かない人が多そうですごく不安です。
「あんまりおもしろくなかったけど、まあサメ映画なんてこんなもんだよね」…などと済まされたらあまりにも悲しい。いや、あながち間違ってはいないけども。本物の「MEG」は例外中の例外で本当に凄く面白いんだよと教えてあげたい。
とはいえ、アサイラム社は元々サメ映画大好き、そしてモックバスターが得意。つまりサメ映画のモックバスターなんて彼らにとっては得意中の得意とする分野であります。さぞかし水を得た魚のように製作したことでしょう。
しかし、それでも面白さに全く結びつかないところがアサイラム社とサメ映画が根本的に抱えている業の深さを感じさせてくれます。
いや、本作はそこまで酷い出来というわけではなく、サメ映画としては無難に標準的なクオリティを備えていると言えるでしょう。要するに凡作…人によっては駄作なんですが、決して観るに耐えないというほどではありません。人によっては。
↑メガロドンさんのCGが荒いのはいつものことなので気にしてはいけません。
問題はメガロドンさんの出番が少なすぎるうえに存在感が希薄すぎることです。まあ、それが標準的なサメ映画と言えばそうなんですが。
本作はメガロドンさんとアメリカ海軍の戦いを描いたサメ映画かと思いきや、実質的にはほとんどロシア軍人3名とアメリカ海軍の戦いがメインとなっているのです。
それもロシア軍人は野蛮で卑劣で憎たらしい悪党でしかなく、逆にアメリカ海軍は正義感と勇気と自己犠牲心にあふれる英雄ばかり。B級サメ映画でこんなプロパガンダじみたことをやって一体どうしようというのか。
ただ、徹頭徹尾軍人しか出てこないサメ映画というのは珍しい。その辺に希少価値を見出したいところではあります。
しかし、駆逐艦や潜水艇の設備が激安すぎるし、出ている役者さんたちも全然軍人に見えないのにマジメくさった顔しかしてない。そのせいで「シリアスなのにゆるゆる」というB級の悪いパターンにはまっちゃってます。特にメガロドン映画はなぜか笑いに走らず変にマジメなのが多くてそうなりがちです。
「どうやってサメから出ます!?」というセリフだけはちょっと面白かったけど、そこがハイライトだった感が否めない。サメの腹の中に入るのはクライマックスまでとっておくべきでした。それを前半に持ってきちゃうと後半やることないでしょ。
そのうえメガロドン映画全てが抱えている根本的欠陥として、「メガロドンがデカすぎて人間をモリモリ喰らうシーンが描けない」点を改善する気が全く無い。特に本作はメガロドンに喰われる人間がモブ2人だけ。それもクルーザーごと丸呑みするだけ。血の一滴も出ない。
あんなデカイんだからたまには100人ぐらいまとめて噛み砕く阿鼻叫喚の地獄絵図が観たいんですけど? なんで誰もやらないの?
↑救命艇で逃げ出す兵士たち。なんかコピペっぽくてちょっとシュール。
彼らがメガロドンに一切襲われないのが逆に驚き。うっかり海に落ちた兵士も誰も喰われません。ここまで来るともはや虐待。少しはエサを喰わせてやれと言いたい。
本作のメガロドンはドリルやエンジンの音に引き寄せられる…という、非常によくある特性を持っています。で、何度も深海へ帰ろうとするのにそのたびにわざわざ呼び寄せては何やかんや騒ぐアメリカ軍人たち。ほっといてやればいいじゃんと言わざるを得ない。つーか誰もメガロドンに興味無さそうなのがね…。何のためにメガロドンを殺さねばならないのか分からないし、メガロドンの保護を主張する女性海洋生物学者もいない。実にテキトー、ゆるゆるです。
しかし、最後の最後でメガロドンさんと対峙するマイケル・マドセンのテキトーさ加減だけは実に素晴らしい。主演と見せかけておいて実は単なるチョイ役だったと思いきや、最後に全てを持って行くマイケル・マドセンだけが一瞬の輝きを見せた映画でした。
そんな感じでかなり微妙なメガロドン映画なので、くれぐれも「
MEG ザ・モンスター」と間違わないようにして頂きたいところです。
「MEG」以外のメガロドン映画が観たいという方は「
ディープライジング コンクエスト」「
メガロドン」「
シャークハンター」「ブルーサヴェージ」のいずれかをオススメしておきます。
これら全部観ちゃったよというアレな方は遠慮なく本作をご覧になると良いでしょう。