製作:2013年アメリカ
発売:コンマビジョン
遥か彼方の銀河、宇宙船型刑務所に囚われている3人の女囚がいた。彼女たちは自由を求め、脱出ポッドを奪っての脱獄に成功。しかしたどり着いた先は猿が支配している猿の帝国(惑星)だった。そこでまたしても囚われてしまう3人。さらにロックバスターを装備したハゲ看守までもが追ってくるのであった。
ポロニア・ブラザーズ・エンターテインメント製作(以下PBE)による、マーク・ポロニア監督作品。2013年製作と今まで観たポロニア作品の中では最も古い。しかし彼のキャリアは1987年から始まっているので数年ぐらい誤差のようなもの。クオリティ的には近年の作品と大差ありません。というか、今まで観たポロニア作品の中では一番面白かった。表面上は「猿の惑星」のパチモン的装いですが、それがわずかにポロニア監督の作家性を殺してしまったことが逆に功を奏したとみえます。
とはいえやはり一般の映画ファンから見ればまるでシュールストレミングのような刺激物扱いであることに変わりは無く、ジャケ裏には
「マニアは見逃すな!これが最先端のZ級作品だ!」とか、
「つらくても最後まで目を離すな!驚愕のラストが!」と言ったえらく開き直った文言が踊り狂っています。
さすがに
「観ることがつらい」ということを隠す気がないジャケというのは初めてです。パチモンというのは本来オリジナルと誤認して金を出させる事を目的として擬態しているはずなのに、
「つらい」とか書いちゃったら台無しもいいところです。
しかし配給会社的には本来金を出させた時点で作戦完了なわけで、「
つらくても我慢しろ」などとレンタル後のことを気遣っている点は実に親切と言えます。というかマーク・ポロニア作品を輸入してくれるだけで途方もなく親切ですが。
もっと輸入してくれ。金なら出す!それにしても、「一体どんだけ
つらいんだろう!?」という期待に胸をときめかせられるような人種でなければ本作を鑑賞することなどあり得ない。果たしてそんな商売が成り立つほどの需要があったのかどうか。
あってほしい。まあ、それでも「
ジュラシック・ビースト」や「
ビッグフットVSゾンビ」よりは観るのがつらくないのは確かです。それらに比べれば本作の方がストーリーらしきものがしっかりと存在するうえに雑談めいた脱線もほぼ無いのでストレスなく本筋に集中できます。
しかも、SFということで特殊効果を担当しているブレット・パイパーの驚くべき手腕を存分に堪能することができるのです。
↑女囚が脱獄し脱出ポッドで猿の惑星に向かうところ。我々好事家がZ級映画に期待するのはまずこういう無茶な画作りです。脱出ポッドというか湯沸しポットではないのでしょうか?
もはやセットとも言えないただの事務室を飾り付けただけのような宇宙船の内部や、自由研究で作ったストームトルーパーみたいなクルーのクオリティも恐ろしく凄い。さすがに役者の棒読みにも照れのような感情があります。興味がある人はぜひ自分の目で確かめて見て頂きたい。
↑女囚を拘束し、その目の前で何かを賭けて戦う類人猿たち。本作ではいつものポロニアファミリーの面々が見当たりませんが、類人猿のマスクをしているだけでちゃんと出演はしています。ゾンビやハリボテに比べれば、類人猿の格好はそれなりにマトモに見えます。
マトモに見えるだなんて、そんなんじゃつまらん!とZ級映画マニアとしては苦言を呈したくなるウィークポイントではあります。
↑刑務所長が女囚を追って猿の惑星へ降り立つシーン。SF映画にCGもハリボテもストップモーションアニメもいらない。そう、遠近法さえあれば。原始的な特殊効果に笑いが噴出するのを押さえることが出来ない。だがこんなのはほんの一部にすぎません。
この宇宙船は勝手に使われないように網目状のバリアが張られており、それに触れた類人猿や女囚がネガポジ反転するとか、オモチャのビームガンやロックバスターで「ピッギャリ~ン」「シュピギリ~ン」と独特過ぎるSEを発しながら撃ち合う場面をテテピコテピテコテテピコテピテコピコピコテピテコ~みたいなBGMで彩るという強烈にアバンギャルドな演出で、正直言われなくても目が離せません。
類人猿がどうのこうのよりもこういうSF的な部分に面白味を見出せばマニア的にはかなり楽しめる映画と言えるでしょう。
あと、確かにラストでは色んな意味で驚愕しました。
続編の「猿の帝国・反乱」も本国アメリカではすでに公開済みということで、一刻も早い日本版DVD発売が望まれます。