ジャケットとタイトルロゴがほどほどなスタイリッシュさでキマっているサメ映画。
とはいえ、ここからこのサメ映画に何らかの特徴を見出そうとしても何もありません。
「古代より蘇りし巨大鮫」という煽り文句も字が小さいだけあって地味。
鑑賞してみると、やはりというか実に凡庸な、平均的サメ映画としか
言いようのない至極普通のサメ映画でした。
しかし、私もよく「平均的サメ映画」というような言葉を使ってしまいますが、
果たしてサメ映画の中で「特別面白くもつまらなくもない中間点」に位置する
サメ映画とは具体的に何なのか。
おそらく「
ジョーズ・イン・ツナミ」か「
処刑鮫」あたりがそれに該当するであろう
と勝手に考えているのですが、これらは「娯楽度」というポイントでは
確かに平均レベルであるものの、サメ映画としては普通ではあり得ない
奇怪な個性を持っている珍品であるのも事実。
「これが普通のサメ映画ですよ」
と初心者にオススメするのはいかがなものだろうか?と疑問に思っていました。
ならばこれからは特に際立った個性が無い本作「ディノシャーク」こそが
真の平均的サメ映画として、サメ映画の出来の良し悪しを語る際に
一つの基準点足りうる存在なのではないか。という結論に至りかけました。
ところが、本作にはサメ映画として致命的すぎる欠陥がありました。
それは、北極の氷が解けたことによってその中から出現し、
メキシコまでやってきて人を喰いまくる古代サメ…の姿です。
サメに見えねえ…ジャケットが詐欺なのは今に始まったことじゃないし当然そうだろうと
思ってはいましたがそれにしてもサメっぽさが無さ過ぎる。
古代サメといえばメガロドンじゃないの?
これじゃサメ映画初心者に勧められない…。
目撃した主人公トレイスにもこんなことを言われてしまう始末。
あれがサメじゃないとすると本作もサメ映画ではなく
単なる魚介系パニック映画ということになってしまいます。
ところでものすごく見覚えのある顔だなあと思ったら本作の主演は
「
ブラックフット クマ地獄」やら「テキサスチェーンソー」やら
「24」の第6シーズンでとても酷い目にあっていたエリック・バルフォーさんでした。
知名度はかなり高いはずだと思うんですが、こんな映画にも出てるんですね。
私はこの人が最後まで生き延びたのを初めて見ました。
いや、酷い目に遭ってないのを初めて見ました。
メキシコで人を喰い散らかす古代サメに友人を喰われ、
怒り心頭で敵討ちに燃えるエリック・バルフォーとその仲間たち。
しかし地元では女子学生水球祭りが開かれようとしていた。
という話なんですが、本作のヒロインは生物学者兼水球コーチという
比較的珍しい属性を持っています。
が、例によって
サメ映画では定番中の定番、金髪女性学者による
古代サメの退治よりも研究目的の生け捕りを主張するシーン。
なぜサメ映画製作者は揃いも揃ってこういうキャラにこういうセリフを言わせるのか?
本作はとにかくサメの姿以外は、典型的サメ映画の様式美に染まりまくっています。
ジャケ絵でもアピールされてましたがヘリに喰らいつくシーンがあります。
まあ喰らいつくというかぶら下がってるというか、ジャケ絵よりも
激しく地味な塩梅となっておりますが。
エリック・バルフォーの後ろ姿との兼ね合いでお笑いにしか見えないのが
哀愁を誘います。
クソサメ映画では本当にありがちなことなのですが、
ラスト15分とかになってもまだ楽しそうなビーチに場面転換して
楽し気なBGMと遊びまくる一般人たちをダラダラ映し始めたりします。
いや、尺的にもうクライマックスもいいところのはずでしょ?
というこちらの心配をよそに、ビーチをダチョウが駆け抜けるという
何の意図があるのか全く分からない映像が垂れ流されます。
メキシコの海水浴場にはダチョウがウロウロしているらしい。
クソサメ映画を観て雑学的知識が増えると複雑な気分になります。
このあとサメに喰われるのかと思ったけど何もないし本当に何のための映像だったのか。
これにはマラソンのスパートをかけるべきラスト数百メートルで
呑気にドリンクを飲み出すランナーを観ているような不安感を覚えましたね。
まあこの業界ではよくあることではあるんですが、これだけはちょっと慣れませんね。
ただ本当に最後の最後、ディノシャークと戦うエリック・バルフォーの勇姿は
なかなかスタイリッシュな演出でかっこよく決まっていました。
「
パニック・マーケット」には遠く及びませんが、
このクライマックスだけはそれなりに観る価値があったと言えるでしょう。
ということで、サメがサメっぽくないという難点にさえ目をつぶれば
正に平均的クオリティのサメ映画なので、サメ映画マニアであればさほど問題なく楽しめます。
そうでない人は多分途中で寝てしまうと思いますが。