2016年アメリカ映画、マイク・メンデス監督作品。
これは最新作かな?と思ったんですが、
「
ドルフ・ラングレン ゾンビハンター」と同年製作でした。
DVD化すらされてないから存在に気づいてなかった…。
そんなに冷遇するほどひどい映画じゃないと思うんだけどなあ。
この監督の作品はどれも当たりばかり、かつ個性的なので大好きなのですが、
どうも撮るたびに予算規模がだんだん下がって行ってるような気がして心配です。
「元軍人の率いる強盗チーム。閉鎖直前の銀行に押し入ったは良いが、そこには目玉をくり抜く趣味を持つ『目玉キラー』と呼ばれる猟奇殺人鬼がたまたまやって来ており、貸金庫から目玉コレクションを引き出そうとしているところだった…」
などという奇怪なストーリー。さすがはマイク・メンデス監督。
クライムサスペンスでも過剰にひねりを入れてきました。
でもこのひねりが逆に良くないのかな…
本作は誰が主人公なのか分かりませんが、
元軍人のポールという男が率いる銀行強盗犯たちが人質をとって立てこもりつつ、
逃げ道を確保する時間を稼ぎながら偶然居合わせた目玉キラーや元特殊部隊の銀行員や警察やFBI、果ては麻薬カルテルなどとも戦うというなかなかカオスでハードな内容です。
ただ、たまたま目玉キラーが居合わせただけではなく、その銀行の従業員がたまたまポールの弟だった…なんていう偶然まで重なっておりさすがにそれは余計な要素なのでは…という気がしないでもない。
戦争体験を経て別々の道を歩むことになった…という兄弟間の確執に尺が割かれてたりするんですが、尺稼ぎ以上の意味があったのかどうか。
あとは文字通り本作の目玉といえる「目玉キラー」なる殺人鬼なのですが、
結構体格が良いにも関わらず通気口を利用して神出鬼没に現れ
強盗でも人質でも警官でもカルテルでも構わず目玉をくり抜いていくナイスなおじさんでした。演じているヘンリー・ロリンズという人が上手いのか素なのかよく分かりませんがかなり不気味なオーラを発しておりなかなか魅力的なキャラクター。
…とは言うものの、本作はどう考えてもこのおじさん抜きでも普通に強盗VS警察VS麻薬カルテルという三つ巴のクライムサスペンス映画として充分成立しており、
目玉キラーはそれを引っ掻き回してメチャクチャにしているだけのように思えて仕方がない。
コイツのせいで本作の珍作度が上がっているのは個人的にはありがたいのですが、
そうしない方が映画としては万人受けする程度にまとまり良く作れたのではないか。
「ドルフ・ラングレン ゾンビハンター」ではあれほど豪快なスプラッター描写で楽しませてくれたマイク・メンデス監督ですが、本作はあっちより金がなかったのか知りませんが猟奇殺人鬼を出しておきながらスプラッター要素はほとんどありません。目玉くり抜き死体も目玉そのものも何だかちゃちい。まあ、そんなにリアルな目玉を見たいかと言われたら、別にそれほど観たくもないのですが。問題はいまいち緊張感に欠けるという部分でして、それほどヤバイ殺人鬼を目の当たりにしてもどいつもこいつも銃を撃たない。いやせっかく銃を突きつけたんだからとっとと撃ちなさいよと何度突っ込みを入れたくなることか。
目玉キラーの「ナイフで動脈を執拗に狙って大量出血させ、余命宣告して遊ぶ」という戦闘スタイルは非常に良かったんですけどね。それも1回だけであとはフツーに滅多刺しにするだけでちょっと淡泊すぎた。
…とまあ色々と粗い部分が目立つのでケチつけたり突っ込みいれたりしたくはなりますが、銀行強盗モノにあえてシリアルキラーをぶちこむという意欲的な試みは大変興味深かったです。記憶に残らない凡作よりも、駄作化のリスクを恐れずにどこか尖ったモノを見せようとするフロンティアスピリットにはやはり好感が持てます。今後のマイク・メンデス監督作品は引き続き要チェックですね。