製作:2004年アメリカ
発売:ソニー・ピクチャーズエンターテインメント
アメリカ南部のとある沼地で、無残な死体が発見される。検視官と生物学者が調査に赴くが、そこに現れたのは巨大で獰猛な怪魚フランケンフィッシュであった。ハウスボート上で孤立してしまった検視官と地元民たちはフランケンフィッシュの脅威から逃れることが出来るのか。
大作アメコミ映画「スポーン」(97年)で抜擢されたはいいがコケてしまったという残念なイメージしかないマーク・ディッペ監督による川魚パニックホラー映画の秀作。その後特にマーク・ディッペの名を聞くこともなくなってしまいましたが、本作は川魚パニックホラー映画としては十分すぎるほど面白いです。
「フランケンフィッシュ」と言う言葉は一般的には遺伝子操作されたアトランティックサーモンのことを指します。通常成魚になるまで3年を要するところが実にたった1年半で済んでしまうという売り手にとっては非常に都合の良い商品です。もちろん開発者がフランケンフィッシュなどというカッコイイ…いや不気味なネーミングで売り出すはずもなく、健康被害を懸念している環境団体が名付けたとのこと。確かにあまり食べたくはないが、将来的に人口増加で食糧不足に陥った時のために研究しておくに越したことはない技術かなとは思います。
まあそんなことはさておき、もしや本作は巨大で獰猛なアトランティックサーモンが襲ってくる映画なのでは!?
などという期待を抱いてしまう人がいたかもしれませんが、残念ながらサーモン映画ではありませんでした。
しかし確かにアメリカ人の無節操ぶりを考えてみればサーモンが襲ってくる映画があってもおかしくはない。というかなぜないのか。
トマトや
ドーナツが襲ってくる映画を撮ってる暇があったらサーモンで一本撮ってほしい。「キラー・サーモン 殺人鮭」みたいなのをひとつお願いしたい。
まあそんなことはさておき、本作のフランケンフィッシュは遺伝子操作されたライギョです。
↑ライギョと言えば、獰猛すぎて飼うのが大変なのはもちろん、空気呼吸可能な魚であり、陸上でもある程度行動できる…ということで有名です。この業界ではいまいちマイナー気味なのは否定できませんが、モンスターパニック映画としてはそこそこ魅力的な題材。トイレに出現できる水棲生物もそれほど多くはありません。
しかし、サメやワニに勝る点が何かあるかと言われると、特には…ないかもしれない。
例によってオオメジロザメの仕事かと疑われるくだりもありますしね。ライギョじゃなくてオオメジロザメであったとしても何の問題もない。サメなら陸はもちろんその気になれば地中でも呼吸できますし、何なら宇宙空間でも生存可能な万能生物ですからね。
本作はアメリカ南部の沼地が舞台ということで、毎度のことながら南部の田舎で営まれている原始的な生活に驚かされます。沼に素潜りしてナマズを手掴みで捕っては素っ裸でビール飲んで暮らしてるっていう。
そんな野蛮人共と巨大生物の殺し合いというテーマはいつ見ても惹き付けられますが、本作は殺し合いというか食べ合いでもあります。
巨大ライギョは当然人間をパクパク捕食しまくりますし、復讐の怒りに燃える地元民も仕留めた巨大ライギョをバーベキューにして食べちゃいます。
人を食べた生き物を食べ返すってそりゃ半分カニバリズムみたいなもんでは?と毎回思いますね。さらにその地元民も別のライギョに食われてしまうわけで、間接的に共食いを繰り返すという、遺伝子操作よりよっぽどおぞましいマトリョーシカ状態。
そこら辺を突き詰めればこれまでにない新しいホラー映画になりそうな気がしますが、本作はあくまでライトな作り。「水に落ちたら喰われる」という至極真っ当な恐怖演出で間を持たせ、死ぬ順番で意外性を出し、アメリカ南部最強兵器プロペラボートで超巨大ライギョとのスペクタクルな最終決戦へとなだれ込む。80分ちょい、という非常に観やすい尺でサクッと誰でも楽しめる良作と思います。