製作:2016年アメリカ
販売:ビクターエンタテイメント
「罪のないドーナツを殺人鬼に!」
「だってドーナツのおやつになるんだぞ!」
(↑本編中のセリフ)
クソ映画というジャンルに興味がない人でも知っているほどのクソ映画界のレジェンドと言えば、
「死霊の盆踊り」
と
「アタック・オブ・ザ・キラートマト」
の二つを挙げることが出来るでしょう。
私はクソ映画マニアを自称しつつも実はこのどちらも観たことがなかったりしますが、まあ別に観る必要も大してないんじゃないかと思ってます。知名度の高いクソ映画を観ることほど無駄な時間の使い方もありません。どうせならあまり知られてないクソ映画を観る方が楽しいんです。
まあそれはともかく、「死霊の盆踊り」が特に類似作が作られることもなく孤高の存在を貫いているのに対して、「キラートマト」の方はそれなりにフォロワーを生んでいるというのはそれなりに有名な事実です。それなりに。たとえば本作のほかには「アタック・オブ・ザ・ジャイアントケーキ」なんてのもあり、これは私が鑑賞した唯一のギリシャ映画だったりします。邦題に反してケーキが出てこなかったことは未だに忘れられません。
「ジャイアントケーキ」のことはまたの機会にするとして、
本作はタイトル通りドーナツが牙を剥いて襲ってくる映画です。
何をどう考えてもクソ映画マニア向けとして作られているわけですが、
そんなターゲット層を狙って一体どれだけの収益を上げられるものなのか興味は尽きません。
しかし、クソ映画というのは意図せず出来上がってしまったものだからこそある種の妖しさと臭気を放つものであり、それがマニアにとっては何物にも替え難い魅力になってもいるのです。
なので、初めからクソ映画のつもりで作られた作品なんぞ「ヘタクソがヘタクソのふりをして作った」ゴミにしかならないものです。
なのですが、その点で言うと本作は意外とキラードーナツのクオリティが高く、好感が持てるタイプのクソ映画でした。
マッドサイエンティストがフライヤーに変なもんを投げ込んだせいでドーナツがモンスター化したとかそんなストーリーはどうでもよく、ドーナツ屋店員のラブコメを軸にしつつ何となくコントをつなげた感じの映画であるということさえ分かっていれば充分です。いや分かっていなくてもいい。
見どころはやはりこのキラードーナツたちがビヨンビヨンボヨンボヨンと跳ね回りながら人間共に喰らいいつく場面です。
わざわざ実物とCGを使い分けてまで襲撃シーンを作るという製作者の熱意に頭が下がります。
しかも上の画像を見ても分かる通り、キラードーナツのCGのレベルがかなり高い。ドーナツが出てこないシーンはなかなかのホームビデオ風味があり、場面ごとにクオリティの差が激しく全体としてはかなりアンバランスな出来栄え。だがそれが良い。
↑ドーナツ屋の店員たちや元凶たるマッドサイエンティストがキラードーナツとの戦いに赴くシーン。
撮影風景を想像するといたたまれない気持ちになる。
知らない役者さんばかりかと思いきや、キラードーナツに殺されるメンバーの中に
「シャーク・プリズン 鮫地獄女囚大脱獄」で「しょうゆ」とか「春巻」呼ばわりされていたアジア人女優のクリスティーン・ヌエンがさりげなく混じっていました。だからというわけではないですが、「シャーク・プリズン」と本作の雰囲気やノリは似通ったものがある気がします。
…けどこれ、「
アイス・ジョーズ」と同じ監督の人なんですね。
「アイス・ジョーズ」のクソっぷりからするとだいぶ成長したんだなあと言うことが分かってそれもまた微笑ましい。
キラードーナツがパトカーを奪って運転するシーン。
当然、下でアクセルを踏む係のドーナツもいますよ。
感想を一言で申しますと
「優しい気持ちになれるクソ映画」
という感じですね。
厳しい現実に嫌気がさしている方などにはある種のヒーリング効果も期待できなくはないと思われますのでたまにはこういうクソ映画をご覧になるという選択肢も検討してみるというのはいかがでしょうか。