製作:2013年中国・イギリス
発売:トランスフォーマー
未確認動物学者のトラヴィス(スコット・アドキンス)は、中国の奥地へと謎の巨大ヤモリの調査に訪れた。現地の建設会社では、従業員が犠牲になる事件も発生。嬉々として生け捕りの策を講じるトラヴィスだったが、そこにライバルのハンターであるドルフ・ラングレンが邪魔をしに現れてしまう。
ヘリをも撃墜する恐竜のような巨大生物に対し、スコット・アドキンス&ドルフ・ラングレンの最強タッグが挑むかのような雰囲気のジャケ絵。モンスターパニックでこれほどネームバリューのあるアクションスターを二人も使うというのは珍しいことです。実に面白そうな構図ですが、実際は巨大ヤモリを生け捕るか殺すかでスコット・アドキンスとドルフ・ラングレンが弁護士を通して争ったりイヤミを言い合ったりしてモメるっていう。結構しみったれたB級ヤモリ映画でした。
とはいうものの、冒頭の「超巨大ヒグマvsアドキンスvsラングレン」の三つ巴バトルはなかなかの迫力。ヤモリじゃなくてこのヒグマをメインにすべきだったのでは…。
まあ巨大ヤモリにしろ巨大ヒグマにしろ、とにかく未確認生物を生け捕りにしたいUMAマニアなアドキンスと、何でもいいから強敵をブチ殺したい戦闘狂のラングレンの争いというこの映画における基本図式をスピーディに見せてくれる良いプロローグです。
この手のモンスター映画では、「危険を顧みず生け捕りを主張する生物学者」の方が悪者扱いされるのが普通で、ヒーローは人命最優先でモンスターの殺処分を強行するものです。しかし、本作においては全くの逆。相手が何であれ殺しは良くないというのが絶対正義のようです。
↑「この世は弱肉強食だ。オレは巨大ヤモリを殺すぜ」と一見真っ当な主張をするドルフ・ラングレンに怒りの鉄拳を打ち込むスコット・アドキンス。せっかく肉体派の2人を起用しておきながら、格闘と呼べるようなシーンはこのパンチ1発ぐらいしかない。なんともったいない。それでもドルフ・ラングレンの放つ胡散臭すぎるオーラには毎度ながら感心しますが、失礼ながらマーシャル・アーツを使わないスコット・アドキンスに何の価値があるというのか。カッコつけてるシーンもいまいち決まってないように見えて仕方がない。
とはいえ、その辺の無名の人よりは安心感があるのも確かです。
モンスターパニックはあくまでモンスターが主役ですから、そちらの方がしっかりしていれば何も問題はありません。
ですが、その肝心のモンスターが…単なる巨大ヤモリというのはやっぱり物足りない。せめてステルス機能を持ってるとか火を噴くとか毒液を飛ばすとか何とかしてほしい。
造形はそこまでひどいわけでもないけど、そもそもなぜヤモリなのか。純粋にかっこ悪いし怖くもない。半端。ワニでも良かったのでは…
原題は「LEGENDARY」と出ていたが一体何の伝説なのか。中国のどこの湖なのかも分からなければヤモリの由来も何も分からない。CGも何だか「コモド」シリーズみたいな腰砕け感が拭えません。
となると、あとは人喰いシーンに期待するしかないのですが、これまたどえらくヌルい描写しかないという有様。一か所だけ「ディープ・ブルー」における海洋生物学者捕食シーンによく似た場面がありましたが、それ以外は特にこれといった見どころはナシ。だいたいメインキャラクターは誰一人として喰われもしないし死にません。これにはさすがに落胆を禁じ得ない。人を喰わない巨大ヤモリに何の価値があるのか。結局ヘリも出てこないし。ヌルいにもほどがありますわ。製作に中国が絡むと残酷描写が消えてなくなる傾向がありますね。中国共産党の陰謀でしょうか?
ということで、微妙に無難にまとまってる刺激のない巨大ヤモリ映画に過ぎませんが、特別劣悪な部分もないのでヒマつぶし程度には楽しめるでしょう。スコット・アドキンスとドルフ・ラングレンのファンであれば彼らの舌戦が思う存分堪能できるので、その手の通な人にはオススメ出来ないこともないです。