製作:2011年グルジア
発売:アース・スター エンターテインメント
湖畔の別荘へと遊びに来た若者4人組。
サウナに入っていたら一人のバカのせいで3人が閉じ込められてしまった。
彼らは華氏247°Fの灼熱地獄から生還できるのか?
内容を3行で全部説明出来てしまうぐらいシンプルで空虚なワンシチュエーションスリラーです。1つ前に観た極寒地獄映画の「
フローズン」と対を成すかのような設定に惹かれてつい鑑賞してしまいました。
ただ「フローズン」はスキー場のリフトに取り残される恐怖…といいつつも実際に手を下していたのはオオカミだった。という、半分アニマルパニック映画の様相を呈しておりました。そこはちょっと反則気味ですね。
しかし本作にはそんなサブ要素は無く、純粋に「サウナに閉じ込められる恐怖」だけで90分もの長丁場を乗り切ろうとしているチャレンジングな作品です。まあ、無理なんですけどね。
まず湖畔の別荘にやってくる若者4人組ですが、
理知的なのはイアンという青年1人だけで、あとの3人は驚くほどのクズ&ビッチです。
と言っても最初の30分は仲良く遊んでいる様子が微笑ましく映し出され、普通に気のいい奴らのように思えます。そしてサウナと湖を3回も往復するという楽しいのかどうかよく分からない羽目の外し方を見せてくれます。
ところが、酒とハッパでグダグダになった一人が、サウナの扉につっかえ棒をしたままどっか行ってしまい、閉じ込められた3人がそれに気付いた瞬間から彼らの精神は脆くも崩壊します。ちょっと早すぎるんじゃないか?
↑サウナに閉じ込められたらどうする?
ドアの小窓を割れば何とかなるさ…!
それはいいが、それしかやることがない。
90分映画にするには起こせるアクションやイベントがあまりにも無さ過ぎました。
いっそのことサウナの中にムカデの群れか何かが侵入してきたとかあっても良かったと思う。
イアンはまず冷静に状況を分析し、体力を温存しつつ脱出方法を探るというごく当たり前の対応をとろうとするのに、一緒に閉じ込められた女2人がいきなりヒステリーを起こしまくってピーピー騒ぎ出します。「いいから早く出して!」「私は出たいのよ!」 どうして女ってのはいつもこうなんだ? と早くもウンザリしかけますが、フィクションと現実を混同してはいけませんね。と、思ったら本作は驚愕の
「実話ベース」ですが、現実にこんなクソヒス女がそう大勢いるとは思えません。実在の人物をこんな風に描いたら本人たちからのクレームは必至。細かい部分は実質フィクションと捉えても構わないでしょう。
とはいえ、現実がどうであろうと本作中ではこのクソビッチ共のヒステリーを延々眺めなければならないわけで、正直かなり辛い。クソビッチ共の理不尽な精神攻撃に耐えなければならないイアンがかわいそうでならない。というか耐えられませんでした。彼は終盤で発狂して高笑いしながらヒーターにベアハッグを決めて自殺してしまうのですが、灼熱地獄に耐えかねておかしくなったというよりは完全にクソビッチ共のせいでイカれたとしか考えられません。不憫にも程がある。しかもそこが本作で唯一にして最大の盛り上がりポイントというね。なんてひどい映画なんだ。
肝心の「サウナ地獄」というメイン部分に関しては大して暑そうに見えないし、荒い呼吸もわざとらしく見えてしまいリアリティも感じられない。
まあ一言でいえば
「アンビリーバボーの再現ドラマ30分で充分な内容を女のヒステリーで90分に水増しした」
という感じでした。
人間ドラマも別にケンカや友情が解決に寄与したとかいうことも全く無く、あんな騒がないで黙って座ってれば全員助かったんじゃないの? としか思えない空虚なオチ。
…つーか、ラスト付近で
「いかにしてマイケルはサウナにつっかえ棒をしてしまったのか?」
なんてことをまるでミステリのトリック解説のようにダラダラ映さなくてもいいでしょうよ。
そんなもん別に知りたくもないし見なくても分かるわい。
カメラワークとか照明とかはまともだし全体的に非常にマジメな雰囲気なのでクソ映画ではありませんが、多分
その辺の
クソ映画の方がよっぽど面白いのではないかなと思いますし、クソ映画が嫌なら「フローズン」の方が断然オススメですね。