製作:2010年アメリカ
発売:アットエンタテイメント
湖で遊んでいた若者グループ。しかし、悪ふざけが過ぎてそのうちの1人を溺死させてしまう。
残りのメンバーは保身優先で死体を隠ぺいし、10年の時が過ぎた。
そして唯一故郷を離れていたキャサリンが久しぶりにポイントプレザントの街へ帰ってきたことをきっかけに、「町の罪人を裁く」という伝説の怪物・モスマンが姿を現し始めるのだった。
アメリカではけっこう有名なUMAであるらしいモスマン。
私はよく知りませんでしたが、ウェストバージニア州には「ポイントプレザント」という街も実在し、蛾人間の記念碑とか銅像も立ってて観光ポイントになってるみたいです。作中では「モスマンフェスティバル」なんてイベントまで開催されてます。本当にやってたら見てみたいですね。
いかにも「危険だから中止しろ!」という忠告に耳を貸さない町長が「街の大事な収入源なんだ!」とか言って祭りを強行しそうな話ですが、別にそういう展開はありません。ありませんが、モスマン本人がモスマンフェスティバルに出現し暴れまくるというクライマックスはなかなかのヤケクソぶりで大変見ごたえがありました。
本作のモスマンは、ビッグフットとかモンゴリアンデスワームみたいな純粋なクリーチャーではなく、超常現象・心霊的な要素の強いモンスターとなっております。喰らうために人を襲うのではなく、「ポイントプレザントで殺人を犯し隠蔽すると、代理で復讐に現れる」という存在。
隠蔽さえしなければ大丈夫なのかは分かりませんが、けっこう限定的な条件です。
むしろ正義の味方っぽい。私の街にもそういう存在がいても構わない…というか、いてほしいぐらいですね。モスマンより殺人犯の方が嫌ですよね。
とはいえそんな凶悪犯もそうそう現れない田舎町なので、1966年以来は誰も目撃しておらず、とうに畏怖される存在でもなくなり、むしろモスマンフェスティバルなどという祭りで名物と化してしまっています。
主人公はキャサリンとデレクを中心とする地元の若者グループですが、
そんなモスマンに狙われてしまうような奴らということで、冒頭で殺人からの隠ぺいに走ってしまっています。「溺死じゃなくて川底で勝手に頭を打ったことにしよう!」とか言って全員で死体の頭を殴るシーンはアホすぎるうえに人間として最低すぎる。
要するに本作の主役はクズ野郎共ということですね。
「殺人の罪深さは思い知った!もう充分苦しんだわ!」って自分で主張されてもねえ…
それはそうと、何で「蛾+人間」なんだろうか?
蛾なんて飛翔能力はあっても、大した殺傷能力もないだろうし毒入り鱗粉を撒くのが得意だったりするんだろうか?
などと未知なるUMAに期待を膨らませて鑑賞していたのですが、
別に蛾ならではの特技があったりするわけではなく、普通に鋭いツメで獲物を切り裂いたり目をえぐったりする怪物でした。(と言ってもスプラッター表現は控え目)
↑ただし、無制限に現れて襲ってくるのではなく
鏡やテレビなどのような反射するものの中からじゃないと出現できないという縛りがありました。そういうところからズルリと這い出る場面はなんだか貞子っぽいです。
そんなモスマンとは一体何なのか?ということに関してははこの手の映画で定番の「街外れに住む小汚い訳知り老人から話を聞く」というくだりにおいて詳細な解説をしてもらえます。モスマンの目的とか出自とかの理由付けが色々とよく考えられていて結構感心しましたが、多分本作オリジナルというより都市伝説をなぞっているんでしょうね。クライマックスのモスマンフェスティバルではその辺の設定が盛大にぶん投げられていて笑ってしまいましたが。まあクライマックスは見た目優先してくれて全然OKです。整合性より勢いが大事ですから。
若者グループ(10年後は若者でもないが)の人数が多めということもあり、モスマンが人を襲う見せ場にも不自由せず、モスマンの謎を探るストーリー自体も興味深い。CGが若干ヘボく見える瞬間もそれなりに目立つような気がしないでもありませんが、B級モンスター映画としてはかなり満足度の高い一品でした。