製作:2010年アメリカ
発売:ブロードメディア・スタジオ
スキー場に遊びに来た大学生の男女3人組。
微妙に3人の仲が険悪だったり、リフト代をケチったり、係員に無理な頼みを押し通した結果、不幸な偶然も重なって停止したリフトに取り残される羽目に陥る。
地上15mの高さ、下には野生のオオカミ、氷点下20℃という過酷な夜から彼らは生きて帰れるのか?
暑い。今年の夏はあまりにも暑い。
こうも暑いと正直映画を観る気力も失せてきます。
明日には返却しなければならない新作映画DVDもいくつかあるのですが、もうそれは諦めることにしました。
今日はもう何でもいいから涼し気な映画を観ないとやってられません。
というわけで、今日は私の部屋にあった積みDVDの山からこれを発掘しました。
極寒のスキー場で中空に取り残される恐怖を描いたワンシチュエーション・パニック・スリラーです。
何で私が本作のDVDを購入後何年も放置していたかと言えば、
「スキー場のリフトに取り残されるだけ」
の内容で90分も持たせるのはつらすぎるだろ…という先入観があったからです。
しかしその点で言うと、製作者もその不安を早めに払拭させようと思ったのか
わりとスピーディにイベントを発生させてくれるので
退屈や間延びといった感覚とは無縁の映画でした。…最初の1時間は。
ラスト30分はさすがにもうネタがない感じでしたね。
本作の主役3人組ですが、
まずはけっこうイヤな奴らとして描写してきます。
リフトの係員を買収して安く済ませようとするのですが、
その役目を女の子にやらせたあげく「もっと安く買収できただろ」とネチネチ責めるシーンなどは特にアレです。
そもそも「ダン」「ダンの親友ジョー」「ダンの彼女パーカー」
という組み合わせで遊びに来ているのがよろしくなく、男のくせに嫉妬心丸出しのジョーと浅薄な彼女パーカーのいがみ合いから人間関係にキレツが入っていく様子を実にネットリと見せてくれます。普通、男2人と女1人だったら女の取り合いになりそうなもんだけど、これは男の取り合いという珍しいパターン。
観ている側としては
「よし、こいつらは酷い目にあってもいいな」モードに入れるので、それはそれでアリですけどね。
↑リフトに取り残されたと分かった時、不安を紛らわすためにあえて雑談に耽る3人。
こういう時「どういう死に方が最悪か?」「サメが一番いやだ」
という話題になるワンシチュエーションスリラーが結構存在する気がします。
この手の映画を作る時はやはり「オープン・ウォーター」を意識しているということなのか。
とはいえ、本作ではそんな元ネタより「ジョーズ」談義で盛り上がります。
この学生3人組は嫌な奴らだし酷い目にあってもいいや、とは言ったものの、
「いや、そこまでやらんでもいいよ」
と思えるぐらいの地獄を見ることになりました。
助けが来そうもないから飛び降りるしかない、ええいもう行っちまえ!
…といさぎよくリフトから飛んだのはいいが、高さ15mもあったもんだから両足とも開放骨折。飛び出た骨が実に痛々しい。つーかなぜその結果を少しも予測できなかったのか。5点接地転回法でもやろうとしたのか?
そして、身動きがとれないところに襲ってくるオオカミの群れ。
スキー場に野生のオオカミの群れが現れるとは、
さすが向こうはレジャー施設とはいえ厳しい大自然のただ中にあるのだな…たまに襲われるスキー客もいるんだろうな…
などとある意味感心はしますが開放骨折のうえに生きながら喰われるとはさすがにかわいそう。
しかし、そんな地獄の中でも恋人への気遣いを忘れない。
極限状況で人間の本性が現れるのがこの手の映画の醍醐味ですが、
本作では表面上嫌な奴らがいざという時聖人化するという普通とは逆パターンの見せ方をしてきました。一見クソ野郎でも根は良い人間だった。そんな彼らが肉塊を経てオオカミの糞と化してしまうと思うと悲しくて夜も眠れません。まあどっちみち暑くて眠れませんが。
ただいくら彼らが善良な学生だったとしても、
ピーピー騒ぎまくるアホ女のパーカーだけはちょっと擁護できません。
リフトに乗りながらタバコ吸いまくるし、
取り残されてからも吸おうとして手袋を落とすし、
素手で金属製のバーを掴んだまま眠ってしまってえらいことになるし、
凍傷にさわるなとあれだけ注意されてるのに擦るし、
なんかもう色々最悪でした。
とはいえ、その点と終盤のネタ切れ感にさえ目をつぶれば、
本作はなかなかの良作と言えます。
そこそこ涼しげな気分にもなれたので、真夏の暇つぶしとしては悪くないでしょう。