製作:2017年アメリカ・オランダ
発売:カルチュア・パブリッシャーズ
近未来、人類は化石燃料の枯渇に苦しんでいた。そこでエネルギー開発会社アルタプレックスは別次元に地球の複製を作り出し、そこからエネルギーを吸い上げることで解決しようとする。
しかし、二つの世界を繋ぐタワーが原因不明の暴走を始め、世界は崩壊の危機に陥る。
人類はついに地球をコピーした!!っていう設定がちょっと面白そうなSF映画。どうやってそんな大それたことをしたのか。その説明を楽しみに観ましたが、「M理論に物質複製理論を組み込みました」というようなフンワリとした解説で終了。それも、粒子レベルで全てを転写したエコー世界だけど有機物は存在しないので良心を痛めることなく質量を電磁エネルギーに変換して吸い上げられるとか何とか。
そして現実の地球とエコー世界とを繋ぐ装置がジャケットに描かれている巨大なタワー。
SF的にはちょっと雑すぎるというか、もっとハッタリを効かせた設定を見せてほしかったところです。
本作の主役は何も知らずにアルタプレックス社に雇われてエコー世界に侵入する元NASAのパイロット・ウィル。
この「何も知らない」というのが引っかかります。彼なら妹たちを助けるために何を犠牲にしても世界の崩壊を止めるはず!という期待で雇われたのか。一人称視点を多用していることからもエコー世界におけるウィルと観客との一体感を狙っているんだろうとは思いますが、これじゃほとんどFPSゲームのプレイ動画でしかありません。
↑現実世界では客観視点、エコー世界では主観視点という視点切替制がウリらしい。このブログではたびたび書いてますが、主観視点はすぐ酔うので辛いんです。本作はまだわざとらしく画面を揺らしてないのでマシな方ですが、それでも何度か休憩取らないと無理でした。アメリカではこの手のFPSゲームが主流ですから、ゲーマーにはウケがいいんでしょうか。ダメージ表現などは特にゲームのステータス表示を想起させます。ストーリーが見えにくいのも周回して謎を解いていくようなノリ。
今までもこういう手法を取り入れた映画はありましたが、ここまで徹底したのは初めて観ました。しかし、ゲームっぽくしたからといって映画的には別に面白くなるわけじゃないのが辛いところ。主役のダン・スティーブンスという人はかなりのイケメン俳優ですが、この手法のせいでその端正なお顔がほとんど映らないってのは問題あるんじゃないでしょうか。コリン・ネメックあたりにやらせておけば良かったのに。
ただ、ドローンとの戦闘は映像的になかなかクオリティが高い。ちょっとドローンが弱すぎるんじゃないかとか弾が露骨に外れすぎというのはありますが、CGは良いです。
全てを複製したのに生物だけはいないだなんてちょっと都合が良すぎないか?
と思っていたら、エコー世界にも人間が存在することが発覚します。普通に何もかもコピーされているようです。まあ、ジャケットに「現実世界VS複製世界」と書いてある時点でネタバレしてますが。誰でも予想がつきそうですけどね。とはいっても直接戦闘するわけではなく、このままでは両方とも滅びてしまうという状況の中で、複製世界だけを滅ぼすことが出来る装置を持っているウィルが追い掛け回されるという話です。起動させたらウィルも崩壊に巻き込まれて死ぬしかないし、よく考えると相当酷いストーリーですね。相方がいたけど何で協力してくれてたのかよくわかりませんでした。
それにしても、カルチュア・パブリッシャーズさんは本作といい「
クロノス・コントロール」といい「
ファイナルフェーズ」といい、すごく似たような雰囲気の眠たい低予算SF映画を次から次へと輸入してくれますね。どれも映像的には充分満足できるクオリティはあるんですけどね。
私としては本作は「クロノス~」よりははるかに面白いが、「ファイナルフェーズ」と比較するとどっこいどっこいかなという感想です。気になっている人は参考にしてみてください。