製作:2016年アメリカ
発売:コンマビジョン
ワイオミングのとある田舎町、病院から死体を譲り受け腐敗を早める薬物を注射している施設があった。ワイオミング死体農場という名でカモフラージュし思うがままに違法な研究に勤しんでいたマッドサイエンティストだったが、ある時なぜか死体がゾンビ化し復活してしまう。
一方その時、近くの森に棲んでいたビッグフットが死体農場の女性スタッフに一目惚れしていた。
ポロニア・ブラザーズ・エンターテインメント(以下PBE)製作、マーク・ポロニア監督作品。
お客や上司から重箱の隅をつつくようなダメ出しをされ嫌気が刺してストレスを溜めている社会人の方は大勢いると思いますが、このような映像作品がわざわざ海を渡って字幕までつけて売られているという事実を知れば少しは癒しになるのではないでしょうか。こんなおおらかな業界もある。こんなんでもいいんだ。適当に生きてもいいんだと。
PBEの作品を観るのもこれで4つ目なんですが、今までで最もZ級の香りが強いなと感じた逸品です。
というのも、本作には
PBE作品恒例のハリボテやストップモーションアニメが存在しないのです。ゾンビはハロウィングッズ的なマスクをかぶっているだけだし、ビッグフットはハロウィングッズ的な着ぐるみで済まされているため、ハリボテもストップモーションアニメも作る必要が無かったとみえます。どこにも手間暇がかかっていない。そこが寂しい。どんなに適当でもいい加減でも構わないから、ハリボテかストップモーションアニメで暴れるモンスターが見たかった。マスクと着ぐるみだけとなると、申し訳ないのですがポロニア作品など冗談抜きで幼稚園のお遊戯会以外の何物でもないと言わざるを得ません。
しかし、それはそれで幼児か小動物が戯れているかの如き微笑ましさを漂わせていることもまた否定できない事実です。最も印象に残る珍場面としては、ゾンビが農場の警備員を襲って内臓を引きずり出して喰らうシーンが挙げられます。
なんとここは
「ゾンビが警備員の服の隙間から赤く濡れた布きれをズルズル引っ張り出して口につける振りをする」という極めてユニークな表現方法が採用されています。まさかそんな方法があったとは。凡人には到底思いつけない発想と言わざるを得ない。
いかな低予算映画であろうとも、ここまで
「そういうことにしといてくれや」と言わんばかりに観客のイメージ力を頼ってくる映像作品など初めてです。
↑主要キャストはいつも同じような顔ぶれだけにおそらくポロニアファミリーの方々だとは思うんですが、本作は意外にもゾンビの人数が多めです。角度がなかなかいいですね。出演料など無いだろうによくこれだけゾンビ役を集められたものです。あの有名なウーヴェ・ボル監督を例に出すまでもなく、Z級映画監督という民族は人柄が良く人望があるというのが定説ですのでおそらくポロニア監督もそういう方なのでしょう。
ただ問題は何ゆえゾンビとビッグフットを戦わせてみようなどという発想に至ってしまったのか? ということでして、まあ確かにビッグフットが人間の女性に恋することでゾンビと戦うストーリーに一定の説得力を持たせているといいますか今更「キングコング」のオマージュ的な味を出そうとしていることは一応うかがえます。しかしそれでもモンスター同士の戦いといえば「
モンスター・トーナメント」という偉大なる先達が存在しますし、あちらで行われた「ゾンビマンVSフランケンシュタイン」の激闘には及ぶべくもない。
本作のゾンビVSビッグフットは激闘どころかお互いにナデナデし合おうとしているようにしか見えません。何という和やかさ。しかもそのたびにまるで
デビルシャークのようなピヤピヤした変なBGMが流れてきます。まあそれはそれで(略)
↑惚れた女性とその仲間を守るためゾンビと戦うだけではなくわざわざ飲み物を調達してくる優しいビッグフット。どこら辺がビッグなのかもわからんしなぜビッグフットということにしたかったのかもわからん。別に「ゾンビVS巨大ガニ」でも良かったのではないか。
巨大ガニで思い出したけどもしかするとPBEはモンスターと人間の絆みたいなものを描きたいのかもしれません。