【ストーリー】超!巨!大!蟹!大!襲!撃!
眠るように静かな街の湖に、突如、隕石が落下!幸い被害は最小で済み、町民は胸をなで下ろしていた。だが、この異変で化石化していた巨大生物が蘇生。眠りから目覚めた古代蟹が街を襲い始める。銃弾を跳ね返す甲羅!巨大で鋭利なハサミに挟まれ、次々に犠牲になる人々。なすすべの無い彼らを救う為、軍は戦闘機による攻撃を開始。ミサイルを乱射する!だが、頑丈な装甲に全く歯が立たない。打つ手を失った人類。やがてモンスターは、勝ち誇るように、産卵を開始した…。
(竹書房HPより)
なぜこれほどまでにデタラメなあらすじが公式HPやアマゾンに載ってしまうのか?
わざわざあらすじを創作するぐらいなら冒頭だけでもいいから観てから書いた方が楽だろうに…。
疑問は尽きませんがまさか2015年にもなってストップモーションアニメで描いたカニ・パニック映画が存在したとは知りませんでした。
カニ・パニック映画といえば、「
地獄のシオマネキ 巨大蟹のしたたり」(1980年)という偉大な先達が存在するわけですが、35年の時を経て製作されたカニ・パニック映画はそれにふさわしい進化を遂げていたのでしょうか。
ストーリーの方ですが、まず隕石など落ちてきません。
何が「幸い被害は最小で済み」だよ?
よって巨大な古代蟹が目覚める、などという展開も存在せず。
巨大蟹の由来などなんでもいいじゃないか、と普段なら言うところですが本作に限ってはそうはいきません。
例によって人口爆発による食糧問題にそなえて「成長促進剤」を開発する研究者、…の娘が主役かつ元凶となります。
池で拾ったカニに促進剤を食わせたら巨大化してさあ大変、というわけですね。ありがちです。というか「地獄のシオマネキ」と全く一緒です。
ブドウみたいな成長促進剤を食べるカニ。CGじゃないので独特の味があります。
やたらつぶらなお目目が愛嬌たっぷりで若干チープな動きも実に可愛らしい。
飼い主メリッサに懐いてすり寄るカニ。なんかピーピー鳴いてるし。なんというあざとさ。
可愛すぎるだろ…。
私こういう小動物にすごく弱いんですよね。たとえカニでも。
くだらねーC級映画だというのにすでに飼い主の少女とカニに全力で感情移入してしまっています。
この後モンスター化すると思うと心が痛む。殺されたら泣く。
普通のモンスターパニック映画では、巨大化した生物は記憶を無くしてただの殺人マシーンと化し、大抵の飼い主も「あいつはもう以前の○○じゃないんだ…」などと苦悩しながら戦って殺したりするのですが、本作の飼い主メリッサは最初から最後まで一貫してこのカニの味方をしてくれます。人によっては自分勝手な奴に見えるでしょうが、個人的には変に人間としてのモラルを気にして「仕方ないのよ…」とか言い出さないところは好感が持てます。クソ町民よりカニの方が大事に決まっています。
中盤は酒場を中心としたどうでもよすぎる人間ドラマが展開しますが、
ここは単なる時間稼ぎなので寝ててもOKです。
本作はカニだけ観てればいいのです。
数年後、車よりでかいサイズに成長。
でかくなってもカワイイままですね。
クソ野郎に踏みつぶされた我が子を見て悲しみと怒りが爆発。
本作の登場人物は大体クソ野郎しか出てこないのでますますカニに感情移入してしまいます。
復讐&正当防衛でカニが人間を3人ぐらい殺しますが、残酷描写はそれなりに力が入っているような気がしないこともありません。
そしてたった3人やっただけなのに、戦車と戦闘機での攻撃が始まります。
C級映画らしからぬ大スペクタクルなシーン。
さすがに巨大カニとはいえF/A-18の爆撃に耐えられるとは思えません。
なんとかカニに助かってほしいと思いながら鑑賞している身としては
かなり絶望感あふれるクライマックスです。
住民たちによるヒャッハー銃撃と戦車の砲撃と戦闘機の爆撃にさらされるシーンは割りとマジで心が痛みます。そこまでしなくてもいいだろ!
やはりモンスターパニック映画である以上、モンスターはどうしても狩られる運命にあるのでしょうか。人間の方が恐ろしい存在だな、とこの手の映画で初めて思ったかもしれません。
ところが大方の予想を裏切り、ツッコミどころ満載の替え玉作戦によって死を偽装し、
無事にカニは生き延びました。
おまけに「二人は末永く幸せに暮らしました」というテロップ付きで。
なんと安直な…しかし素晴らしい。カニが幸せでなによりです。
見栄を張って余計なひねりを入れてこなかったのが気に入りました。
これでいいんですよ。100点満点のエンディングです。
別に大して出来は良くないC級映画のはずだったんですが…
カニが無駄に可愛らしいのと幸せいっぱいのエンディングのおかげでなんかすごく良い気分になれる感動的名作でした。
不覚にも泣きそうになりましたからね。
安すぎる感性に我ながら驚きです。
私と同じような安い感性をお持ちの方には激しくオススメします。
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