たまたまですが2日連続で「金縛り」をテーマにしたホラー映画を鑑賞してしまいました。
最近アメリカで流行りの題材なのかな?
眠りに落ちたら、鬼婆がやって来る
米国を騒然とさせた、睡眠中に死亡する「悪夢死」。眠りながら怯えるその症状は「鬼婆症候群」と呼ばれ、睡眠中に何者かに乗られ首を絞められるという。妹を亡くした日から、ケイトも悪夢にうなされるようになるが―。
(アルバトロスHPより)
私も金縛りにあうとたまに老婆の首が飛んで来たりしますが、「鬼婆症候群」なんて名前があったんですね。胸や首を圧迫されているような感覚に陥ったこともありますが、睡眠中に死亡する事例もあったとすると意外と危ない症状だったのかな。
しかし「
スリープレス」や本作を観てしまうと、金縛りをテーマに映画を作るのはかなり無理があるのではないかと言わざるを得ません。
本作に出てくる鬼婆は、Jホラーに影響を受けているのか「リング」の貞子や「呪怨」の伽耶子にかなり似た雰囲気を持っています。やることは首を絞めるだけですが。
そもそも「身近な人が謎の死を遂げ、自身にも死の兆候があり、その謎を探る」というストーリーの基本構造自体が「リング」系とほとんど同じです。
言ってしまえば劣化コピーそのもの。
なぜリングの貞子が面白怖かったかといえば、姿かたちもそうですがビデオを観てしまったら逃れられないとか、1週間後にやってくるといったルールを効果的に使っていたからです。
伽耶子は少しでも関わったら問答無用で殺害されるという通り魔にも似た理不尽さなのでだいぶシンプルですが。
いずれにせよ彼女らに遭遇したら100%死ぬという絶望が恐怖の礎となっているわけです。
それに比べてこの鬼婆と来たら、ただ眠るだけで、いつでもどこでも誰にでもやって来る可能性があります。
遭遇しても別に死ぬとは限らない。というか、死ぬ方がレアケース。
私のところにも来たことあるくらいですしね。
別に遭遇してもどうってことないんすよ。正直ウザいだけです。
本作でも主人公ケイトや周囲の人が鬼婆に何度か遭遇しますがなかなか死にません。
そもそも鬼婆を幻覚じゃないとする理屈が弱く、
「世界中で昔から知られている」
「健康体なのに睡眠中に死ぬ」
「心が弱るとやって来る」
「信じなければ現れない。だが本人にとっては現実なんだ、どうやって否定する?」
などとこじつけてスーパーナチュラルな脅威として実在のものと扱おうとしますが、
いかんせん説得力が弱すぎて「結局それ幻覚なんじゃないの」というツッコミをかわし切ることが出来ていません。
何か幻覚以上の物理攻撃してくるとか、出現要因を「信じてしまう」とかじゃなくて呪いのビデオみたいに具体性のある行動にしてくれるだけでも少しはマシになるんですが。謎解き要素がなんもなくてつまんないです。
鬼婆を「非科学的なもの」として一蹴するサイクス医師は分からず屋のように描かれていますが、どう考えてもサイクス医師の方が正しく見えるし、「信じなければ大丈夫」という話なのでサイクス医師の言うことを素直に聞いていれば全員救われたわけです。私も信じてませんし幻覚だと分かってるから実際に見ても全く怖くないのです。
にも関わらずサイクス医師をバカ扱いし「鬼婆は本当に襲ってくるの!」と吹聴しまくって結果的に数人を死に追いやった主人公ケイトの方が問題アリなので感情移入もしにくい。厄災を広める役を主人公にやらせるのはやめた方が良いと思いますね。
ホラー映画的には別に何も見どころのない駄作と言わざるを得ません。
ただまあ、ケイトが頼りにするポンコツ医師のハッサンというキャラクターは少し面白かったです。オカルトも信じて治療に取り入れ、前述のサイクス医師と対立している人物なのですが、スリリングな見せ場を作りにくい本作において無理やり絶体絶命シーンを作り出すため強引にミスを連発。
そのあげくケイトを助けるため睡眠世界に没入し共闘しようとして麻酔の量を間違え、勝手に自殺するというあまりにもポンコツすぎるクライマックスを演出し笑いを誘ってくれました。
…いや、ケイトのために鬼婆を自ら引き寄せて殺されたのか?でもやられるシーンなかったからなあ…。
ま、何にせよ特に誰にもオススメできない程度の映画だったとしか言えませんが…。