「オープン・ウォーター」のワニ版で、
監督は「
赤い珊瑚礁」のアンドリュー・トラウキ。
オーストラリアの川釣りツアーにやってきた男女3人がワニに襲われる。
というだけの話。
もう本当に余計なものは何もなく、
8割方はマングローブの樹の上で怯えている3人が映っているだけの
超低予算なワニ・パニック映画です。
トラウキ君こういうの大好きなんだろうなあ…
「
ランペイジ」を観ていたらもっと普通のワニ映画を観たくなったので
なるべくトンデモ要素の少なそうなマジメなやつから行こうと思ったのですが、
「シリアスなリアル系ワニ映画」というものがあまりに希少すぎて
なかなか見つからない。
まあしかし、リアル系ワニ映画はこれ1作で充分かな?
と思える程度にはよくできてましたね。
何といっても「実物のワニを使用している」ところがポイント高い。
垂直にかなり高くジャンプして襲ってくるシーンなど、
意図してやらせたことなのか怪しいですが
偶然だとしたら撮影スタッフ大歓喜だったことでしょう。
ワニと絡む俳優さんの恐怖演技も本気で怖がっているように見えて一石二鳥。
しかしながら本作のシチュエーションは「オープン・ウォーター」で海を漂った夫婦が味わった恐怖と絶望には全くほど遠い。
というのも、マングローブの樹の上に居ればとりあえず100%安全だからです。
ワニに喰われて死ぬよりは干からびて死ぬ方がマシ。
でも沼に入ったからって絶対ワニが襲ってくるとは限らないし…
でも水が濁っていてワニが近くにいるのかどうか全く分からんし…
という感じで木の上でひたすら葛藤するだけの映画とも言えます。
ロープ引っ張ればボートを引き寄せられる!でも重くて無理だ!
…という展開なんですが、そのロープを太目の枝に引っ掛けて体重をかけて
手繰り寄せれば何とかなったような気がしてならない。
実物を使っているだけあって出番の少ないワニ。
主に水面に立つさざ波とか泡で気配を漂わせることで恐怖を煽ります。
これがまた地味すぎて何とも…。
サメだったら背ビレという分かりやすいアピールが出来るんですけどね。
結局やることはどっちも同じようなもんなら目に見えた方がまだ良い。
本作はオーストラリア映画ですが、
オーストラリアという国はサメもワニもいるしジョウゴグモもいるしで
アニマルパニック映画好きとしてはもはや恐ろしく危険な国というイメージしかないですね。
一度行ってみたいものです。
アンドリュー・トラウキ監督は「オープン・ウォーター」のサメ版とワニ版を作ったんだからついでにクモ版も作ってくれないかな…
というかオープンウォーターのサメ版って何だろ。
本作はリアル系ワニ映画ですから、それはもう嫌というほど
「人間など逆立ちしてもワニには絶対かなわないんだなあ」
という当たり前の事実を突きつけてきます。
生態系の頂点に立ったはずの人類も単独で大自然の中に放り込まれれば死あるのみ。
無警戒に捕食者のテリトリーに侵入するなど文明人の驕り以外の何物でもなく、
そこは我々都会人も常日頃から気に留めておくべきでしょう。いや、私は田舎者ですけど。
まあとにかく、陸上ならまだしも水中でワニに襲われて助かるわけがないのです。
…かと思いきや、終盤でワニに何度も執拗にガブガブ噛まれてしまう女の子が
なぜかなかなか死なずにワニと大激闘を繰り広げてくれます。
ここら辺は何かいきなりプロレス的な娯楽色が強くなったような感じで、
ありがたいと言えばありがたいのですがやっぱ変です。
見た目はか弱そうな女性なのにやっていることがドルフ・ラングレンと大差ないとはどういうことなのか。
あれはもう甘噛みとか根性とかで説明のつくものではなく、
あの女の子が実はドルフ・ラングレン並みの鋼の肉体を持っていたと解釈するより他にない。
他の人たちはほぼひと噛みで致命傷だったのになあ。
ということで、
「自然は怖い、ワニも怖い」
という教訓を含んだ恐怖映画ではなく
「ワニに勝てる人間もいる」
というアクション映画として気楽に観るのが正しかったようです。
オーストラリアの大自然に埋没したい気分の時にオススメです。