赤い珊瑚礁　オープン・ウォーター　感想

本編開始時に「これは実話です」とテロップが出てくる通り、
トンデモ要素は何一つないリアルでシリアスな映画です。
オーストラリアの海で遭難した男女４人が陸地目指して泳ぎ、その過程でサメに襲われる、という以上のストーリーは何もありません。

余計なものを全てそぎ落とし、本当に純粋にサメに襲われる恐怖だけを徹底的に描いたタイプのサメ映画なので、いつものやつとは１８０度違った姿勢で鑑賞する必要があります。

と言っても、2003年の「オープン・ウォーター」ほどリアルでストイックで低予算じゃないので、ちゃんと恐ろし気なＢＧＭを流して煽ってくれますし娯楽性が皆無というわけではありません。



さて、サメのＣＧの出来の方は…と思ったらこれはどう見ても本物のホホジロザメでした。
しかも資料映像の流用でもありません。
マジで本物のサメを撮影したようです。素晴らしいですね。
いつも見ているＣＧのサメは邪悪さが誇張されているのか、久々に見るリアルホホジロがちょっとだけ可愛く見えます。

さすがに「オープンウォーター」とは違って俳優と同じ画面に映ってる時はＣＧを使用しているようですが、それでも本物のサメがバンバン映って恐怖を味わわせてくれる映画は滅多にありません。ここは素直に怖がっておきましょう。私は多分もう海には入れません。



ただ、サメが出てくるのは尺の半分を過ぎてからなので、それまでは結構眠たい映画ではあります。まあ、タメが長いだけにチラチラ姿を見せ始めた時のワクワク感はありますが。
なかなか一気に襲ってこなかったり、噛まれた人が一旦浮かんできたり、小魚がおこぼれに預かろうとたかってきたりとこの手のリアル系でしか見られない描写が光ります。

その代わりと言っては何ですがスプラッター描写が皆無で、サメに襲われても「足を食いちぎられた！」等セリフでの説明と赤く染まる海水に沈んでいく描写のみにとどまっているのは残念といえば残念な点ではあります。仕方ありませんけども。



一つだけ気になったのは、サメに怯えながら一夜を明かす場面で熟睡していたシーンですね。精神的に相当厳しい状況だと思うんですが、あんな呑気に眠れるものでしょうか。
しかも起きたら都合よく小さな無人島が近くにあるという。
ここは実話っぽくない気がします。ま、些細なことではありますがね。



ラストもものすご～くアッサリしてるし、カタルシスも何もなく、ただ恐怖を煽られるだけ煽られるだけの映画なので「中身がない」と言って怒る人もいるかもしれません。
でもこれは登場人物の気持ちになり切って遭難を疑似体験するための映画なので、観る時はそういう心構えで鑑賞してください。

シンプル過ぎてあまり語る要素がありませんでしたが、たまにはこういうのも観ておかないと、初心を忘れてしまいます。本物のサメが出演している映画は激レアだし、バカモンスター映画としてのサメ映画に慣れ切ってしまった人はぜひ観ておきましょう。