製作:1976年アメリカ
発売:デックスエンタテインメント
テキサスの田舎で寂れたモーテルを経営している男ジャド。建物に隣接した沼ではワニが飼われている。しかしジャドは異常殺人鬼で、泊まりに来た客を大鎌で殺害しては沼に投げ込んでワニの餌にしてしまうのだった。
誰もが認めるホラー映画の金字塔「悪魔のいけにえ」でデビューしたトビー・フーパー監督による第2作目。同じ監督が同じテキサスの異常殺人鬼をテーマにして撮った映画ながら「悪魔のいけにえ」とは知名度・評価共に雲泥の差があり、私も本作の方は「ヒマな時にでも観よう」と思いつつ気づけば20年ぐらい経ってしまっていました。
しかしせっかく巨匠によるワニ映画なんだしいくらなんでもそろそろ観ておくか、と借りてきたはいいんですが…正直これは想像以上に面白くない。
↑本作の舞台となるスターライトホテル。名前負けしているにも程がある。わざとらしいぐらい毒々しい照明と濃すぎるスモークのでせいで作り物感がありすぎます。何もかもが天然ものっぽいリアリティを醸し出していた「悪いけ」とは対極的な雰囲気。
「←ZOO」と書かれた看板が微妙にシュール。こんなくそボロいモーテルに動物園もないでしょうよ。…しかし考えてみると、近年でも「
バーニング・ブライト」というトラ映画において自宅の庭にサファリパークを作ろうと画策するアホもいたことですし、アメリカの片田舎には個人経営の動物園があったりするのかもしれません。
本作にはストーリーもへったくれも無く、ただサイコキラーのオッサンが宿泊客を場当たり的に殺してワニに喰わせるというだけ。そんな経営方針ではすぐ捕まるだろと言わざるを得ない。まあ「悪いけ」もそんなような話だったかもしれませんが、レザーフェイスに比べると本作のジャドにはインパクトが無さ過ぎました。まあ、見た目が平凡なオッサンが狂気むき出しで襲ってくる…というのもそれはそれでリアルな恐怖を与えてくれそうな題材ではあります。
しかし、得物が「大鎌」というのがちょっといただけない。
無駄にデカいうえに柄の部分が曲がりくねった枝で出来ており非常に使いづらそうなんですよね。古い映画ながら他では観られない物珍しさはありますが、リアリティゼロ。大きさの割に重量感が全く無いし。餅つきみたいな振り方に見えてくるシーンもありました。
ジャドそのものも特に体格が良いわけでもなく、そのうえワニに喰いちぎられて片足が義足の状態なので素早さに欠ける。逃げるのも倒すのも容易そうに見えてならない。か弱い女性をおっかける場面の危機感の無さときたら、和やかさすら感じさせてくれます。そのうえ小さな女の子が追われるシーンもかなり長く、ほのぼの感に一層拍車がかかります。悲鳴はものすごくうるさいですけどね。マリリン・バーンズだけは殺されずにベッドに拘束されますがこれまたいつまでもドタバタ騒いでてうるさいのなんの。
では、肝心要のワニはどうなのか?
というと、こちらはあくまで死体処理係という添え物に過ぎず、出番が非常に少ないです。どれくらい少ないかと言うと、金髪美女の着替え・脱衣シーンの方が圧倒的に多く感じるほど少ない。逆に言うとそっちは結構なボリュームがあり、監督のサービス精神の旺盛さを感じ取ることができます。若き日のロバート・イングランドもブリーフ一丁になってくれます。どの年代でもどんなチョイ役でも一瞬でロバート・イングランドだと分かる存在感はさすがです。
ただ、この男が酒場でオラつく場面が何のためにあったのか全然分からない。行方不明者を探す保安官も結局何もしてないような。全体的に本筋に必要なさそうなシーンが多くて散漫な印象です。まあそれでも貴重な「巨匠が手掛けたワニ映画」ですからワニ映画愛好家は必見でしょうね。
1. この作品はマリリン・バーンズマニア向けです
その為か、他の女優さんと比べて、ヌードにこそされませんが、下着姿をじっくり撮られてますし、欲情したエロオヤジから徹底的に痛めつけられて拉致監禁される姿には被虐美すら感じます。
フーパーは緊縛フェチなのか、前作同様、ヒロインは猿轡・拘束されますが、白いスリップ姿に黒いガムテープで口を塞がれ、Yの字状態でベッドに縛り付けられてますが、これが磔にされたような感じがして、エロチズムとサディズムが半端ではないです。
オッサンは後で邪魔が入らない状況になったら、ベッドインする計画だったが、目的達成の前に邪魔が入ってゲームオーバーみたいな、ホラーなのかエロ映画なのか判らない作品になってしまった。まあ、マリリン嬢の脱ぎシーンとボディラインは堪能できるので、彼女のマニアは必見です。
Re:この作品はマリリン・バーンズマニア向けです
確かに、マリリン・バーンズマニアではなかった時点で私にはこの映画を楽しむ資格が無かったのかもしれませんね。当時彼女が監督の恋人だったという話は聞いたことがありますが、そういういきさつだったとは知りませんでした。
それにしても、ハリウッド進出第一弾だというのに周囲の期待を無視して己の性癖・欲望を最優先したトビー・フーパー監督の志はある意味崇高ですらありますね。そういう視点で観れば本作も別の楽しみ方ができるのでしょう。ワニ要素に期待した私が間違っていたというわけですね。