製作:2008年アメリカ
発売:ギャガ
学生フットボールチームを乗せた旅客機が乱気流に巻き込まれヒマラヤ山中へ不時着した。生き残った数人は飢えや寒さと闘いながら救助を待つことにするが、そこは伝説のUMAイエティが登山者を襲う危険地帯でもあった。
ビッグフットとイエティとサスカッチの違いがいまいち良く分かりませんが、あまり傑作が多いとは言えない類人猿系UMAテーマのモンスターパニック映画です。
しかし本作は単なるモンスターパニックではなく、「サバイバル」要素にかなり重点を置いて作られております。それも食料の無い雪山で飢えを満たすためにカニバリズムに走るという極限状況まで踏み込んでおり、1993年の映画「生きてこそ」をちょっと連想するシチュエーションでもあります。
…と言っても、本作はおそろしく突っ込みどころ満載のB級バカ映画です。
↑遠目で見れば謎のUMA感がなくもないイエティの勇姿。
しかし近づくと着ぐるみ感丸出しです。それはいいとしても、ちょっとでも激しく動くシーンではツルツルした安いCGに切り替わるという惨事がたびたび発生。この手の着ぐるみ類人猿映画ではよくチューバッカ呼ばわりされてますが、彼もこんなのと一緒にされたくないのでは…
しかし、そんなチャチいイエティが出てくるからバカ映画なのだと言いたいわけではありません。
主人公たちがイエティに出会うのは終盤ですが、純粋に雪山での遭難サバイバル劇を描く前半部も充分すぎるほどバカ映画となっています。
↑食糧確保のため、狩猟に勤しむ学生フットボールチーム。トランクケースにチョコバーを入れておきつっかえ棒で…ってそんなんに野生のウサギが寄って来るか?
まあこの罠は失敗するんですが、それでもヤリ投げで仕留めるという超絶技巧を見せてくれます。もちろんヤリに刺さってるのはぬいぐるみですし食べてるのはチキンっぽいですが。
と言う感じで一応食料が全く確保できないわけでもなく。そのうえ悪辣な学生が板チョコをこっそり隠し持って独り占めしてたりします。雪山とはいえ吹雪いてもいないし皆さん血色が良くジョークを飛ばしたり喧嘩をしたりと大変お元気そうな感じ。
だというのに、墜落時に死んだ人の遺体を食べるかどうかでモメ始めます。まだ2,3日しか経ってなさそうなのにいくらなんでも早すぎないか?
しかも真っ先に喰いたがるのがチョコを隠し持ってる奴だし。ウサギとチョコをしっかり喰っておいて人肉まで喰わせろと騒ぎ出すとはどんだけ大食いなのか。
一応「アスリートは一日5000キロカロリー必要だ」とか言うんですが、それは筋肉を維持するのに必要なカロリーであって、普通の人より早く餓死するとかそういうことではないと思うんですがね。カニバリズムに走ってまで筋肉を維持したいというなら仕方ないけどさ。
それでも4日目?にいよいよ生き残るために遺体を喰わねば…という決意する一行。早い。
見た感じまだ全然元気いっぱいなんだが、食べちゃうのか…
と思っていると、悲壮な顔つきでリーダーが遺体から切り取って来た肉は100グラムくらいの角切り4つだけ。生存者8人いるのにそれだけ。そして鉄板焼き。何それ。食べない方がマシでは…
しかしその夜イエティが遺体を引き取りにやって来て、チョコを隠し持ってる奴が激怒。
「俺たちの食い物を盗んでやがる!」まだチョコ持ってるくせにそこまで遺体に執着するってのが凄い。カニバリズムに抵抗無さ過ぎだろ…しかもコイツは救助ヘリに乗る直前になってもまだチョコを喰っています。もうチョコがあり余ってる。チョコだけで生き延びられたんじゃないか?
で、クライマックスは当然イエティとの闘いになります。
が、さらった女の子の横でグーグーいびきをかいてるイエティの姿とか、落とし穴にホイホイ落っこちるイエティの姿とかが恐ろしくシュールです。その直後に雪崩が起きますが、そこだけ画質が違っていて資料映像の流用感丸出しでますますシュール。これが笑わずにいられようか。
トドメの刺し方も、いやそれはリーダーごと落っこちるだろと全力でツッコミを入れたくなるほど素晴らしく間違ってる。
ということで、いちいち全部に突っ込んでいると1万字くらいになりそうなのでごく一部にとどめておきましたが、B級バカ映画としてはめちゃくちゃ面白いです。今晩は友人と酒でも飲みながらくだらない映画が観たいなあという方には非常におすすめです。