北極海の海氷に建造された、海洋調査基地“オアシス”。研究に従事する科学者チームは、ある日、突然変異したサメの大群に襲われる。厚い氷も破壊する巨大鮫の猛威により、次々と餌食になってゆくメンバーたち。ついに海氷から分断されたオアシス基地は、水深30メートルの海底に沈んでしまう。外部との通信は絶たれ、酸素も残りわずか。生き残ったデビッドたち4名は、凶暴な海の悪魔に決死の戦いを挑むが…。
(ニューセレクトHPより)
「絶望が浮上する」
というコピーはあまりかっこよくないんですが、なかなかいいジャケット絵ですね。購買意欲をそそられます。
しかしこの邦題はいかがなものでしょうか。
「ディープ・ブルー」の類似作なのか、「ディープ・ライジング」シリーズの新作なのか
ハッキリしてもらいたいものです。
…と思いましたが、そのどちらでもないうえ、そもそも「ディープ・ライジング」などというシリーズ物は邦題ででっちあげられただけの存在でした。
そのうち「ディープブルー・ライジング コンクエスト」とか出してきそう。
まあ邦題は単にサメっぽいワードを組み合わせただけのものとして、
原題は「ICE SHARKS」です。
どうしても「
アイス・ジョーズ」を思い出してしまいますが、あのクソ映画とは違って
雪山に出現する超常的なサメではなく、あくまで極寒の北極海で暴れるニシオンデンザメの進化形に過ぎません。
背ビレで氷を切り裂くぐらいのことはしますが、地味と言えば地味です。
もう一つあのクソ映画と違うのは、本作がちゃんと楽しめるまともな映画になっているということ。なので、「アイスシャーク? アイスジョーズの2番煎じじゃん」などと失礼なことを思ってはいけません。あれはカウントしなくていいです。
↑さすがにアイスジョーズのように氷も雪も自由自在というわけではなく、
しっかり氷に穴を開けてから出てくるアイスシャーク。
今どきのサメは地上でも問題なく人間を捕食可能。
本作は、人間ドラマなどという無駄な要素は極限なまでに排除されており、
純粋に極限状況における人間とサメの生存競争に焦点を絞って描いています。
仲の良い兄弟を出しておいて、片方が死んでも特に何もないとかさすがに排除しすぎ、というかそれなら仲良し兄弟という描写自体が最初からいらなかったのでは?という疑問もありますが。とにかく登場人物に関しては掘り下げ等一切ありません。
これはこれでサメ映画としては充分アリな割り切り方ですね。
海洋調査基地が丸ごと北極の海に沈められてしまう、というのはサメ映画ではなかなか珍しいシチュエーションと言えます。撮影の手間がかかりそうなネタですからね。
サメ映画を撮ろうとする人はだいたい手抜きが目的なので、すぐ田舎の湖あたりを舞台にしたがるものなんですが。その点で言えば本作は志が高い方だと言えます。
ただその代償か本作はサメ映画でも珍しいほどCGを多用しまくる羽目に陥っています。
いや、別にいくらCG使ったってかまわないんです。出来さえ良ければ。
しかし、当然そんな素晴らしいCGが出てくるはずもなく。
むしろ目を覆わんばかりに悲惨な出来栄えのCGがこれでもかと画面に映る事態が発生。
↑アイスシャークの背ビレで氷が切り離され、漂流する基地オアシス。
すごいゲームチックな出来。普通ならなるべく映したくない絵面でしょうが
海底に沈んでからも結構な長時間映ります。
特殊な状況設定だからどうしても映さないといけないんです。
↑すごい昔のゲームチックな砕氷船。
こんなCGしか使えないんじゃ、そりゃ田舎の湖を舞台にしたくもなりますね。でもCGにさえ目をつぶればそっち系より本作の方が断然面白いです。
オアシスが海底に沈んでからは、浸水を防いだり、どうやって浮上するか、通信するか、といったサバイバル要素に重点が置かれることになり、サメ要素がいまいち薄くなってしまうのが難点です。が、それでも充分スリリングで楽しめるようになっています。CGにさえ目をつぶれば。
トータル的に見て、本作はなかなか秀逸なサメ映画と言えるでしょう。
個人的には「
シン・ジョーズ」あたりと同じくらいの面白さはありました。
ヘボいCGを寛大な目で見られるサメ映画ファンには安心してオススメできます。
視力の悪い人はメガネを外して吹き替えにして裸眼で鑑賞するといいでしょう。