タワーリング・ダウン　感想

ご丁寧に建設中の高層ビルで、悪徳建設会社の社長とコンサルタントっぽい悪党が事故の原因を仕込むところから話がスタートします。
電気設備の致命的欠陥を隠ぺいするために検査員を殺害しビル内のコンクリに埋め込む、という極悪っぷり。いくら節約のためとはいえ「致命的欠陥」を隠して一体どうするのかと思うんですが。さらに、ほっといたらそれに気付きそうな部下の浮気まで偽装工作してでっちあげ、建設に関わっていた主人公のブロンソン一家が崩壊へと導かれます。
その欠陥とやらを直しておいた方がトータル的にコストが安くすむんじゃ？と誰でも感じるところですね。後々のことを考えても。


そしてブロンソン夫妻は離婚手続きのために件の高層ビル６０階にある弁護士事務所へ行くわけです。そこじゃないとダメなん？
で、悪徳社長の偽装工作を見破ったブロンソン兄妹が両親をおっかけて同じ場所へ向かいます。
偽装工作から離婚まで６ヶ月もあったのになぜそのタイミングで看破するのか？
ほんで兄妹がエレベーターで２０階を通る時にちょうど同じ階で致命的欠陥が発動して爆発炎上。
一家全員を災害に巻き込むためとはいえ、偶然に偶然を重ね過ぎててさすがにシラケます。
もうちょい自然な流れに出来なかったものか…。


あとは火災の起こった階層でエレベーターに取り残された息子と娘を、ブロンソン夫妻が助けに行く。というパニック映画の王道的な流れとなり、ここからはわりと良く出来ていると思います。
妻の方がロッククライミングの達人である、という設定なのでエレベーターシャフト内で色々活躍してくれますが高所恐怖症の人が見たらゾクゾクするシーンが結構あります。
夫の方は案外何も出来ませんがやはり今は女性の方が強いという時代の流れですかね。
着ていたシャツの袖をまるでチリ紙のように簡単に破くのはいくらなんでも剛力すぎるだろうと思いましたが。
まあそれぐらいの腕力がなければあんなマッチョな活躍はできないかもしれません。


本作の最大の問題点は、事故の原因となった悪徳社長とコンサルタントが主人公一家といっさい関わることなくテキトーに退場していったということでしょう。
もはや彼らの存在意義すら分かりません。それとも、あんな不自然な原因でもなければ現代のハイテク高層ビルで大規模火災など起こりえないということなのか…。
せめて彼らはもうちょっと無残な死に様をさらすべきだったと思いますね。
あと致命的欠陥があると知ってるのに呑気にビル上層階にオフィスを構えていた理由もなんか説明してほしかった。


ラストは序盤に仕込んでおいた伏線を使い、一家の再生と幸せを他者に少しおすそ分けするというちょっと粋なひねりが効かせてあり、鑑賞後の後味をより良い物にしてありました。
前半の不自然極まりない流れはともかく、災害から子供を助ける強い母親の姿を見たいという方なら充分楽しめるレベルではあるでしょう。