製作:2018年アメリカ
発売:ワーナー・ブラザーズ・エンターテインメント
人間の知性を上げる薬を開発するため、オオメジロザメの脳で実験を行う海洋施設アケイロス。サメの保護活動家ミスティはある日アケイロスに招かれ、サメの行動についてのアドバイスを求められる。しかしその時、高い知性を身に付けたオオメジロザメが施設を破壊し始めたのだった。
あの伝説的サメ映画の、19年ぶりの正統続編。
公式のあらすじを見ると、ストーリー的に関連がありそうな記述でしたが、実際はほとんど何も関係がありませんでした。シチュエーションが何となく似ているだけの、リメイクに近いタイプの続編です。
わざわざ前の日にじっくり前作を見直して、ブログ記事まで書いてテンションを上げに上げてから鑑賞。あの名作の続編としての期待に応えられるだけの出来になっていたのでしょうか。
結論から言いますと、全然なってませんでした。
まあ、劇場公開作ではなくテレビ映画という時点でそりゃそうだろという感じですが、それにしてもこれは厳しい。
いや、序盤はまあ頑張ってる感がありますよ。
知能を上げられたオオメジロザメが5匹で編隊を組んで泳ぐ姿とかバンバン映るし、どんな服装の時でもやたら胸元を強調しまくるサメ保護活動家ミスティや開発中の薬を飲みまくってイカレてしまった大富豪デュラントなどの印象的な登場人物が何となくこれからの期待を持たせてはくれます。
しかし、
↑やっぱしこの濃厚に漂う低予算臭はいかんともしがたい。前作比1000分の1ぐらいかな。
世界有数の大富豪が人類の未来を救うために建設した海洋研究施設がコレですとな。薄汚い掘っ立て小屋にしか見えません。こんなところじゃ漁も出来ない気がしますが一体何を研究してるんでしょう。
「鮫の惑星」シリーズでももうちょっとマシな海洋施設が出てた記憶があるんですけどね。せめてCGでパーツを付け足してデカく見せるとか出来なかったんでしょうかね。
いや、見た目は貧乏臭くても別にいいっちゃいいんですよ。
しかし、「閉ざされた海洋施設からの脱出劇+サメの襲撃」というプロットのシリーズ映画で使う舞台としては、いくらなんでも極小すぎるのではないか。
↑知性を身に付けたオオメジロザメの破壊工作によって海洋施設が爆発。
前作で言えば救助ヘリが衝突したシーンに該当するわけですが、こんな絵面だとコントのオチのように見えてきます。掘っ立て小屋全然壊れてないし。
そしてお待ちかね海中の閉鎖空間からの脱出劇が展開されるわけですが、ここからが本格的にちょっといただけない。とにかく小さい施設なので舞台は基本的にやたら狭苦しい通路だけ。3組に分かれた登場人物それぞれが赤・青・緑の安い照明に照らされた通路をジャブジャブ徘徊するという地味な絵面が延々続くことになります。
何より最大の問題は、狭すぎるせいで肝心のオオメジロザメ5匹編隊が侵入すらできないこと。だから全く襲撃してこない。代わりに襲ってくるのは生まれたばかりの子サメの群れ。大した脅威に見えん。サメ映画というよりピラニア映画に近い趣き。まあ過去にはピラニアシャークとかいうハイブリッド映画もありましたけども。まあさすがにピラニアシャークよりは全然マシですけども。まさか仮にも「ディープ・ブルー」の名を冠する映画が「サメがろくに襲ってこないサメ映画」と化していようとは。一応前作のオマージュ的なシーンやセリフはけっこうありますけどね。風に向かって立ち小便しちゃいけないとかね。なんでそこを拾ったのか分からんけど。
↑本作の主役モンスターだったはずの、オオメジロザメ部隊のリーダー・ベラ。
製薬会社社長の悪だくみを窓からのぞき込んで盗み聞き。さすがの知性です。前半部におけるこういう何気ない描写はなかなか悪くないのに、施設の浸水シーン以降出番が長時間途絶えてしまうのがつくづく痛すぎた。中盤で前作のサミュエル的な状況で一撃カリッと行っただけで、あとはラスト8分ぐらいまでベラは何もしません。その最終決戦もびっくりするほどアッサリ。結局偵察用ドローンにジャンプ噛みつきするところがハイライト。まあかっこいいといえばかっこいいけどさ…。それでもベラ自身は数回出番があるからいいけど、他の4匹のサメは本当に最後まで何もしないので賑やかしにすらなってなかった。編隊を組んだ意味とは何だったのか。
というわけで、一瞬でテンションが下がって真顔になってしまうクオリティのテレビムービーでしたが、それはあくまであの「ディープ・ブルー」の正統続編として期待値を上げ過ぎてしまったせいであって、単品のサメ映画としてはまぁまぁそれなりの出来ではあります。
オオメジロザメは淡水でも生存可能なのでよく田舎町の湖に駆り出されるサメですが、そんなオオメジロザメをあえて海で活躍(?)させるというのが見どころでしょうか。
「ディープ・ブルー2」として鑑賞するともれなく落胆することになると思いますので、ここは
「
ディープブルー・ライジング2」
のつもりで鑑賞するのが正着と言えるでしょう。
さすればそれなりの満足感を得られないことも無いはずです。
これからレンタルする人はうまく自分を騙して鑑賞してみてください。