ビーチシャーク。原題だとサンドシャーク。
砂の中を泳ぐサメです。
ここ十数年で様々な進化形・変化形のサメ型モンスターが続々と現れる中、
「砂の中を泳ぐサメ」では少しインパクトが弱いのではないか?
どっちが先か知らないけど「
シャーク・プリズン」のシャークザウルスとかぶっているんじゃないか?
などと個人的に懸念していた本作。
要するに、「どうせクソつまんねえんだろ?」とか思ってナメていたわけですが、
…そんなことはありませんでした。
めちゃくちゃ面白かったです。
と言っても、サメパニック映画としてはクソの極みです。
そしていつものようにジャケット詐欺です。
こんなかっこいいサメは出てきません。
もっとなんか濃い色で硬そうで地味で野暮ったくて汚らしいサメでした。というかそう言われなければサメにも見えません。
そして予想通り超ショボいCG。
土中から襲ってくる脅威を描きたいならサメじゃなくても良かったんじゃないのか?
誰も海に入らないんだしグラボイズみたいなモンスターで良かったのでは?
という疑問が湧いてきますがクソ映画をある程度でも売るためには
「サメ映画」という記号が必要なのでしょう。
そしてストーリーは懲りもせず「ビーチパーティでの観光収入を失いたくない町長サイドと、サメの危険を訴える専門家たち」の対立を軸にしています。
1975年から一体何回この展開を観てきただろうか…
わざとやってるにしても、ジョーズリスペクトにしても、こういう話はもういいです。
クソみたいなサメ型モンスターに安いCG、ダシをとり過ぎて味がしなくなったみたいなストーリー展開。
コミカルでゆるい雰囲気とBGM。
役満とまでは言いませんが跳満ぐらいの条件はそろっています。
ではなぜこの映画を楽しむことが出来たのかというと、
コリン・ネメック演じる町長のドラ息子ジミーのキャラクターが素晴らしく輝いていたからです。
このジミーという男、借金返済のために、不況の島を救うという建前でビーチパーティを企画しますが、それにかける執念がすごい。
目の前でビーチシャークに仲間が食われ、町長である父親も食われ、自分の弁護士も食われ、周囲の人間ほとんどにビーチの閉鎖を進言されても頑として受け付けません。
そこまでならまだ私利私欲に取りつかれたアホということで納得も出来ますが、
実際にパーティ中にビーチシャークが現れて人喰い祭りにシフトしてもまだなお「踊ろうぜ!」とか言って現実逃避します。
そんなことしてるから元恋人が下半身を食いちぎられたりするんですが、
そのハラワタを掴み出してまたもや現実逃避。
でも人の死を悲しむくらいなので根っからの嫌な奴ではないわけです。
なので、最後には責任を感じてビーチシャークを引き付けるオトリ役になりますが、
ビーチシャークは音に引き寄せられるということで、なんかよく分からない歌を歌って逃げながらステップをふみます。
そのシーンは実にヤケクソ感と悲壮感にあふれているような気がするわりに
やっぱり能天気な雰囲気ごちゃ混ぜでホームラン級のインパクト。
私の中で「サメ映画史に残る珍場面」ランキング上位入りしました。
この素晴らしいキャラを生み出したのは脚本家の力なのかどうかは分かりませんが、
ともかくコリン・ネメックがあれほどノリノリでジミーを演じてなければここまでのインパクトは出なかったはずなのでこの映画が面白くなったのは彼の手柄と言ってもいいでしょう。多分。
オトリのシーンはCG後付けなのでコリン・ネメックが何もないところで一人でやってるわけで、それを想像すると笑いがこみ上げてきます。
メイキングあるんだったらDVD買おうかな…。
結論としては、クソ映画が好きな人にオススメです。