製作:2013年カナダ
発売:アムモ98
妻に先立たれ、若い後妻サラを迎えた男コーリー。しかし、幼い息子のリアムがサラに全く心を開いてくれず、家族関係は険悪な状況に。
そんな一家3人が何とか仲良くなろうとして別荘へ遊びに来たところに、謎のねずみ男たちが襲い掛かる。
B級ホラーマニアの心を惑わす奇怪な邦題が付けられたスラッシャー物。
…と、思ったらスラッシャーと言えるほど人が死にませんでした。
見るからにやばそうなネズミの被り物をしたサイコ野郎が出てくることは出てきますが、言うほど凶暴でもないし殺人鬼というわけでもない。
それにしても、ここまでひどい邦題にはなかなかお目にかかれませんよ。
こないだジャケットに「
そのヘビ、凶暴につき」という煽り文句が書かれた映画を観たばかりですが、煽り文句ならまだしもパロディでも何でもない映画で正式タイトルに採用しちゃうのはさすがに頭のネジが緩んでいると言わざるを得ない。
何にも考えずにネズミもののアニマルパニック映画だと思って借りたら、ネズミそのものは一切出てこないとな。それではネズミと人間の合成生物、つまり半妖怪のねずみ男が出てくるのかと思ったらそれすらも出てこない。単にねずみのぬいぐるみを被ったサイコマンが出てくるだけ。しかもそのぬいぐるみも現地調達なので普段からそんなものを被っているわけですらない。
つまりネズミというワードには何の意味も無い。
「地獄のモーテル」の邦題に「そのブタ、凶暴につき」とか付けてるようなもんですよ。
ちなみに原題は「torment」で「苦痛」という意味のようです。それはそれで何じゃそらと言いたくなる題名ですが。
それで内容の方ですが、主役の一家が若い後妻と息子の仲の悪いことに悩む父親、という構図ですから、本作はこのネズミマンの襲撃を乗り越えることによって絆を回復する。みたいな話であろうことは容易に想像がつくわけです。
つまり、簡単に死なせられる余剰人員がいない。血祭りに上げられるイケニエの役がいない。寂しい。
このネズミマンと仲間のウサギ少年、ブタおばさんの襲撃者グループは単純に殺戮を好んでいるとかそういうわけでもない。いくらでも殺せそうなシチュエーションに持って行っても全然殺す気が無い。では何が目的なのか? というと、不仲な家族に目をつけ、子供をさらって自分たちの一員にするというサイコ集団でした。なので、これ見よがしに包丁をいじくったりしてても殺意はないわけでいまいち緊張感に欠ける展開ではあります。
とはいえ、単純にトラブルを乗り越えることで家族の絆を取り戻すというありがちなパターンに落とし込むのではなく、襲撃者側がその亀裂に付けこんで引き離すことそのものを目的にしているホラーというのはそれなりにユニークです。力づくで誘拐するのではなく、子供を見放すようなセリフを親に言わせようと拷問拷問。まあ、わりとぬるめの拷問ですが。そんなことぐらいで子供がサイコ集団の仲間入りしたくなるかという疑問もあります。
もう少し主役の一家に好感度が持てるような描写をしてくれていればもっと良かったのですが、むしろ人間的にはあまり好きにはなれないタイプの人たちだったので別に酷い目に遭っても大して何とも思えない。リアムが義母にいきなり心を開いて親密になったりしますが本当に唐突というか雑すぎてついていけない。そこが重要なテーマじゃないんかと。
ネズミマンチームの事情は一切明かされず、被り物を取ると何やらグチャっとした顔で、致死量の電撃を喰らっても復活するところから見て超常的な存在なような雰囲気も漂ってたりしますが、そこら辺は最後の最後でちょっとしたどんでん返し的な仕掛けがあってほんの少しだけ感心しました。続編が出たら邦題は「そのウサギ、凶暴につき」ですかね?
邦題を意識しなければそこそこ暇つぶしにはなるB級ホラーでした。