製作:2017年アメリカ
発売:アルバトロス
SNSのフォロワーや「いいね」を集めるために、気に入らない奴を殺してはネタにして有名になっていく女子高生のマッケイラとサディ。
サイコパス少女コンビが大量殺戮の果てに行きつく先はネットセレブなのか?
SNS中毒者が注目を浴びたいがゆえに色々やらかす女が主役の映画は最近だと「
イングリッド ネットストーカーの女」なんてのがありましたが、こちらはただの痛いストーカーだったイングリッドよりもはるかに過激で危険極まりないサイコパス2名による一大殺戮巨編となっております。倫理観完全崩壊というだけでなく、人体解体脳みそ飛び出し電動ノコギリ串刺しとスプラッター多めにつきかなり観る人を選びそうなブラックコメディでした。
本作、マッケイラとサディの二人が冒頭から連続殺人鬼を拉致して弟子入りを懇願するなど、はじめからアクセル全開で狂気が迸ってます。明るいコメディ調でやっているので笑えるシーンもありますが、この2人の最終目的がわからないのが見ていてちょっとしんどい。フォロワーや「いいね!」を集めるという目的はいいけど、そこまでしてそれを集めて何になるのかが理解できない。公式HPのあらすじだと「ネットセレブ」を目指しているらしいですが本編でそんな台詞はないし。
しかし、どうもこの2人はSNSへの異常な執着というよりは単なる快楽殺人者なのではないかという気がします。
「良心が異常に欠如」「罪悪感が皆無」「自尊心が過大で自己中」「口が達者で表面上は魅力的」とサイコパスの特徴にかなり当てはまっており共感は全くできないし心理も理解できない。私はこれもまた「珍獣を眺める系」の映画と受け取りました。
サイコパスというやつはこの「表面上は魅力的」という部分が非常に厄介で、本作でもまんまとそれにかかってしまいサディに夢中になってしまう気の毒な男子高生ジョーダンという人物が出てきます。彼がこの邪悪なサイコパス共の心理的トラップに引きずり込まれて行く過程があまりにも哀れで見ていられない。彼女たちを心から心配し守ろうとする。何かがおかしいと気づいてからも、彼女を更生させようと頑張るのです。人を見る目が無さ過ぎるから自業自得とも言えますが、それでもなお愚直な彼の真心と愛がサディを真人間に変えるのか? そんな感じのクライマックスではありますが…。
今まで色んなホラー映画を観てきましたが彼ほど残酷な仕打ちを受けてしまったキャラクターもそういないのではないでしょうか。ジョーダン視点で見ると凄まじく胸糞悪い映画です。さすがにこの点は「他の人はどう思ったのか?」ということが気になり、ネットで感想を漁ってみましたが「ジョーダンは高校生じゃなくてオッサンにしか見えなかった」といったような死者に鞭打つ無情なコメントしか見当たりませんでした。何てこった。
まあそんな感じでストーリー的には好きになれないタイプの映画ではありましたが、一方でスプラッターに関しては大変力が入っており視覚的には楽しめる一品です。過去のホラー映画に対するオマージュがちりばめられており、「食人族」の串刺しやら「ハロウィン」のラストシーンやら「ファイナル・デスティネーション」の偶然死、クライマックスは「キャリー」風などと盛り沢山で、あざといなあとは思いながらもニヤリとせざるを得ない。
中でも一番の見どころとしては、クラスメイトの葬式でトラジディガールズよりも目立ってしまったせいで狙われるマッチョな消防士との戦いですね。さすがにあそこまでのムキムキマンにはいかにリミッターの壊れたサイコパスであろうと単なる女子高生が敵うわけがないのですが、毒殺を潔く諦めて真正面から肉弾戦を挑む二人にほんの少しだけ応援する気持ちが湧いてしまいました。まあすごい勢いでダンベルを投げつけていたので実はすごい腕力を持ってたのかもしれませんが。
ただ一番の問題はラストでして、このサイコパス2人を心から魅力的だと思ってしまったジョーダンのような人ならば喝采したくなるラストなのかもしれませんが、そんな人はジョーダンの扱いをどう思ったんでしょうか。大量殺人者には相応の報いがあってほしい。大抵の人はスプラッター全開の天罰を望んでいたわけで(多分)、そこが満たされない以上どうにもスッキリしないモヤモヤ感が残ってしまいました。
そういうオチもまたブラックな皮肉のうちとはいえ、あの2人が逮捕されない理由付けが何もないのがね。
まあ、スプラッタ・パロディ多めで胸糞悪いブラックコメディが人にはそこそこおすすめです。