「殺人魚獣 ヘビッシュ」
…ヘビッシュって何?
なんかこう妙に語感の響きが良くて「ザンゴリラ」とか「サランドラ」みたいな意味不明系の秀逸な造語邦題として評価してあげたくなります。
しかし、ジャケの右上を見るとどうも「ヘビ+フィッシュ」の合成モンスターという意味が込められていそうですね。
これはとんだデタラメです。
本作は合成モンスターなどではなく、世にも珍しい雷魚映画なのですから。
どうやら中身も観ずに邦題を付けているようですね。
何が「
―ヤツの名はヘビッシュだ」だよ?
本編中にそんな単語一度も出てこないよ。
まあそういういい加減さも嫌いじゃないけどさ。どっちにしろ獣要素ないですよね。
まあ雷魚が珍しいと言ってももちろん前例がないわけではなく、
他の雷魚映画には「スネークヘッドテラー」とか「フランケンフィッシュ」なんかがあるようですが、なんでわざわざ雷魚なんかをテーマにモンスター映画を作るのか、いまいちよく分かりません。
雷魚ならではの特徴も大してないし。
せいぜい「ある程度陸を這うことが出来る」ってぐらいですよね。
本作の原題は「Snakehead swamp」ということで、舞台は沼です。
…もし私が配給会社にいたら素直に「雷魚の沼」という邦題にしてしまいそうですが、B級映画担当者たるものそんな芸のないマネは許されないんでしょうね。
遺伝子改造を施された雷魚を運搬していたトラックが事故でブラックブライアという沼に突っ込んでしまい、モンスター化した雷魚が大繁殖してしまった…という設定。
CGのクオリティはともかく、見た目の迫力はそれなりに悪くないですね。
ただせっかく素敵なキバをお持ちなのだからもうちょいスプラッタな捕食シーンがあっても良かった。水中に引きずり込んで水が赤く染まる…ってそれクソサメ映画の経費節約常套手段ですがな。
そして主役は2年前に次男を失ったことで、微妙に険悪な仲になってしまった3人家族。
つまりこの雷魚パニックを一緒に乗り越えることによって絆を取り戻すパターンだということがすぐに分かってしまいますが、王道中の王道なのでそれもまあ良しとします。
長男のクリスがどっかで見た顔だなと思ったら「
ゴースト・シャーク」にも出ていたデイブ・デイビスという若者でした。
またしても「真面目だけど陰気」という見た目通りのキャラなのはいいんですが、なぜかそれに伴い本作も「ゴースト・シャーク」と同じようなオカルト要素が組み込まれています。
まさかの「ゴースト・シャーク」フォロワー。
しかし全体的な雰囲気としてはそっちより「
フライング・ジョーズ」にそっくりです。沼と言いキャラと言い。クオリティも似たようなレベル。
モンスターパニック映画の設定としては、遺伝子改造された雷魚が放たれたというだけで十分すぎるとしか思えないのですが、本作ではブードゥ教とか200年前に沼で死んだ女性の呪いとかが全ての災いの根源としてパニックの合間にたびたび語られます。
が、それに何の意味があったのかと問われると特に何もないとしか言えません。
要するに水増しですが、いくらなんでももう少しパニック要素と絡められるような展開にしてほしかったところ。
見どころとしてはそんな刺身セットに乗せられた造花タンポポみたいな扱いのオカルト要素よりも、クリスと一緒に沼でボート遊びをするメンバーに混じってるクズ男・イアンの方がよっぽど面白味がありましたね。
ダイナマイト漁をしたり、仲間をわざと雷魚に喰わせたり、腹を刺されて死にかけたと思ったら数分後にはほぼ全回復してたりと大活躍。
本作を最大限楽しもうとするなら彼に着目して鑑賞するのが賢いやり方と言えます。
…雷魚が出てくるシーンも案外少ないですからね。
まあでもB級モンスターパニック映画としては平均点クラスの出来はあると思われますので、このジャンルが好きな人なら充分暇つぶしにはなるでしょう。