製作:2019年ロシア
発売:カルチュア・パブリッシャーズ
カーチャは仲間3人と共に新年を祝うため、ロープウェイで雪山の山頂を目指していた。ところが、ロープウェイが故障して停止してしまったうえ、操作していたスタッフがうっかり死んでしまい、彼らは上空60mに完全に取り残されてしまう。
そして極限状況の中、一人が凶悪な本性を現しはじめ、次第に殺し合いに発展してゆく。
シチュエーションも邦題もジャケ絵も何もかも2010年のアメリカ映画「
フローズン」にそっくりなロシア映画。
9年も経って今更「フローズン」のパクリとは、遅れてるなロシアの映画界はよ…とか、そもそも同じような題材だったらロシアがアメリカを超えることは不可能に決まってるだろうが…とか色々失礼なことを考えながら鑑賞しましたが、意外にも「フローズン」よりも本作の方がはるかに面白かったです。
リフトでもロープウェイでも、誰にも知られず取り残されてしまうというシチュエーションがそもそも作りづらいのかもしれませんが、「フローズン」と同様…いやあれよりもはるかに登場人物の性格に難があります。平たく言って凄まじいクソ野郎共です。一応、主人公のカーチャだけは比較的マトモなのが救いではありますが、他の奴らは営業時間外のロープウェイに乗せてもらおうとスタッフを脅迫したり金を握らせたりする序盤のシーンだけでもう可及的速やかに死ぬがよい、としか思えません。
そこまでしてロープウェイに取り残されたとしても、助けが来るまでじっとしていればいいだけです。というか他にやることなど何もない。だがそれじゃ映画的につまらんだろということで、「フローズン」の場合は飛び降りることが出来なくもない高さに加え、オオカミなどが適時投入されたわけですが、本作は高度60mもあるのでとても飛び降りることは出来ません。それでもゴンドラの上に出て状況を確認したり、ドアを開けて立ち小便したりと高所恐怖症持ちにとってはものすごくゾワゾワする映像が続きます。
そんな中本作では何が投入されるのかというと、はじめからメンバーの中に生粋のサイコ野郎が混じっているのです。こういう遭難映画にトラブルメーカーはつきものですが、ここまで明確に殺意を持って襲ってくる人物がいるのは珍しい。何の得もないのに。というか遭難する前からすでに相当サイコなオーラが出てるんですが。なんでまたあんなとんでもない奴と共に新年を祝う計画など立ててしまったんでしょうか。
↑いやいや、よくそんなおっかない場所に平気で出られるなと。下はちょうどいい具合にクレバスだったので、実質60mどころではない高さ。私だったら間違いなく固まって動けなくなりますよ。というか観てるだけで緊張して固まってました。だというのにこいつらは、発煙筒を持って飛び跳ねるわ、仲間を突き飛ばすわ、しまいには接続部の部品をむしり取って振り回すわとあまりにもスリリングすぎる展開。
バカとかサイコとかを超越した無茶な行動の数々に、アナーキズム溢れる熱いロシア魂を感じました。
とにかく高所恐怖症持ちにとっては恐ろしすぎて画面を正視できないシーンだらけ。
下手なホラー映画よりよっぽど怖かった。ということで、本作は高いところが苦手な人に特にオススメしておきます。