製作:2017年カナダ
発売:ニューセレクト
父親に先立たれたことで精神が不安定になった母とうまくいかなくなった女子高生リア。人里離れた森の一軒家への引っ越しを強制されたことで、母娘にさらなる亀裂が入る。思いつめたリアは黒魔術儀式を行い、魔女を召喚して母親を呪い殺そうとしてしまう。
「ブラックフット クマ地獄」で超リアルなクマ襲撃を見せてくれたアダム・マクドナルド監督の新作。
今回はリアルな恐怖ではなく魔女がテーマですが、雰囲気とか演出とか構成はアレとほぼ同じです。静かだけど不穏で張りつめた空気感を醸し出しながら、タメにタメて終盤で(規模が小さいながらも)地獄のような光景を爆発させてくれる。
クマ地獄に比べると地味すぎて刺激に乏しい感は否めませんが、それなりにマニア好みなホラーには仕上がっているのではないでしょうか。
母親にくそド田舎への引っ越しを強制され、大喧嘩してしまった娘リア。
都会(と言うほどでもないが)でチョイ悪な友人たちと黒魔術ごっこをして遊べなくなることを恨んで母親に黒魔術の呪いをかけてしまう。が、呪った後は普通に仲直りしてしまい、やっぱりやめときゃよかった…と後悔するも怪奇現象が起き始めてしまう。
ストーリーは特別どうということもなく、何かが起こりそうで起こらないけどやっぱり何かが起こりそうかも…という雰囲気を母娘の軋轢と共に味わう映画です。カップルの軋轢を眺めながらクマの気配に怯えさせてくれたクマ地獄と同じようなものですが、クマほど万人に共通する恐怖ではないのでいくら雰囲気が似ていてもあんまり緊張感はありません。
魔女に呪い殺されるって言ってもなあ…「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」も当時何が面白いのか全く分からんかったし、「魔女」の恐怖と言うのが全く持ってピンと来ない。「モンスタートーナメント」でサイクロプスとボクシングしていた魔女の姿しか思い浮かばない。
何にしても生きながらクマに喰われるよりは気楽そうだと思うんですよね。
監督は「見せない恐怖」にこだわりがあるらしく、魔女もなかなか姿を見せてくれません。
↑お分かりいただけただろうか。魔女の姿の片鱗を…。
という具合に中盤でほんの少しだけチラ見せしてくれますが、後はクライマックスまでおあずけ。そのクライマックスもほんのわずか、遠目に少し見えるだけ。
どんだけ出し惜しんでるんだと突っ込みたい気もしますが、観客の想像力を最大限膨らませるために直接的表現は最小限にとどめる!という監督のこだわりも分かります。
クマ地獄ほどではありませんが、かなりイヤ~な呪殺シーンもしっかり出てきますしね。人によってはかなり鬱な気分になれそうなムゴさです。実は魔女などただの幻覚にすぎず、惨劇に至った原因は全てリアの中にのみあったのだ…なんていう見方をしたらよりイヤな気分になれるでしょう。
ただ本作の場合、そんな地味すぎるお話や見せ場よりも主演のニコル・ムニョスという人の超極太眉毛にばかり視線が行ってしまうのが問題です。太いだけでなくえらく長い。描いてるとは思うんだけどどうしてそこまで太く立派に描いてしまったのか。カナダの女子高生たちの間で流行りの眉毛なのか?
本作はほぼずっとリア視点なだけにこの眉毛は画面に出ずっぱりなのでなおさら気が散って仕方がない。監督渾身の恐怖演出がクマ地獄よりも上滑りしているというか散漫な印象になってしまったのは、魔女と言うオカルト的題材のせいではなく、ムニョスさんの変なメイクのせいだったような気がしないでもない。
ということで、本作は「
ブラックフット クマ地獄」を気に入った人ならボチボチ暇つぶし程度には楽しめるのではないでしょうか。