製作:2017年カナダ
発売:ニューセレクト
双子のうち1人を死産してしまったメアリー。それでも気を取り直し、無事に生まれた赤ん坊のアダムを育てようとするが、謎の怪奇現象が発生し始める。ググってみると赤ん坊を連れ去る魔女に狙われていることが判明。助かる手段は身代わりに別の赤ん坊を捧げること。メアリーは魔女からアダムを救えるのか? それともこれは産後うつによる幻覚なのか?
産後うつに陥った若い母親が赤ん坊に関連する怪奇現象に襲われ、それが母親本人しか知覚できないため、単なる幻覚なのか本当にスーパーナチュラル的存在に襲われているのかが曖昧なまま進行する。という内容はちょっと前に出た「
マザー・ドント・クライ」とかなり似ています。
怪奇現象を主人公しか認識できないため、周囲には精神異常者扱いされてしまう。
という展開はかなりありがちかと思いますが、私はストレスがたまるので嫌いなパターンです。しかも本作も「マザー・ドント・クライ」(以下MDC)も、本当にただの精神異常者に見えるので余計にタチが悪い。
いくら気の毒な背景があるとはいえ、サイコ味があふれすぎてて近づく者全てを傷つける狂気と化している主人公が一番怖いしイラつくという点がよろしくない。産後うつの知識など私には全くありませんが、夫を魔女と見間違えて包丁振り回したり、赤ん坊を風呂に入れたまま2階から飛び降りたりするものなのか? 多分しないでしょう。一体どれだけ重症なのか。「MDC」ほど重たい背景ならまだ理解出来ないこともないんですが、双子の片方を死産したことでここまで発狂されてもさすがに困ります。
本作も「MDC」も魔女や悪霊が怖いタイプのホラーではなく、「異常者に刃物」というのが最大の恐怖ポイント。青白い顔で目を見開いて泣き喚きながら刃物を振り回しまくる姿はシンプルに怖い。しかもその脅威に晒されるのが主に赤ん坊であるというのがホラーとしてはある意味卑怯な怖がらせ方。いやメアリーは魔女から赤ん坊を守っている立場なんだから…と考えようとしても、虐待を匂わせる描写をチラつかせてくるので油断ができない。とりあえずシ~ンとしてる時にいきなり血まみれの赤ん坊をドギャーンと映すのはやめてほしいものです。
「魔女っぽい何かが私の赤ん坊を連れ去ろうとしている…!これは何なの…!?」
という危機感を覚えるのはまあいいんですが、ググって1ページ目に出てきた記事をそのまんま信じ込んで動いてしまうところが、こちらを色んな意味で不安にさせてくれます。最近のホラー映画はグーグルで解決手段を探る展開が実に多いが、本作は探るも何もなく決めつけが激しすぎる。魔女の由来も詳しくは語られません。それが無いからバケモノホラーとしては物足りないんだけど、各自でググって調べてねということなの? そんな面倒なことしないよ。
魔女の出番が少ないせいで全体的に超常現象という印象が非常に薄く、メアリーがサイコな幻覚を見ているとしか思えない展開に終始します。とにかく病みすぎなうえにやらかしまくりなので、赤ん坊が助かるにせよ魔女がいるにせよいないにせよ、メアリー自身には救いなど全く訪れそうにない。なんでまたそこまで?という疑問が付きまとうが冒頭の理由以外には何も無し。ここまで病んでしまった理由付けがやっぱり弱く感じます。
そうしてひたすら観ている者の神経を逆撫でしたあげく、特にどうということのない曖昧なオチ。ガッカリするほどではないけど、まあそんなもんかという。これなら多分「マザー・ドント・クライ」の方がまだ良い出来かなと思うので、どうしても産後うつがテーマのホラーを観たいという方にはそちらの方をオススメしておきます。両方観る必要は、多分ないです。映像や役者の演技など出来自体は悪くないと思うんですが、観ていて楽しい要素が何一つ存在しない。鬱映画としてはそれなりかな。ただ私個人としては、しばらく産後うつホラーは観たくなくなりました。