製作:2015年カナダ
発売:ブロードメディア・スタジオ
車で楽しく旅行していたエミリーとレズリー。ノロノロ運転のディーゼルトラックを追い越したところ、執拗に付け狙われる羽目に陥る。彼女たちは悪魔じみたトラックの追跡から逃げ切ることができるのか。
スティーブン・スピルバーグの「激突!」のリメイクと書いてあるのを見て、いつの間にそんな作品が…と思い、鑑賞しました。しかし、これが異常に貧乏くさい。オリジナルも低予算のテレビ映画でしたが、それ以上に金がかかってなさげな雰囲気。オリジナル版から44年も経っているのに。
本当に正式リメイク作品なのか? 単なるパチモンか? 知名度の低さからすると後者かもしれません。
ストーリーとしては、アメリカの田舎道を走っていたら変なトラックに付きまとわれてしまい、必死で逃げようとするだけの超シンプルなものです。本家「激突!」は追われる側が男1人でしたが、本作では若い女性の二人組。それによって本家には無い掛け合いが少々追加されていますが、アウトラインは本家をそのまま上辺だけなぞった形。
ただし車は普通のファミリーカーだった本家と違い、マスタングGTというスポーツカーになっていました。アメ車には詳しくないんですが、多分5リッターエンジン車で400馬力以上あるやつ。そんなハイパワー車に乗っていながら、なんであんなトラックごときに何度も追いつかれてしまうのか。全然分かりません。いや、一応「ずっと高速で走っていたら危険」とか言ってはいましたが、全くスピード感がないので危険にも見えない。
↑こんな何もない田舎道でマスタングならいくらでもトラックを置き去りに出来るだろ…としか思えずイマイチ危機感が無い。最初から最後までダラダラ走っているだけ。ただ、雄大な大自然を背景に走る赤いマスタングがなかなか絵になっているおかげでボチボチ退屈せずに観られたような印象。中身は何もない。空虚の極み。パンクしたから走って逃げようとしたら小石でコケて気絶したシーンが特に酷い。一瞬過ぎて何が起こったのか分かりにくいし。わざわざタイヤ交換しておいてくれたトラック運転手の意図もわからん。あと、せっかく人を殺したんなら殺人シーンか死体は映してほしい。どちらも映さないって…ケチりすぎにも程がある。エミリーさんはせっかく銃を手に入れたのに一発たりとも撃たないし。どれだけ経費を節約したい映画なのか。
それより本作の何がアレかって、肝心の「激突!」するシーンが一切無いってことなんですよね。
せっかく高性能なスポーツカーが出ていながら、カーアクション的なシーンも一切無し。
何でしょう、この車を大事に大事にしている感は…
もしかしてこのマスタングはスタッフの私物なのでは?とか、
もしくは撮影用に購入はしたが、撮影が終わったら私物にしようとしているのでは?
というケチ臭い疑惑がムクムクと湧き上がってきます。スリラー的には遅い車の方が良いわけだし。
なんせ最後はトラックにぶつけて崖から突き落とす展開なのに、
ぶつけると言ってもバックでちょっと押しただけだし、
ぶつかる瞬間も映らないし、
崖から落ちるトラックは安いCG感丸出しだし(背景が実写の時と全然違うぞ!)
マスタングに傷がついたようにも見えない。
あれだけオリジナルの展開を踏襲しておきながら、主人公の車だけは平穏無事で済ませるといういらん改変。
明らかにマスタングが保護されている!
↑ということで、マスタングを経費で購入する口実で作ったような映画でした。
いや、もうマスタングのプロモーションビデオのようにすら見えてきます。
この車が好きな人はそれなりに楽しめるかもしれません。私ももし宝くじが当たったらこの車を買ってみようかなと思える程度には魅力的に見えてきました。あ、でもフォードが日本から撤退したからもう買えないのか…。
…なので、純粋にロードレイジがテーマのスリラーを見たい人は本家「激突!」や「ロード・キラー」を観た方がいいと思います。
またはトラックが襲ってくるホラー映画つながりで「
トラックス」を観た方がまだ有意義と言えるでしょう。