人類へ最凶ゾンビ蜂の宣戦布告!!大ヒット「ゾンビーバー」に続く動物パニックゾンビ・ホラー!
■無法地帯と化した荒野を殺人ゾンビ蜂が襲来!ハチに襲われ次々とゾンビ化していく人間たち!
(ブロードウェイHPより)
ゾンビ+アニマルパニックということで、「
ゾンビーバー」に便乗して宣伝しているハチ・パニック映画。
…の皮をかぶっていますが、これは完全に世界終末系の宗教映画です。
「ヨハネの黙示録」の引用文から始まり、信仰心とはどういうものか?
神を信じる者は救われるのか? という宗教的議論が本編の多くを占め、
「ダニエル書」の引用文で締めるという宗教成分の異様な濃度。
でも私はこれがキリスト教なんだかユダヤ教なんだかも全然分かりませんし興味もありません。
ゾンビバチに期待して鑑賞したらコレだよ…神に慈悲は無いのか。
導入部分は全く意味が分からないのですが、
ロサンゼルスかどっかで何かの暴動か災害が起こっており、
そこから逃げ出したレゲエ的黒人3人グループと保安官たちの混成チームが
ゾンビバチの襲撃から逃れながら郊外の一軒家に立てこもる。
という感じのようです。
ゾンビバチのCGは「ロスト・ジョーズ」をちょっと思い起こさせる
チープさで画面を横切って行きますが、本作にはプレデター的に
ゾンビバチの主観視点が出てきます。
なんとなく六角形の複眼視点風になっておりちょっと面白い見せ方ですが、
画面の歪みで出演者がすごくブサイクに映ってしまうというデメリットも。
ちなみにハチがゾンビなのではなく、ハチに刺された人間がゾンビになってしまうという設定です。
…と言ってもそんなシーンは一つしかありませんでしたが。
何が「ハチに刺されて次々にゾンビ化」だよ? 全くもう。
あと、一応ハチを際立たせたいのか何なのか
本作は黄色を基調とした色彩感で画面を構成しているようで、
主人公(?)のジェイB君やその親友も妙に黄色ずくめなファッション。
そんなジェイB君は本作唯一のアンチ宗教派で、
「信じられるのは自分だけ」と無宗教者には共感できるキャラクター。
…なのですが、他の登場人物はだいたい神を信じれば救われると思っているので、
そんな多数派の提案に対していちいち異を唱えて声を荒げていがみ合うシーンが多くて辟易してきます。
みんなだいたいこんな感じの敬虔な信者ばかり。
個人的には全くついていけません。
だいたいこのゾンビバチ騒ぎがおそらく「神の怒り」なわけですから、
信じれば救われるということは人民を神が選別しているのか?
ちなみにこの女性はジェイB君の弟を大した理由もなく撃ち殺した過去をお持ちの鬼畜保安官ですが、本作においては常識人代表のような態度でトンチンカンな指示を出しまくり死者を増やしていく役割を担っているようです。
そんなクサレ保安官とは当然ウマが合わないジェイB君。とにかく不毛に吠えてばっかり。
彼と保安官の罵り合いが多くて観ている方も疲れてきます。
少人数孤立系のパニック映画で、内輪モメは非常にわずらわしい要素の一つ。
しかしこれをパニックの対象そっちのけで展開のメインに据えたがる人はなぜか大勢います。
もうマジでやめてほしい。内輪モメはいいからゾンビバチと戦ってよ。
しかしギャンギャン騒ぐ鬱陶しいジェイB君にウンザリした人は他にもいたようで、
彼は唐突に後ろから銃殺刑に処されてしまいます。
いわゆる騒音殺人というやつですね。
一体誰がやってくれたのか?
凶弾に斃れたジェイB君の後ろにいたのは…
まさかの年端もいかない少女でした。
ちなみに彼女は神の祝福を受けているらしく、純真無垢で神々しい雰囲気に包まれており、
ハチの群れと遭遇しても決して襲われません。
神を否定するジェイB君に引導を渡すにはふさわしい人選…なのか?
このやっちまった感。
一応断っておきますが本作はコメディ映画ではありません。
アメリカは銃社会ゆえ、時折ですが子供がうっかり発砲してしまい
家族を殺害してしまったというような痛ましいニュースを目にすることがあります。
その辺を皮肉ったシーンと解釈しても良いものかどうか?
ジェイB君を銃殺した後は、ゾンビバチの大群が家に侵入してきそうになるのですが、
生き残った信心深い女性たちで必死に祈りを捧げたところ、
なぜかゾンビバチの群れはどっか行っちまったようです。
そしてにこやかに外へと駆け出す少女。
罪悪感のカケラも感じ取れません。
やはり神を否定する者は抹殺・選別されて当然なのでしょうか?
というわけで、無宗教者には一ミリたりとも理解出来ねえ難解なC級珍作映画となっておりました。
ハチとかゾンビとかパニック要素に期待しても全くの無駄です。あくまでも終末系の宗教映画です。
「ヨハネの黙示録」とか「ダニエル書」とやらを読破しているような信心深い方のみご覧ください。
しかしクオリティ的にはむしろ神を冒涜しているようにも見えますので、
正確には「信心深いクソ映画マニア」という神に選ばれし者だけが楽しめる可能性を秘めていると言えるでしょう。