(r)adius/ラディウス　感想（ネタバレあり）

本作の主役はもちろん半径１５ｍ以内の生物を皆殺しにしてしまう力を持った男リアムですが、そんな彼の超能力を無効化する能力者のジェーンという女も重要人物です。ジェーンがリアムの半径１５ｍ以内に存在する限り、彼らに近寄っても死なずに済む、という設定。
ジェームもリアム同様に記憶を無くしているが、どうやら交通事故を起こしたときは同じ車に乗っていたらしい。

彼らに何が起こったのか？
そして彼らは何者なのか？

という２点の謎を追うＳＦサスペンスとなっていました。

この映画、リアムが周囲の生き物が次々と白目を剥いて死んでいく様子を目の当たりにして、一体何が起こっているのかと戸惑う序盤が一番面白いです。
というか、その謎解きをメインのネタにすれば良かったんじゃないかと思えるのですが、
自分の半径１５ｍ以内という法則を速攻で見出し、さらにそれを無効化するジェーンとすぐに出会って一緒にいることになるので、
「なぜ自分の周囲の生き物が死ぬのか」
という謎とそれに伴う苦悩といったいくらでも面白くできそうな展開をわざわざ駆け足で流してしまっています。

つまり監督としてはその超能力は単なる小道具、もしくは何かのメタファーであるというだけで、本当に描きたいモノが他に存在する、ということになります（多分）


…というような思考を働かせなくとも、本作は記憶喪失になった男女２人が自分の正体を突き止めるべく四苦八苦している様子に尺の大半が割かれるので、そちらの方がメインのテーマであろうことはすぐに分かります。分かりますが、絵的に派手なシーンもなければ大した謎解きもないので、ＳＦ映画というよりはテレビのサスペンスドラマを観ているのに近い感触があると言えます。


リアムとジェーンを引き離すと半径１５ｍ以内の生物が即死するという珍設定は、
メタ的に見ると単に「警察などに頼れない」ためだけに機能させているようにしか見えず、その発生原因もただ事故った時に偶然変なカミナリに打たれたからというだけという安直さ。


↑本作唯一の絵的にハデなシーン。カミナリに撃たれたせいで厄介な性質を帯びたうえに記憶を無くした２人。
私はてっきり、宇宙人に改造されたパターンか、新人類に進化する予兆だというパターンのどちらかだろうと予想していましたがその程度の掘り下げすらありませんでした。




(※以下ネタバレ）





















終盤で明らかにされるリアムとジェーンの本当の関係は確かに衝撃的ではありますが、
え、そういう話をやりたかったの？
という感想しか出てきません。


この奇怪な能力で他人を殺したくない！と願うリアムはどこからどう見ても善人でしたが、記憶を失う前の彼はそれとは真逆の快楽殺人者だった。
そしてジェーンは危うくその被害者になりかけていたところだったのです。
なんて言われてもね…。
それが半径１５ｍ全員即死と何の関係があるというのか。
いくら単なる小道具とはいえもう少し何かこじつけてくれても良かったんじゃないの…？


リアムの方は殺人意思が怪電波として周囲に放出されていたとかムリヤリ解釈できなくもないけど、ジェーンがそれを無効化できるってのは何の理屈もつけられないし何のメタファーにもなっていない気がします。

リアムは記憶を取り戻しても善人のままで、過去の自分の所業に耐えられず自殺するラストにしても何だか物悲しい雰囲気でごまかされてる感があるけど結局何を見せたかったのかワカらん…
あんな超能力がなくても問題なく語れる内容だったのでは…。

なのでおそらく、この超能力ネタは観客に対する「不連続殺人事件」的なカモフラージュ・攪乱戦法に過ぎず、本当に見せたかった部分を意図的に埋没させたのかなあ…と思いました。
ただそこがオリジナリティありすぎて宣伝で一人歩きしてしまったというね。

たとえば、テレビ放映されていたのをたまたま目にしたとか何の先入観もナシで鑑賞していればもっと楽しめたかもしれません。