また娯楽映画ではない何かを借りてしまった…。
配給会社も、訳分からん映画をうっかり買い付けたからといって
「とりあえずB級ホラーマニア向けに宣伝しとけ!奴らは悪食だから何でも喰う!」
みたいなことするのはどうかと思いますね。
まあ、かなり小さい配給会社みたいだし余り物に手を付けざるを得ないのかもしれませんが。
それにしても本作の前半戦はマジで意味が分からな過ぎてキツいです。
例えばモンスター映画のフリをしていた「
グリーン・ヘル」の時はまだボスニア・ヘルツェゴビナ紛争についてのテーマなんだな、と序盤から察することが出来たんですよ。
これ本当に何なの…?
一人の女性の精神的自立を描いたサスペンスホラー?
本作はまずエミリアとマイケルというカップルのイチャつくシーンがプロローグとして入り、
その後いきなり正体不明のサイコ野郎に拉致され痛めつけられているシーンから本編がはじまります。ちなみにマイケルは既に死亡済みです。
理解できるわけないし…。
しかし、これは製作者からの明確なメッセージでしょうね。
サイコ野郎の説明は一切ないからエミリアたちとの面識があったかどうかすらも分からんので
おそらく人間関係や金銭利害を超越したところに理由があるのでしょう。
キリスト教っぽいワードをわめいていたので宗教が絡んでいるのも間違いありません。
とにかく犯行動機についてはその全てが観客の解釈に委ねられています。
理由の考察を放棄し、ただただ謝罪と命乞いに走るエミリアは
シャベルでボコボコにされ、車のドアに何度も挟まれて足を折られたうえ、
マイケル(死体)の足と自分の足を手錠でつながれ、
サイコ野郎の掘った墓穴に放り込まれます。
それだけで埋めもせずとどめも刺さずにどっか行っちゃうサイコ野郎の目的が
本当に全然分かりませんが、まあ無人の荒野なのでほっといても死ぬことは確かです。
↑ デス・ホールの全貌。
どうでもいいけど、本作の原題は「Valley of Ditches」(溝の谷)です。味も素っ気もない。
B級ホラーマニアを釣れそうな邦題付けるのに苦心したとは思いますが結局投げやり。
一応この穴に放り込まれてからの後半戦はボチボチ見どころがなくもないです。
エミリアのDV親父が暴力をふるっているのを見て、
マイケルが殴り殺してしまったという過去の回想。
現在こんな目に遭っているのはその報いだということですね。
サイコ野郎はキリスト教狂信者みたいだったのでこれも何か教義的に意味のある罰の与え方なのかもしれません。
次に、夜中に野犬に襲われるシーンがあるのですが、何と野犬は鳴き声だけでその姿は一切映りません。何ともリーズナブルな演出。
しかし、エンドロールにはしっかり「wilddog:apollo」と出ていました。犬いたんなら映せよ。
そして映像的には本作最大の山場になりますが、
マイケルの足とつながれた手錠を外すためにエミリアが驚きの行動に出ます。
なんとマイケルの足の肉を噛みちぎっては吐き、噛みちぎっては吐き…
と壮絶にエグ味のある濃ゆいスプラッターシーンが展開されるのです。
犬を映さないぐらいの貧乏映画だと思って油断していたらこれだよ。
無事に穴から出たエミリアは親切な人に助けられ、
何があったか? …を具体的に語ることは一切してくれないのですが、
この事件を通じて何を感じてどうなろうと思ったか?は一応語ってくれます。
ここら辺が本作で描きたかったキモの部分であり、
それを本人が言葉にしてくれるということで、
本作もそこまで難解な映画ではない、とは言えますが…。
楽しいかどうかはまた別問題なんですよね。
その点で言うともう全くもって1ミリも面白くない。
海鮮丼に牛乳かけて食わされてるような気分です。
総評としては、まあクソ映画の類ではありませんが、
面白くなさで言ったらやっぱり「
グリーン・ヘル」と同じぐらいのレベルだし
雰囲気とかノリもあれに近いので比較できる人は参考にしてください。