製作:2013年アメリカ
発売:トランスフォーマー
小さな田舎町に越してきた牧師の一家。地元の人々に歓迎され、家族も新居や町を気に入り、これから明るく幸せな生活が待っていると思われた。しかし、その町は地獄とつながっており、外部から呼び寄せた人間を生贄として悪霊に捧げる風習を持っていた。
ンボボボボオォ。
いつも思うけどこういうジャケットを見て「おっ!面白そうだな!借りてみるか!」って思う人はどのくらいいるんでしょうか。トランスフォーマー社の人もまともに宣伝するよりもそういう物好きな人を相手にした方がまだ利益が出ると見込んでやっているとは思うんですが、「
ンボボボボオォ」が無い方が普通に恐そうなホラー映画に見えてレンタル数が稼げたんじゃないかという気がします。
この奇怪なジャケットに加え、監督の名前が「アンソニー・レオナルディ3世」。
本名に3世とかついてるのはよくあることのようですが、クレジットでもそのまま出してるのは珍しい。レオナルディ3世。なんか貴族っぽい響き。
そして主演がアン・ヘッシュ。
これはすごい珍作なのではないか?
…と思っていたのですが、中身は「何も知らずに田舎町に越してきた一家が生贄にされてしまう」という非常にありがちな田舎ホラー話でした。煽り文句のおかしさも含めて「
喰らう家」と大体一緒です。アン・ヘッシュも終始穏やかな良妻賢母を演じており、別に何もしません。いつ覚醒するのか楽しみにしてたのに。
本作の主役となる牧師一家は両親と子供が長女次女末弟という構成で、地獄の門を開閉するために生贄にされるのは姉二人という話。ホラー映画で犠牲になる人は何やかんやでクズやビッチであることが多いのですが、本作の牧師一家はひたすら善良で仲の良い家族でした。しかもそれを1時間近くも使ってじっくりゆっくり描写してくれるのが実に意地悪く感じます。確実にレオナルディ3世は性格が悪い。何の落ち度もない善人たちを地獄の底に突き落とす前置きとしては異常に丁寧すぎます。本作の前半部はもうホラーではなく「新しい環境になじもうと努力する牧師一家の日常」というホームドラマとして成立しているレベル。こんなジャケットで借りようと思っちゃう人に見せるような内容ではない。別にいいけど。
しかし一家を生贄に捧げようとたくらむ町民は、引っ越し祝いに差し入れた手作りケーキの中に変なキバを仕込みます。アメリカ特有の毒々しい青いケーキ。しかもテーブルの上にむきだしで常温で丸1日放置したやつ。そんなもん勢いよくパクリと行ってしまう次女。大振りのラッキョウ1粒ほどもある変なキバを咀嚼して吐き出す次女。アメリカ人ってすごい。素直にそう思いました。
↑しかしそれによって地獄から出現した悪霊のようなものに乗っ取られ、じわじわと黒い影に侵食されバケモノのような存在に。そして別に
ンボボボボオォとは言わない。まあそれは良いのですが、これが何なのか、何のために生贄を捧げる必要があるのか、何一つ分からない。「喰らう家」でももう少し何かあったよ。本作の何も無さは異常。キリスト教徒なら分かるのかなあ。レオナルディ3世による音声解説を聞いてみたいところです。
↑ヒツジゾンビの群れに襲われるというなかなかユニークなシーンには感心しましたが、ただの悪夢なのがもったいない。ところで関係ないけど人喰い羊が襲ってくるNZ映画の「BLACK SHEEP」は一体いつ日本で配給してくれるんでしょうかね。もう10年ぐらい待ってるんですけど。トランスフォーマーさんどうかよろしくお願いしますよ。
そしてこういう映画では、何だかんだ主役一家が反撃の糸口をつかみ、忌まわしき風習に終止符を打つ。というクライマックスになるのが定番です。「喰らう家」もそうでした。ところが、本作は哀れな牧師一家がバッチリいけにえに捧げられ、忌まわしき風習がつつがなく完遂されてしまうというまさかの展開。何一つ抵抗さえできないというあっけなさに逆にビックリです。姉の不手際で幼い末っ子までこの上なく無惨に死亡。レオナルディ3世は一体何を考えているのか。これは胸糞悪すぎる。全くなんの救いの無いラストシーンも含めて色んな意味で結構嫌な気分にさせてくれる映画でした。ということで、嫌な気分になりたい人にはオススメです。