製作:2016年ドイツ
発売:ポニーキャニオン
SNS大好きなリア充大学生ローラは、ある日大学で一度目が合っただけのマリーナという陰キャっぽい女子から友達申請を受け、軽い気持ちで承認してしまう。だが、それだけでまるで十年来の親友であるかのように振舞おうとするマリーナに嫌気が差したローラは友達解除してしまうが、その直後にマリーナは自殺。周囲に呪いを振り撒く悪霊と化してローラを友達ゼロ人の孤独地獄へと突き落とそうとする。
「トモダチ100人、皆殺し」
というキャッチコピーはなかなか魅力的なものの、ライトなティーンホラー丸出しなジャケットにつきスルーしていた本作。しかしよく見るとこれはドイツ製ではないですか。ドイツホラーといえば、おふざけ要素は極めて少なく、くそまじめなわりに狂気が滾っている。そのうえ残酷描写が異様に苛烈でトラウマ級のインパクトを残すという印象が強くあります。
つまり本作も只者ではないに違いない。
…と期待を膨らませて鑑賞したんですが意外にも残酷描写は限りなく控え目で、食事中に鑑賞してもお味を損なわないレベル。フツーにヌルめのティーン向けライトホラーでした。100人も死なないっていうかわずか5人ぐらいです。ドイツ製でもこんなぬるま湯のようなお化け屋敷映画があるんですね。ドイツと言う国に軽く失望しました。こんな量産型ホラーはアメリカ人に作らせておけばよろしい。
ストーリーとか設定の雰囲気は「リング」と大体一緒な気がします。
不気味な女に呪いをかけられ、それを解くために奔走し、その女の出生とか生い立ちを探ればなんとかなるかも!とがんばる話。
呪いのビデオという小道具がSNS(FB?)に置き換わっただけのような感じ。
主人公ローラはリア充の頂点ともいうべき存在で、SNS上での友達が800人以上もいます。私はSNSをやっていないので感覚が分かりませんが、こういう人は800人もの人間の顔と名前を一致させることが出来ているのでしょうか。友達というからにはそれぞれの特徴も関係もある程度把握しているはずですが、この数では不可能な気がします。
SNSにおける友達とは一体何であるのか。
SNSシロウトからするとポケモンでも収集している感覚のように見えます。そんな感じで、ローラは「
たまには陰キャもコレクションに加えてみるか」みたいなノリでマリーナという怪しい女の友達申請を受け付けてしまいます。友達のハードルが低いのか何なのか。しかしそのマリーナのSNSページをのぞいてみると、
↑こんなようなキモい画像や動画だらけでドン引き。そのうえ速攻で距離を詰めてきて超ウザイ。
この辺のキモい動画が一見ただのサイコ電波系かと思いきや、マリーナの出生・生い立ちと関連している。というのが大変「リング」チック。映像の不気味さの醸し出し方も呪いのビデオと似ています。
そしてこんなものを見てしまったローラは「やっぱり友達解除するわ」となるわけですが、800人のうちの1人を切り捨てる側は良いとしても、
切り捨てられる側は友達1人→0人という大変残酷な結果に。
↑そんな風に切り捨てられたマリーナの悲しすぎるリアクション。
友達申請する方もする方だが、誰でも彼でも簡単に友達認定してしまうから切る時も簡単。
あとは復讐心に狂ったマリーナに
「お前も友達ゼロ人にしてやる!」
という呪いをかけられ、理不尽に殺されて行くローラの友人たちがひたすらかわいそうな展開。ホラー映画においてここまで何も落ち度のない被害者たちというのも珍しい。あとはどんな風に殺ってくれるのか?がホラー的には見どころとなるわけですが、本作はここが致命的に物足りない。例によってシ~ンとしてる時にドギャーンガオーンと大音量で驚かせて来るジャンプスケア多用系。だからそれはビックリするだけだからやめろと。しかも驚かせポイントが予想通りすぎてあんまりビックリもしない。
それではドイツ人お得意の残酷描写は!?と言えば、これがまたほどよい人肌と言っても良いぐらいのぬるま湯状態。快適すぎてあくびが出ます。幽霊を見て自ら首を切ったり拳銃自殺したりハチにたかられたりするだけ。とてもじゃないけどドイツ人の仕事とは思えない。いくらティーンでもこれは全然怖くないのではと。中学生ぐらいならギリいけるかなと言う雰囲気。
「ローラを友達ゼロ人に追い込むのが目的ということは、その前にローラを殺してしまえばオレは助かる!」
という発想に至る友達(笑)がいたのはちょっと皮肉が利いていて面白かったんですが、ナイフで腹を深々と突き刺されたはずのローラにダメージが無さ過ぎてものすごい違和感。からの投げやりなクライマックス&ラスト。
劇場公開作だけあって映像面のクオリティは高く、そこはさすがにDVDスルー作品との格の違いを感じさせられましたが、内容的にはDVDスルー系と大差ない凡作でした。SNS依存気味のお子様に教育の一環として鑑賞させる分には多少有効かもしれません。