韓国のソウルで巨大モンスターが暴れるという大災害がニュースで連日報じられていた時の事。
アル中のダメ人間グロリアは仕事をクビになり、彼氏に捨てられ、
故郷の田舎町で暮らすことに。
そんなグロリアがバーで働き始めたある日、ソウルで暴れる巨大モンスターの動きが実は自分とシンクロしていることに気が付くのだった…
何というくだらなさそうなストーリーなのか。
ジャケの雰囲気から言ってもコメディっぽい。
そして「女性の自分探し」(多分)という超難解なテーマ。
しかしいざ鑑賞してみると、それらの要素はだいたい前半で消化してしまっていて
後半はなぜかシリアスなサイコサスペンスといった趣きへと変貌。何でだ。
一体何がしたかったのか…は、まあ分からないこともないんですが、
一体なぜこんな描き方をしたのか…。
「どうだい!変な映画だろう!」
という製作スタッフの自慢気なドヤ顔が目に浮かぶようです。
ソウルで巨大なモンスターが出現し、市民は大混乱。
一体どうしてソウルが選ばれたのかわかりませんが、
ソウル市民には全く落ち度が無いのに街は破壊されるわ市民は踏み潰されるわで災難もいいところ。普通に考えたら市民は皆避難して事態が解決するまでソウルは無人になるんじゃないかと思いますが。
ニューヨークから故郷のド田舎に引っ込み、
同級生のオスカーが経営するバーで働き始めたクソ女・グロリア。
自分の動きがソウルに出現する巨大モンスターとシンクロしていることに気付き、
調子に乗って踊ったりしてたら盛大にコケてしまい、
哀れなソウル市民たちを大量虐殺してしまうことに…
罪悪感に苛まれたグロリアはもうソウル市民を殺さない、いや、これからはソウル市民を守ることを固く決意するのだった。
…って実にわけのわからんストーリー展開です。
オスカーやその友人たち、ニューヨークにいる元カレなんかと
グロリアの恋愛模様なんかもある…というか普通にそっちの方がメインなのかなとも思えるんですが、そこに巨大モンスターの謎を絡めるだけでこうも混沌とした味わいになるものかと。
例えて言うならショートケーキに醤油でもかけて食ってるような気分になりました。
というか、なんでグロリアがバイト仲間?のジョエルと寝たのかが全然わかんない。
オスカーと元カレに思わせぶりな態度をとっておいて別の男に手を出すとか一体何をしているのか。そして一度寝たらもう用済みと言わんばかり…。
単なる三股ですかそうですか。…そうなんですか? 恋愛映画を普段全く観ないとこういう時理解に困るなあ。
そしてソウルには巨大モンスターのほかに、今度は巨大ロボットまでもが出現。
しかもそいつはオスカーの動きと連動していました。
はじめは親切だったオスカーも徐々にド汚い本性を露わにしてきており、
距離を置こうとしていたグロリアに対し
「店を辞めるなら巨大ロボでソウル市民を殺すぞ」
と事あるごとに脅迫。
すごい斬新な脅し文句ですね。
ここは素直に感心しました。
すでにソウル市民を大量虐殺してしまった負い目のあるグロリアは文句も言いにくいし、
守ると誓った以上逃げることもできない。スケール感はともかく、なかなかうまいやり口です。
かくしてアル中のクズ男とアル中のダメ女による
ソウル市民を巻き込んだ巨大ロボVS巨大モンスターの熱い戦いが
幕を開けるのだった。
と言いたいところなんですが、
言うほどスペクタクルなシーンがなくてですね。
色んな男に思わせぶりな態度をとってしまう駄目女グロリアに対し、威圧的な態度で迫るオスカーの暴力がだんだんエスカレートしていく、というサイコサスペンスになって行くんですよね。
これ別に巨大モンスターを出す必要もなければ、無駄にソウル市民を虐殺する必要も無かったのでは?
としか思えない。
この感覚、半径15m以内の生物を即死させる能力に目覚めた男を描いた「
ラディウス」にかなり近いものがある気がします。能力に目覚めた切っ掛けも同じようなもんだし…。
とはいえ、「ラディウス」ほどSF要素が放り出されているわけではなく、巨大モンスターやロボが彼らの内面を表すメタファーであろうとは思うのですが…。
そんな誰にでもありそうな悩みとか痴話喧嘩とかごときで
破壊と殺戮の限りを尽くされてしまったソウル市民は怒っても良いと思う。
恋愛映画には興味ないし、巨大モンスターの出番も思ったより全然少ないし、
共感できる登場人物も全くおらんしで
正直あんまりおもしろいとは言えませんでしたが、
珍作度で言えば相当突き抜けているのは確かです。
変な映画が好きならばまあまあ満足できるでしょう。
オススメはしませんが一見の価値はあるかもしれない、とは感じました。