製作:2019年アメリカ
発売:プライムウェーブ
南太平洋ケルディック海溝で活動中だった海洋探査ロボットが突如信号を断った。海洋開発会社社長のフォードは部下を連れて現場へ急行。すると、そこでは海底火山の活動で太古の眠りより目覚めし巨大怪獣”テング”が活動を開始していた。
面白いクソ映画を撮らせたら右に出る者はいないと私の中で評判のマーク・アトキンス監督最新作。なんとあの超迷作「
シックスヘッド・ジョーズ」のリリースからまだわずか8ヶ月しか経ってません。仕事が早くていいですね。まさに粗製乱造を体現する男です。こういう人材はアサイラムからの評価も比較的高いと見え、それなりにいい役者を割り振られている気がします。今回はエリック・ロバーツが出ています。残念ながら主演ではありませんが、いつも通り悪辣で嫌味な男を好演。たまには彼にも性格のいい役が回って来たりしないものか。
マーク・アトキンスのいいところはものすごくテキトーに手を抜いて作っているように見えて、その実視聴者の心に何らかの爪痕を残そうと珍奇なものを出したり変なシーンをねじ込んでくることです。
クソ映画にはクソ映画なりの見所の作り方ってものがあるんだよ。…という開拓者精神に満ちた前のめりなクソ映画メーカーっぷりは好事家の心を掴んで離しません。と言ったら褒めすぎでしょうかね。
で、本作は言うまでもなく「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」のパチモンです。
と言っても私は「ゴジラ」シリーズは全然見たことが無くて、唯一あるのがよりによってあの悪名高過ぎる「ローランド・エメリッヒ版のゴジラ」なので本作を楽しむ素養が足りてないかもしれません。
まあ、逆に何も知らない人間の方が素直な心で楽しめるような気もしますが。
…ということで、本作は完全に日本の方を向いて作られています。
↑海洋開発会社の社長が海底火山に出向くと、そこにはいつも通りショボイCGの怪獣が。
ところで英語音声でも「カイジュー」って言ってるんですが、スシやニンジャのように固有名詞として認識せねばならない単語なんでしょうか。定義がよく分からないんですが、やっぱりパシフィック・リムで何となく定着しちゃったんですかね。
まあそれはそれとして、この怪獣は見た目はヒトデのような形状です。
社長たちがヒトデ怪獣の近くにいると言うのに、アメリカ空軍が非常に迅速な空爆を開始してくれます。しかしミサイルを喰らった怪獣からマグマの血液が噴き出します。これは暑い。
パニックに陥った部下たちが無線で止めるように呼びかけると、相手はなぜか日本語で応答。
すると部下たちも必死に片言の日本語で空爆の中止を訴えます。
「バクゲキヲヤミナサーイ!」「ヴァクグェキヲヤミナスーイ!」「バクゲキヲヤミナサーイ!」「ヴァクグェキヲヤミナスーイ!」こういうことすると日本人にウケると思ってやってるんでしょうか。
まあ、私は笑いましたけども…
そして、この怪獣の正体と対処法は、となるとやはり人里離れた土地で孤独に暮らす偏屈な科学者に頼るしかない。いや、そんなに偏屈でもありませんでしたが。
怪獣の正体は大昔から言い伝えられている「火から生まれ、海より出でしもの」、古代文明を滅ぼした伝説の”破壊の王”…その名も「テング」であると判明します。 「天狗」? 一体どこに天狗要素があったのか。どこの民族がそんな間違いを言い伝えてきたんでしょうか。
さすがにこれをわざとやっているのかどうかは判然としませんが、怪獣についての説明をすればするほど一般的な天狗像からは光速でかけ離れていきます。
「名前はテング 大まかに訳すなら破壊者よ」
「マントルに潜み、火山の基盤岩を食べる。だから強力なのよ」日本人以外なら騙せそうな話だけどさあ…
と思ってウィキペディアで天狗の項目を見ると、元々は中国で地球に落下してきた隕石のことを指していたらしいです。またクソ映画で無駄知識が増えてしまった。
↑
「テングの前では人類など取るに足らない存在よ」ってこれも笑っちゃったけどよく考えるとこれだけは合ってるかもしれませんね。
ということで、「シックスヘッド・ジョーズ」ほど無茶な破壊力はありませんでしたが、それでも実にマーク・アトキンス監督らしいポンコツな見どころに溢れた良作クソ映画でした。他人にオススメしていいものかどうかはもはや全く分からんのですが、「面白いクソ映画」というものに興味がおありの方は手に取ってみるのも一興ではないかなと思います。