ある好事家の記録 主に変な映画の感想

変わった映画を見つけたらそれを語りたいブログ。  主にモンスターパニック映画、特にサメ映画の感想が多め

イット・カムズ・アット・ナイト 感想(ネタバレあり)



製作:2017年アメリカ
発売:ギャガ

未知の疫病が人類を蝕む世界。ポールは妻子と3人で森の奥深くで疫病に感染しないよう細心の注意を払って生活していた。そこにウィルという男とその妻子がやってくる。当初2つの家族は仲良く共同生活を送るが、ある日飼っていた犬が疫病に感染。その原因を巡り、彼らは疑心暗鬼に陥り始める。












暗い森の奥深くで生活する一家。支配的なヒゲ親父。外へ出る時はガスマスク。部外者と一時は仲良く共同生活。見えない脅威は最後まで見えない。うっ頭が…。

本作は昨年11月に劇場公開されており、「イット・フォローズ」の製作陣によるものと聞いて観に行こうとしてはいたものの、その時はついスルーしてしまいました。しかし、これはスルーして正解だったかもしれません。まさかあの「クワイエット・フォレスト」とこんなに似ている雰囲気の映画だったとは。同時期にアレと似たような映画を観てたら頭がどうにかなってしまいます。

とはいえ、アレよりはまだ娯楽性が感じられなくもないしやりたいことは分からんでもなかったです。それが面白いかっていうとそれほどでもなかったのですが、眠たくはないし色々と見えない部分の想像が膨らむホラー映画でした。行間読みが多く考察し甲斐のある映画が好きな人にはオススメできます。






本作の世界で人類を死滅?させたらしい疫病は、どうやらペスト的な何からしい…ということは絵で示されるものの、感染源不明の細菌やその感染者が迫りくるスリルや謎といった要素は特に追求されることがありません。唯一、犬が何もない森の奥に向かってひどく吠える場面だけは何者かの襲来を予感させるものがありましたが、予感だけでした。色々ともったいぶりまくってはいるが、純粋に疑心と恐怖に支配された愚かな人間の行動だけに焦点を当てた映画と思われます。



森の中の一軒家、いつ疫病に感染するか分からない。そういうシチュエーションで共同生活をするようになった2組の家族。当初は仲良くやれていたものの、何か恐ろしいモノの気配が近づいてきたような気がしただけで彼らの間に徐々に亀裂が入っていき、ついには…。という、嫌らしい心理の機微が見どころ。

信じていいのは自分と自分の家族だけ。いくら親しくても他人は他人。いざとなったら切り捨てねばならない。主人公ポールはそれを徹底して生き延びてきたと思われますが、それだけじゃうまくいかない。とでも言いたげな展開になっていくものの、最終的な解釈は観客の手に委ねられることになりどうにもスッキリしない。



ということで以下ネタバレというかラストの考察をしますが、私の勝手な考えなので全然違うかもしれません。





感染したのはどちらの家族の人間なのか?

クライマックスで問題となったのはそこですが、最も容疑の濃い人物の姿はあえて画面には映さない。ちょっとずるいやり方な気もしますが、怪しさ全開です。しかし、ポール側の人間が感染者だったとしても、退去しようとしたウィルたちをわざわざあそこまで引き留めようとしたのはなぜだったんでしょうか。感染者とは一緒に居たくないはず。感染者がウィル側にいると思うならば黙って行かせてやればいいだけなのでは…。


そうでないとすると、実はポールは感染者が自分側にいることを知っていたのでしょうか。それでいてウィルたちを逃がせない理由がある。
となると、感染者がいることを外に漏らしてはいけないとか?



そう考えると、序盤でポールたちを襲撃してきた謎の2人組は感染者狩りか何かだったのかなあという想像もできます。あの2人組が襲撃してきた件は本作の中でもインパクトが大きい割りに一切何の追求も解明もされませんでした。それどころかポールは彼らに何もしゃべらせまいとばかりに問答無用で銃殺していました。そのまま放置するにはあまりに不自然なシーンです。ポールも初めはウィルの素性を相当怪しんでいましたし、感染者狩りではなくても彼らに敵対する人間の勢力が存在するのではないかと考えられます。そうでないと、わざわざウィルたちを皆殺しにした理由が私には思いつきません。他にあるとすれば、感染者がウロウロしているかもしれないと思うと落ち着かないから確実に殺して燃やさないと安心できない…とかそんな感じですかね。これは安直すぎてちょっと嫌ですが。



そもそも疫病で人類がどの程度死滅したのか。ほぼ全滅した世界のようにも思えるが、森の外のことは一切わかりません。感染の疑いのある者が森へと追いやられただけということもあり得ます。しかしその辺は完全に何の手がかりも無いのでこちらで妄想するしかありません。

なので、私は上記のように考えはしましたがこれは人によって如何様にも解釈の余地がありすぎてどうにも残尿感のようなものに悩まされます。何といってもラスト近くのウィルの奥さんの叫びが恐ろしく悲痛。映画を観ていてあそこまで魂の籠った叫びはそうそう聴けるものではないです。そこからのものすごく思わせぶりなラストシーン。意味は分からんけどやけにインパクトがある。とにかくこちらの想像を膨らませようとばかりしてくる映画でした。



…と、ここまで書いてから公式サイトを見てみたら、親切丁寧なネタバレ解説文がありました。やっぱり私の想像とは全然違ってましたが、こういう映画は自分なりの回答を考えてから解説を読んで楽しむものではないかと思います。






ところで本作では開けてはいけない「赤い扉」が印象的に使われますが、好事家的にはどうしてもあの「せっかくだから俺はこの赤の扉を選ぶぜ!」を連想してしまい、いまいち恐怖を喚起されなかったりします。

コメント

1. 無題

いつも楽しく読んでいます。
突然の上から来るぞ気をつけろ視点に思わず吹き出してしまいました。

Re:無題

コメントありがとうございます。
赤い扉は何年経ってもついついアレを連想してしまい、気が散っていけませんね。
まあ本家は赤いと言いつつ赤くない扉なんですが。

プロフィール

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岩石入道
性別:
男性
自己紹介:
B級~Z級映画が主食。ホラー、モンスターパニック系が特に好き。目についたサメ映画全てチェックしたい
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