製作:2018年アメリカ
発売:ギャガ
2151年、新天地を求めて旅する移民船に隕石が衝突。4人乗りの救命艇にむりやり乗り込んで脱出したミラー中尉たち5名。何とかその場は生き延びたものの、定員オーバーのため救助が来るまで酸素が持たない。しかも、謎の宇宙生物の襲来に遭ってしまう。
12月の新作6本目。
一番期待薄な雰囲気だったので後回しにしてましたが、本作が一番良い具合のB級さ加減でした。
隔絶された空間で凶悪な宇宙生物が襲ってくる。
「エイリアン」の何番煎じだよと謗られようが何だろうが、結局そういうオーソドックススタイルが一番安心感がありますよね。
と言いたいところなんですが、本作もなかなかいかれた作品でした。
移民船が事故に遭い、救命艇に乗って脱出し、定員4名なのに5人も乗ってしまったせいで支配者階級の「市民」と奴隷階級の「非市民」との間で理不尽ないがみ合いが勃発。
タイトルが「5th passenger」なのだから、5番目の招かざる乗客がエイリアンか何かなのでは?
最初から人間が5人乗ってるんだったらエイリアンは出てこないのか?
などという疑問と共に、先月発売の戦略核地雷「
イット・カムズ(原題:ナインス・パッセンジャー)」を想起させられてしまい、にわかに募る不安感。
↑ただ、宇宙船のCGの出来は思っていたよりすごく良いです。何かの間違いかと思うくらい良く出来てる。CG製作チームは相当な有能が揃っている様子。宇宙船の内部等もそこまでヘボいセットというわけではなく、それなりに手間がかかった内装で途中までは安心して観ていられました。
↑別の難破船を発見し、物資を補給しようと探索する乗組員。そこで生物兵器がくっついてきてしまう…という定番の流れなわけですが、ここら辺のディテールは相当怪しげです。宇宙服のチープさもさることながら、何より救命艇の表面をジャンプしたり歩いたり…とどうにも無重力空間とは思えない動き。B級映画に無重力環境時の動作の再現性を求めても仕方のないところではありますが。背景や宇宙船そのもののCGが良いために違和感が強い。
さらに、満を持して登場してくる宇宙生物兵器の姿が、そんな細かいこと全てを灰燼に帰すインパクト。
CGがこれだけのハイクオリティだというのに、恐ろしくショボいゴム人形みたいな宇宙生物。全体像が…わからん。サソリっぽいようなそうでもないような…。宇宙船よりそっちをCGで作るべきじゃないのか。
そんな謎の宇宙生物もカクカクとした味のある動きを見せてはくれます。
もしかしてストップモーションアニメかな?
今どきマーク・ポロニア作品以外でもこんなクリーチャーを出してくる映画が存在するとは意外でした。まあ、そういう方向性のヘボさはむしろウェルカムです。
とはいえ、登場シーンが細切れすぎるのはいただけませんね。
ヘボいならヘボいなりに堂々と見せてほしい。そこはポロニア監督を見習うべきです。
カット割りで手抜きをごまかそうとしても無駄なんです。
なぜ宇宙生物という肝心要のメインディッシュで思いっきり手抜きをしてしまったのか?
…と思ったら言うほどメインディッシュでもなかった。
詳しくはネタバレなので避けますが、それなりにひねりを効かせてきたのかなとは感じました。タイトルには偽りなしでしたね。
ただ、そのネタはあまりに差別・偏見モロ出しなのでは…という心配がありまして。
こんなマイナーな映画では炎上することも特にないでしょうが、どんでん返しの手法としては反則技だしあまり褒められたプロットではないよなあ…と言わざるを得ない感じ。
まあ、「エイリアン」のチープな亜流としてなら暇つぶし程度には楽しめるのではないかと思います。