数年前に「ダブルヘッド・ジョーズ」をちょっと疲れ気味の時に鑑賞したことが
あるのですが、観ている最中何度も意識を刈り取られました。
そのせいでどうしてもこの「トリプルヘッド・ジョーズ」にはなかなか食指が伸びなかったのですが、近々「
ファイブヘッド・ジョーズ」が出るという話を聞いたので
ようやく重い腰を上げたという次第です。
3作目までシリーズが進んだということは、実は結構面白いのかもしれませんからね。
…結論を言うと、本作は出来の良いところと悪いところの差が異常に激しく、
題材でもある「変異体のような出来」と評したくなる歪なクオリティのサメ映画でした。
先に良い点から述べていきたいと思います。
まず、サメのCGはこの業界ではトップレベルの品質です。水面を走る背ビレはなぜか雑ですが、全身が映っているシーンはPS3並みの出来栄え。海面に出てきて口を開けた場面も、なかなか生っぽくていい感じがします。
それに全編を通して暴れまくりで出し惜しみしていません。
次に、BGMの出来が非常に良い。サメに襲われる場面でちゃんと焦燥感を煽るBGMを流してくれるし演出もしっかりしているので、襲われそうなところだけ切り抜いて見れば実にエキサイティングかつスリリングなシーンとして仕上がっています。当たり前のようでいて、ここがちゃんと出来ているサメ映画は稀なのです。
…で、悪いところなんですが。
異常に頭が悪い脚本ということに尽きます…。
「ツッコミ待ちでわざとバカやってるんだぜ!」という制作側の姿勢は理解できますが。
どこまでがわざとで、どこまでが天然なのかが全くわからないぞ…?
主人公は孤島の海洋研究所に新入りとしてやってきたマギーという女性で、他にその研究所の教授2名+居合わせた環境保護団体のメンバー数人が主要人物たちとなります。
ストーリー的には特に目新しいものはなく、海がゴミで汚染されたせいでトリプルヘッドジョーズなる突然変異のサメが生まれ人類に牙をむくという毎度お馴染みの様式美。
とりあえずトリプルヘッドに海洋研究所が破壊され、爆発炎上。
かろうじて脱出したマギーたちはなぜか「こんな島にいたら死ぬ!」と言い出して
沖に流された船へ向かって泳ぎ出します。
…いや、そこそこ広そうな島だしわざわざサメのいる海に泳ぎ出さなくても
安全そうな陸地で助けを待ってればいいんじゃないの?
としか思えませんが、それではサメ映画として成立しません。
まあここは研究所が爆発したらいずれ島ごと沈むと脳内変換してあげましょう。
何人か食われつつ、何とか船に乗り込んで逃げ出した一行。
当然無線で沿岸警備隊に助けを呼ぼうとします。
が、周波数が間違っておりただの釣り船につながります。でも間違いを正そうとせず、その釣り船に救援要請。釣り船の方もそれに応じ、単独で救援に向かいます。
…実におかしなシーンですが釣り船に乗っていたのはダニー・トレホでした。スーパーヒーローとは言えませんがダニー・トレホはあのプレデターにも獲物として選ばれるくらいの戦闘力はある人物なので、ここもまあよしとしましょう。
ここで、トリプルヘッドが新しい獲物を発見します。若者が大勢乗ってパーティしている大き目の船です。マギーたちをほっといてそっちへ向かうトリプルヘッド。
これでマギーたちは逃げきれますね。
と思ったら、「助けなきゃ!」とそっちへ突撃します。
…「力なき正義は無能なり」という言葉がありますが、まあそんな感じで無駄な犠牲が増えるだけでした。ただ、メンバーの一人が斧1本でトリプルヘッドに立ち向かうシーンはなかなか格好良かったです。
「このエンジンではあと30キロぐらいしか走れない」
「早く陸地に行かないと」
「一番近くにあるのはあの島だ」
どうでもいいんですが、さっきからマギーたちの周囲には陸地が普通に見えます。とっとと行けばいいんじゃないの?としか思えないんですが、まあ近くに見えて実は30キロ以上あると脳内変換してあげましょう。
この辺でようやくダニー・トレホが到着し、トリプルヘッドとの激闘が繰り広げられます。ここがこの映画の一番の見どころと言っていいでしょう。
ただの釣り船と言ってたのにやたら武器を積んでいたり、最後に使うのはマチェーテだったり、見事サメの首1本を切り落としたりとダニー・トレホ大活躍。
…その後は完全に蛇足なので、ダニー・トレホがサメの首を落とした段階で一件落着、エンディングに入ったものと脳内変換しましょう。
部分部分ではかなり光るところもあるのに、これだけの脳内変換力を駆使しなければまともに鑑賞することができません。実に歪です。
総合的に考えると、サメ映画の中では平均点ぐらいかなあという結論にはなります。なりますが、これはかなり好き嫌いが分かれるタイプのサメ映画でしょう。
結局、頭が3つあったから何なの?って思いますし。
主人公が「助けないと!」を繰り返したせいで全員死んだようなもんですし。
唯一みんなが楽しめそうな部分が前述の「ダニー・トレホVSトリプルヘッドジョーズ」のシーンなので、そこが気になる!と思った人は鑑賞しても良いのではないでしょうか。